秘匿禁域の精霊《スピリット》

チームNZGK

第1話 存在する力

 一話 存在する力(著者/ミステス)


 ふと、声が聞こえた。

 何かを叫ぶ声、それが自分にむけて放たれた声だと気づくのに数秒かかった。

 その一瞬のあと俺は何かに突き飛ばされた。

 そして目の前で赤い光がはじけた。

氷矢ひょうや…逃げて…」

 目の前でだれかが倒れる。

「…!」

 俺は何もしゃべることができずただ立ち尽くすだけだった。                                          …

 ジジジ…

「ん…」

 朝からうるさい蝉の声で目を覚ます。

「あつい・・・」

 猛烈な暑さを感じ額にしたたる汗をぬぐう。

「……」

 なにか夢を見ていた気がする。

 とても嫌な夢だ。

 だが夢なんてものは大抵は起きれば忘れてしまうものだ。

 どんな夢かは覚えていなかった。

「あつい…」

 あまりの暑さにもう一度呟く。

 今年の夏は記録的な猛暑らしい。

 まあ毎年同じことをニュースでは言っている気がするが。

「とりあえず起きるか…」

 ベットから起き上がる。

 身支度をすませ、朝食のパンをかじりながら朝のニュースを聞く。

「本日未明、原因不明の事故が発生し、数人のけが人が出ています」

「またか…」

 俺はテレビのニュースを聞きながら悪態をつく。

 ここのところ原因不明の事故や事件が多発している。

 何もないところが急に燃えたり。急に車が爆発したりと様々だ。

「原因不明…ねえ」

 俺は一人そうつぶやくと家を後にした。                                                                                         .

「よう、おはよう。星神ほしがみ

「おはよう、星神君」

「ああ、おはよう」

 学校につくとクラスメイトと適当な挨拶を交わす。

「大丈夫か?死にそうな顔してるぞ」

「暑いだけだ…」

「確かに今年は暑いよなあ」

「そうだよねーこんなに暑いと何もやる気が起きないよねー」

 クラスメイトと適当な会話を交わす。

 正直親しくしている奴らじゃないが無下にする必要もないため適当に返事をする。

 ほどなくして教師がやってきて。ホームルームが始まった。

 .

(今度はだれが…)

 俺は授業そっちのけで考え事をしていた。

 確証はないが今朝起きたという事故は俺は事故だとは思っていなかった。

 これは人間が起こした事件だ。

(とわいえこれだけの情報じゃなにもわからないな・・・)

 そんな風に考えていると。

「星神…星神氷矢!」

 星神氷矢とは俺のこと、つまり指されていた。

「はい」

「授業中にぼうっとするな。お前この問題解いてみろ」

 授業の内容など何も聞いていなかったためわかるはずがなかった。

(しかたがない)

 俺は席を立ち。黒板に向かう。

 そして…

「正解だ。聞いているのならいいがもう少し集中しろ」

「はい。すいません」

 一応謝ってから俺は席に戻った。

 その後も事件について考えていた。

 .

 放課後になり、一人帰路につく。

「それにしても暑い…」

 猛烈な暑さは夕方になっても収まってはくれなかった

 暑いのがとにかく苦手な俺にとっては地獄のようだった。

 飲み物を求めて自販機を探す。

「あったあった…」

 ようやく自販機を見つけた俺は飲みものを買う。

「ってぬるっ!?」

 どうやら補充したばかりの自販機だったらしい。

 俺が買った炭酸飲料はほぼ常温のままだった。

「マジかよ…」

 キンキンに冷えたジュースでも飲めば多少は涼しくなると思ったんだが。

 炎天下の下でぬるいジュースというのはなんとも悲しいことだった。

「……」

 おれは周囲にだれもいないことを確認した。


 ―だれもが一度は思ったことがあるだろう。

 ―『魔法が使えたら』と。

 ―空を飛んだり、炎をだしたり。

 ―ゲームの主人公のような特別な力が使えたらと。

 ―もちろん、こんな21世紀の現在でそんなことを言えばゲームのやりすぎと笑われるか頭がおかしいかと思われるだろう。

 ―だが


「魔法は存在する」

 それは最近の事件とも関係しているだろう。

 こんなことをいえば前述のとおりただの痛い人間だと思うだろう。

 だが、これを見てもそう思えるだろうか。

 俺の手の中にあるさっきまでぬるかったジュースはまるで冷凍庫から出したばかりのようにキンキンに冷えていた。

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