第25話 生徒会長の一存 その2
「エリィが生徒会に捕まったってどういうことです?校長先生」
「詳しいことはわかりませんが、私がエリザベートに常に付けておいた使い魔が生徒会室で消滅させられたのです!」
「……」
その時、場の空気が一変した。
女子だけではなく、男子も含めた冷たい視線が校長を襲った。
「これは、事案ではないのかな?魔導帰宅部部員として、このセクハラは看過できないな」
「エリィが可愛いから仕方ないのは分かるけど、校長先生、それは……」
「シータ、それは分かって欲しくないのだが……」
「僕、校長先生のこと、尊敬してたんですよ。なのに……」
「これは、書いちゃってもいいよね」
めいめい言いたいことを言っている。
小さくなる校長。
しかし、ただ一人沈黙を守っているものがいた。
「先輩、先輩も何か言わないんですか?『もしアルファに同じことしたらぶっ殺します』とか……まさか、小さい子を愛でる者同士、通じ合ってるとか?!」
気がついたミューが、指摘する。
そう、イプシロンだけが、アルファの隣位置は守りつつも、固く口を閉ざしていたのだ。
全員の視線が今度はイプシロンに向いた。
「確かに、愛でる者を常に守りたいというその気持ちはわかる。俺も、
「イプシロン君……」
校長が、地獄に仏を見たように、イプシロンの足下にすがりつく。が……。
「それ美談じゃないですよ。冗談のつもりで私言ったのに……」
「兄さんサイテー!!」
「ちょっと……犯罪者2名?」
「先輩、僕先輩のこと、尊敬してたんですよ、なのに……」
「えーい、落ち着けお前ら。あー、アルファは、許してくれ。……あくまで近いか遠いかが分かるレベルだ。俺も物理の研究で忙しいから一日中ついていてはやれんしな」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「校長先生。裏切らないでください……。後な、お前ら。俺が黙っていたのは、今言ったことが理由じゃ無い」
「話を振っておいて申し訳なかったですが、どういうことですか?」
「お前たち、
全員に問いかける。
イプシロンは続けて言った。
何故かというと、この学園は勇者の学園であり、放っておいても勇者同士で話し合いが行われ、自然と部、同好会同士で合流していたからだ。
それが今年になって、そういった話し合いのタイミングを待たずに、いきなり開催された。
何者かの意図がそこにあるのではないか?
イプシロンはそこまで自分の仮説を説明すると、皆の顔を見回した。
「確かに、先輩の言う通りかも。犯罪者2号じゃなかったんですね。安心しました」
「ちょっと、ミュー!被害者の私の立場は-?……でも、そっか物語的には何者かの悪意を感じる展開よね。仕方ない、今回限りは許してあげる、兄さん」
「でも、だとすると、誰がそんなこと……?」
「シータ、物語的には、こういうとき、それによって利益を得るものが誰かって考えるのよ」
「アルファ、賢いんだね、君。私にはわからないや」
「大丈夫だよ、シータ。かく言う私もさっぱりだから。魔導帰宅部脳筋同盟として仲良くしようよ」
「ミュー……ちょっとそれは嫌かも……」
「僕、なんとなくわかりましたけど、やっぱり一応、まず、イプシロン先輩の意見をうかがいたいです」
デルタのその一言で、再び全員の視線がイプシロンに集まった。
「いいだろう。校長先生、念のため確認したいんですが。俺が調べたところによると、ここにいるのは全員特待生枠だ。あっていますか?」
「ああ、そうだ。君たちは、故郷の推薦、それぞれの能力、人格などを全て考慮したときに、並外れた者として認定された、特待生枠だよ」
「全然知らなかった……」
「シータ、お前、全然自分の能力に自覚無いのか」
「そういうガンマこそ無いんじゃないの?料理ばっかしてて、私のほう見てくれないし!」
「お、おい、ここでそんなこと……」
「コホン……ただ、本人に言ってしまうと、若いだけに増長してしまうことがあるからね。秘密にしておくんだ。今言ったのは、君たちなら問題ないと思ったからだよ。それは理解してほしい」
「兄さん、ということは話の展開からすると……」
「間違いないな、生徒会が自分達の実績を上げようとしているんだろう」
頷く、アルファとデルタ。
沈黙を守るガンマ。
シータとミューはまだわからない様子である。
「どういうことです?」
「そうですよ、魔導帰宅部脳筋同盟にも分かるように優しく、かみ砕いて説明してください」
ミューが説明に注文をつけた。
イプシロンはポリポリとその銀色の頭をかきつつ、ミューの方を向いて説明をはじめた。
「学校としては、特待生枠の生徒には、学園内、学園外で正当に活躍してほしいってことはわかるな?」
「それくらいはわかります。私にも、バレー部の顧問が今だに、戻ってくるようにそんなこと言ってきますし」
「ところが、学園のその意に背いて、持つ能力を明後日の方向に発揮するものがいたとしたらどうだ?」
「あれ、わ、私?バレーしないから……」
「そうだ、お前含めて俺たちだ。俺が言うのもなんだが、俺たちは特待生枠に数えられるほどには優秀らしい。しかし、そいつらが学園の考える正当な道を歩まず、個々人で部・同好会として好き勝手している。学園としては気に入らないだろうな」
「……」
「そして、生徒会はそういった学園の意を考え、俺たちの同好会を潰しにかかったんだ。まず、
「それじゃあ、エリザベートが生徒会に言ってくれても……」
「そうだな、ここでまた変にまとまられてはということを考えれば、生徒会が魔導同好会に俺たちの加入を認めるはずが無い」
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