第2話 人生辛口
第2話 人生辛口(著者/ディケ)
「最近の事件、爆発や火災というところから考えるに火炎系の精霊と契約した魔法使いのはずだ。」
キンキンに冷えたジュースを飲みつつ考える。
(なあ兄弟。事件のことばっか考えてご苦労なこったな。)
俺の頭の中に直接声が響く。
(なんだよ。何か言いたそうだな。)
(そりゃあ言いたくもなるってもんだぜ。馬鹿の考え休むに似たりってな。兄弟は考えすぎなんだよ。頭の中であれこれしても真実なんて分からねえぜ。そんな事するくらいなら晩飯の事を考えてた方がなんぼか建設的ってもんだぜ。)
言いたい放題だった。相変わらず俺の精霊は口が悪い。
(誰が馬鹿だ。)
(もちろん兄弟がさ。おツムの出来がよけりゃ夏休みに補習なんて受けてねえだろうよ。)
クソ、反論の余地がない。今日は8月3日。世の中は夏休みだ。俺は学校に囚われたまんまだけどな!
(なあ兄弟よ。事件のことを考えるのはいいがよ。ちったぁ自分の事も考えるべきだぜ。正義や善行なんてのはよ、人生に余裕がある奴がやる事なのさ。)
(悪かったな余裕なくて!)
そんな事を言い合ってる間に家の前まで来てしまった。
「ただいま」
ガチャリとドアノブを回して家に入る。すると家の中からはクーラーの心地良い冷風が俺を出迎えてくれる。家は最高だな。
「生き返るな兄弟。夏はやっぱりクーラーの効いた室内に限るぜ。」
「全くもって同意だ。」
俺の中からするりと銀色の毛並みの美しい狼が出てくる。俺の精霊。口を開かなければって奴だ。本当にガルフリードの奴には黙ってて欲しいものだ。
「おかえりガル君、お兄ちゃん。」
ひょこっとキッチンから妹の
「ただいまですぜ姐さん。ところで今日の飯はなんですかい?」
どうでもいいが何で俺が兄弟で氷雨は姐さんなんだ?ガルフリードの中では契約している俺よりも氷雨の方が上なのだろうか?どっかでハッキリさせた方がいいかもしれないな。
「今日はチゲ鍋だよ。」
「うぉぉぉぉ!姐さんのチゲ鍋だぜ。もちろん俺の分もあるんでしょうね?」
まっ、待て!
チゲ鍋だと!
「もちろんガル君の分もあるよ。」
「待て待て氷雨!ガルフリードに辛くて熱いものを食べさせてはいけないって言ってあったよな?」
「そうだね。言ってたね。」
平然と頷く氷雨。こいつ、何を考えているんだ?
「俺の魔法が少しの間だけとはいえ使えなくなるってのも言ったよな?」
「言ってたね。」
またしても平然と頷く氷雨。
「魔法にかまけて赤点を取っちゃうような人には魔法を使えないというのはどういう事かをよく考えるべきなんだよ。」
クソ、またしても俺の頭の悪さが原因か!
魔法関連ならすぐに覚えられるのに!
「へへへ、そういう事だ兄弟。せいぜい勉学にでも励んでチゲ鍋の出ないように気をつけるんだな。まっ、俺は辛いのが食えるから兄弟のおツムにはこのまんまでいて欲しいがな。やっぱり体に悪いものほど美味いってのが良くわかるぜ。」
「ジャンクフードを食うみたいに言うな!どう考えてもエビアレルギーなのにエビ食べちゃうみたいな感じだろそれ。」
「ほらほら、もうすぐ出来るから2人とも手を洗った洗った。」
どうやらもう避けられないようだ。
手を洗った俺たちは食卓についてチゲ鍋を食うのだった。
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