土曜日

出会

 

「ピピピッ、ピピピッ」


 セットしておいた午前7時ちょうどにアラームが鳴り、休みにしては早起きをして支度を始める。


 休みの日に昼まで寝るのもいいことだと思うが、それでは休日の時間を浪費したといつも後悔してしまう。

 充実した休日を過ごすためなら早起きもやむ終えないと覚悟している。

 低血圧ではないが、朝にすぐ支度を始めるのは苦手だ。いつも二度寝をしてしまう。


 だが、昨日から決めていた休日の計画を実行するべく重い腰を上げてベッドから起きることにした。

 昨日決めていた目的地の邑勢神社に向けて準備を始めるため、朝ごはんの焼きすぎた目玉焼きと味噌汁、ごはんを少々。あまり食べすぎないように。


 支度も終わり、最近ネット通販で衝動買いした布地で水色のリュックサックに、お茶が入ったマグボトル、タオル、財布と必要最低限の物を詰め込み、アパートを出た。

 天気は雲ひとつない快晴、これほどにない散歩日和である。


 心の中で「いくぞっ」と気合を入れて歩き出す。


邑勢神社までは歩いて30分程だ。そう遠くはない。

 今の自分の体力では、往復1時間かからないところが限界である。それ以上歩いてしまうと翌日には筋肉痛で小鹿のようにプルプルになってしまうからだ。


 歩いていると近所なのに知らなかった小さい雑貨屋さんや古めかしい天丼屋を見つけた。新しい発見に嬉しくなる。

 体調は万全なので思っていたよりも早く神社に着いた。楽しさで足取りが早くなってしまっていたのだろうか。


 邑勢神社の入り口は、手前が大きな公園になっていた。

 公園にはジャングルジムやブランコ、広場も大きく、この辺りに住む子どもたちの格好の遊び場だ。


 公園を抜けた先には大きく重厚な鳥居が建ち、左右には桜の木が生えていた。初夏なので桜は咲いていない。

 公園を歩き、鳥居の近くまでくると、木枝で日陰になり、少し涼しく感じた。風が心地よい。


 ずっと日の当たるところを歩いていたから少し疲れた。どこか座れるところがあったらひと休みしよう。


 境内に入ると古めかしい拝殿が姿を現した。近所にある神社としては立派なものだ。


 よくテレビで神社の作法を見るが、僕はいつも忘れてしまうのか、はたまた面倒でやらないのか、鳥居の前で一礼したりはしない。


 僕は真っ直ぐ拝殿の前に置いてある賽銭箱の前に立ち、財布の中にあった5円玉を投げ入れた。


「いい出会いがありますように」


と呟き、鈴を鳴らし手を合わせた。


 仕事も順調なので、後はいい出会いがあればいいのだが、会社は男社会のため、女性と巡り会うことがない。

 いい仕事をするには、私生活が充実していなければ成り立たないと思っている。

 あとは彼女がいれば…というのが最近の悩みなのだ。


 しばらく手を合わせた後、歩き疲れたので拝殿の横に木のベンチを見つけ、腰を落とした。


 この後は特に予定もなかったので、どこか美味しそうな店でもあればお昼を食べに行こうかと思っていたところ、拝殿の横に小さな人影があることに気がついた。


 遠くでよく見えないので、目を凝らして見ると、そこには暗い顔をした女の子がいた。

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