第14話上 精霊の塔の真実

14話上 精霊の塔の真実 (著者/ミステス)

「あー疲れた…」

昼飯のあともガルフリードのありがたい授業は続き、今さっきようやく終わった。

「やっと補習が終わったと思ったらこれか…」

まあ俺が無知なのが悪いんだしいつまでも知らないのもまずいと思うから教えてくれるのはありがたいんだが。

「しかしあいつ魔法に関してすげえ詳しいな」

俺がそう呟くと

「いや、兄弟が無知すぎるだけだろ」

アイスをくわえながらガルフリードが戻ってくる。

「はいはい、どうせ俺は頭が足りてないよ」

俺が少し拗ねていると。

「お兄ちゃん!大変だよ!」

氷雨がやけに取り乱した様子で俺を呼びに来た。

「どうした?」

「テレビ見て。テレビ!」

そういって氷雨はテレビを指さす。

「これは…!?」

「現在武道館で大規模な火災が発生しており、急ぎ消化活動を行っております。炎の勢いが強いため中の様子は現在不明であり…」

火事のニュースが流れていた。

テレビの中の建物が燃えている。

しかもあれは普通の炎じゃない。

「お兄ちゃん…これって…」

氷雨も何か感じたらしい。

「また例の放火魔の仕業か!」

その時

RRRRRRRRR!

スマホの着信だ。相手は…

「生徒会長?」

なんだ、こんな時に

―今日初めて武道館でライブに行くんですけど…

「武道館!?」

さっきのメールを思い出す。

「もしもし!会長か!?」

俺は慌てて電話に出る。

「星神君?よかったつながった。今武道館にいるんだけど大変なことが起きてるの」

生徒会長は落ち着いた声で話す。

「今ニュースでみた!大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃないから電話してるんだよ」

「どういうことだ?」

「言葉通りだよ、星神君。このままじゃちょっとまずいかな…」

生徒会長は少し声のトーンを下げて言う。

「だから助けに来て欲しいんだよ。それが三柱の役目でしょ?」

!?

今会長は何て言った?

なぜ会長が三柱のことを…?

だが今はそのことより

「会長、今どんな状況なんだ?」

テレビのニュースには中の状況がわからない。とりあえず今の状況を会長に尋ねる。

だが…

「どうして…なんですか?」

「会長?どうしたんだ?」

会長はだれかと話してるようだった

「こんな事をしても、誰も姫神さんを認めたりはしないです!」

姫神だって!?

じゃあやっぱり放火魔は蓮の姉ちゃんってことか。

「会長!おい!会長!」

それ以降会長の声は途絶えてしまった。

しばらくして電話が切れる。

「くそっ!」

俺は悪態をつく

「いくぞ、ガルフリード!」

「おう」

「お兄ちゃん…」

俺が家を出ようとすると氷雨が不安そうに俺を呼んだ。

今回は氷雨もかなり動揺しているらしい。

「大丈夫だ、必ず帰るから。俺の分の晩飯残しといてくれよ」

俺は氷雨の頭をくしゃくしゃとなでながら言った。

「姐さん。俺の分もな!」

ガルフリードもおどけて見せる。

「うん。行ってらっしゃい!お兄ちゃん、ガル君」

氷雨は笑顔で俺たちを見送った。

「これは…」

(こいつはひでえな…)

武道館につくとまさに阿鼻叫喚といった感じだった。

逃げ惑う人々の悲鳴や怒号が飛び交いかなりの大惨事になっている。

消防車が何台もきて、消火活動をしているが炎はとどまるところを知らなかった。

「水をかけても消える気配がまるでない…姫神美羽はやはりかなりの使い手のようだな」

(ああ。あそこまでの炎を操れる精霊はそう多くないな)

「何とかして中に入れないか…」

だが建物が炎に包まれているためうかつに近づくこともできない。

「とりあえず蓮に連絡してみるか」

あいつなら何かいい方法を見つけるかもしれない。

蓮に電話をかける。

「もしもし」

蓮はすぐに電話に出た。

「蓮か?武道館が襲われた!」

俺は焦っていたせいもあり脈絡もなしにそう伝えた。

「まずは落ち着いて、何があったの?え…」

蓮は何かに気づき、ひどく驚いている様子だった。

「蓮?どうしたんだ蓮!?」

俺は必死に蓮を呼ぶ

「ごめん氷矢、大丈夫。あの穴は一体…」

「穴?」

「空に大きい穴が空いているでしょ?」

空に穴だって?

「何をいってるんだ蓮、そんなものないぞ」

「え?氷矢には見えていないのか…とりあえず今はおいておくよ。いったい何があったの?」

俺は武道館でおこった事件を蓮に説明した。

「そう…やっぱり姉さんが…」

蓮は少し悲しそうにそう言った。

「俺の友達も巻き込まれたみたいなんだ。何とかして中に入りたいんだがなにかいい方法はないか?」

「その炎が姉さんの仕業なら、凍結魔法で周りの空間の温度を下げれば炎を弱らせながら中に入ることができると思う」

「凍結魔法であの炎を弱らせられるのか?」

あの炎の勢いを見る限り逆に燃やされそうなんだが。

「姉さんの契約精霊であるジャック・オー・ランタンは夜にならなければ真の力を発揮できないんだ。今はぎりぎり夕方、今なら氷矢の魔法で弱らせることができると思う」

さすが蓮だ。簡単に方法を見つけてくれた。

「サンキュー蓮。その方法で中に入ってみるぜ」

「僕もすぐに向かう。くれぐれも無茶はしないで」

「ああ!」

俺は電話を切る。

「さて。行きますか!」

俺は魔力を展開し炎の中に飛び込んだ。

無事に武道館の中にはいることができた。

「会長は…」

会長を探してみるが見つけることができなかった。

「それにしても…」

(ここは外以上にひでえな…)

武道館の中は倒れてる人で溢れていた。

おそらく姫神美羽に魂を燃やされたのだろう。

「…なんだ?」

ふと魔力を感じた。かなり強い魔力だ。

「あっちか」

俺は魔力を感じる方向へ向かった。

すると…

「えい!」

「はっ!」

そこでは魔法使い二人が戦っていた。

(おいおいありゃ天之風雷御龍じゃねえか)

「なんだって!?じゃあ御三家なのか?それにしては…」

(兄弟の言いたいことはわかる。確かに妙だな…)

天之風雷御龍の力は絶大だか、契約者の少女が魔法の扱いに慣れていない。というか見た目は素人といった感じだ。

「どういうことなんだ?」

(よくわからんが、結構やばそうだな)

「ああ」

いくら精霊の力が強力でも術者が扱いきれていなければ力を出すことができない。今は精霊の魔力に振り回されている感じだ。

「はあああ!」

一方もう一人、―おそらく姫神美羽だろう。はやはり高位の術者といった感じだ。

龍の攻撃をかわしながら正確に魔法を放っている。

「きゃっ!」

あのままでは御三家の方がやられてしまうかもしれない。

「助太刀するぞ!」

(おう!)

俺は姫神美羽のはなった炎に数本の氷の剣を放った。

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