遭遇
少女の年齢は10歳くらいだろうか。身長からそのくらいに見えた。
髪はやや霞がかった黒色の長髪で、腰くらいまでの長さのため、風になびいて妖艶さを醸し出している。
服は白を基調として所々に赤色が入ったワンピース、草履を履いていて左腕には赤色の数珠のような物を付けている。
草履なんて今時の子にしては珍しいなと思った。
少女は何か困っている様子で、うろうろと歩きながら頻繁にため息をついていた。
僕は気になりながらも遠くにいる少女をただ眺めていた。
変態みたいだなぁと思い、周りを見回すも他に誰もいなくてホッとした。
少女は僕の視線を感じたのか、はたまた身の危険を感じたのか分からないが、僕に顔を向け、はっと何かに気がついた表情をしていた。
僕は、まずい、通報される!と思ってその場を離れようとしたが、
「そこの人、ちょっといい?」
と言われ、再び少女の方を向いた。
女の子にしては大人びた声で、口調もどこか昔の人?という感じがした。
少女は真っ直ぐこちらに歩いて来る。
ゆっくりと。
少女がすぐ近くに来た時、風が吹いた。白檀のようなとてもいい香りがした。
「そこの人、私が困っているところを見たな」
近くで見ると、目は二重、顔はシャープで鼻筋も通ってる、こんな若い年代でも美人と呼べる顔だった。
「おい、聞いているのか」
少女から少し低い声で問いかけられる。しまった見惚れていた。
「あ、ごめんなさい。見惚れてしまって」
しまった。素直に声に出してしまった。
「そうかそうか、そりゃそうだろう。
私なら、しょうがないだろう、ははは」
自信たっぷりの誇らしげな顔をしながら腕組みをしながら笑っている。
この人何かに困ってたんじゃないのかな?と思った。
そのくらい満足した顔だった。
「ふふっ、あ、そうだ、頼みたいことがあったんだ。
どうせ暇でしょ、人助けよ、手伝って」
「僕にですか?なんでしょうか?」
何故だか分からないが、小さい女の子相手に敬語になってしまう。
相手を無意識に敬っているのか。
「貴方にしか出来ないことなの。大事な役目よ」
僕は初めて会った少女から頼りにされて少し嬉しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます