第17話下 悠久の雹鳥
17話下 悠久の雹鳥(著者/月乃ハル)
「教えてくれと言われてもなぁ……」
また場所は変わり氷矢宅、足立美羽を助けたいがために魔法を教えてくれと彩は真剣な眼差しで氷矢に問いかけているのだ。
「教えてくれないの……?」
「いやなんというか後輩に教えて貰う先輩って……」
「………」
いかにも泣きそうなうるっとした目で
「教えないとは言ってないけどな!?ただーー」
「じゃあ教えてくれるんだね!!」
「いや、人の話を聞けよロリ先輩!!」
「誰がロリだこらぁぁぁぁ!」
言葉を遮るかのように嬉し声を出したことでなのかつい彩にとっての禁句ワードを無意識に言ってしまい、結果ゲシっと真剣な眼差しだった彼女が氷矢のスネを思い切り蹴った。
「痛ッ!!思い切り蹴ることないだろッ!!てか何度も蹴るのは止めろって!?痛いから!!」
「自業自得だよ!」
と言いながら未だに蹴り続けている。余程言われたくのない言葉だからだろうが根に持ちすぎだ。
「わかった!わかったから!でもな先輩、精霊、魔法には属性があるから俺が教えるのは使い方……ってところだ」
「わかったよ星神君!」
魔法の使い方を教えてくれる、その言葉が彼女の耳に入ると直ぐにスネを蹴るのをやめて嬉しさからか少しにやけていた。
ーーー
ーーーー
それから何分、何時間がたっただろうか。当たりは静かな暗闇から一転し朝日が昇っている。
そして炎に包まれた武道館もいつの間にか完全消化され、救急隊員により武道館内の生きた人形のように植物状態化した人達もほぼ近い病院から順々に搬送されて行っていた。
そして現在の武道館は全体的に危険区域として判断され立入禁止テープが張り巡らさていた。
「大きな火事にしては建物の燃焼跡が少ないし人の火傷跡も少ない……となるとやっぱり鈴を植物状態化にしたのと同じ炎……」
そんな武道館の前には警察官の岡村以蔵が立っている。
とは言うもの彼は現在勤務外。上司から有休を使って休めと言われ休んでいるからだ。
しかしやはり警察。休みでも事件などを聞くと反応して見に来てしまうのだろう。
「あぁ、メーネ君は一体どこにいるんだい…?」
唐突に岡村の後ろから高くもなく低くもないハッキリとした男の声が聞こえる。その声の主は紛れもなく不思議な……否殺気、嫉妬、怒り、欲望そんないろんな感情がスクランブルエッグのようにグルグルとぐちゃぐちゃに混ぜられたかのような黒いオーラを纏っている足立透だ。
しかし黒いオーラは契約者でしか捉えられない黒に染った精霊の気配、精霊と契約していない岡村には不気味な気配として捉えることだろう。それ故か背筋が凍るような悪寒が走り彼はその正体を確かめるべく振り向いた。
そこにゆらりとと足を進める彼がいたのだ。
だがどこか様子がおかしい。周りが見えていないような、否それよりも人ならざる姿と言うべきだろうか彼の左腕が傍から見ても人のものでは無く風を捉えるように生える羽それがいくつも生えていたことが特に驚くことだった。
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