第16話 小説家を見つけたぞ その1
ニャアーゴ、ニャアーゴ。
「のう……シータよ」
「なあに?エリィ」
「これ……どうにかならんかのぅ……」
ニャアーゴ、ニャアーゴ……ペロペロペロペロ。
「ええええい、まとわりつくでない!絶滅させられたいかっ!!」
左右から、頬をなめられたのに耐えかねて絶叫するエリザベート。
彼女の周りには、数匹の子猫。
その剣幕に驚いたのか、一瞬遠ざかりはしたものの、もう数度目で慣れてきたからか、すぐにまた、彼女の近くに近寄ってくるのだった。
「ふふふ、エリィがどんなに悪者ぶっても、本当は優しいんだってわかっちゃってるんだよ」
「わからんでいい!……しっかし、ミューが頑なに部屋を譲ろうとしなかった原因がまさかこやつらだったとわのぅ……」
「あの子本当に優しいんだね。捨て猫を拾って部室で育ててるなんて」
「こんなことになるのであれば、あのような安請け合いするのではなかったわ!」
「わ、私は、ま、負けたの……か……」
ミューは、体育館の床を転がって行くボールを、ただ呆然と見ていることしかできなかった。
「久しぶりであったからな、上手くできるかこのワシですら自信はなかったが、流石はワシ。ブランクなどというものは関係無いわい」
「いったい、どうやって……?」
「知れたことよ。まずは、我が宝物の1つであるこの
「そ、そんなことが……」
「あとは、ワシの氷魔法で光を散乱させ、ボールを見えなくしてしまえば、消える打球の完成というわけじゃ」
エリザベートはもっともらしく説明しているが、そのあまりにメチャクチャな、普通であれば実現不可能なその内容に、ミューは引き続き呆然とするしかなかった。
「む?信じられぬのか?おぬし先ほどその目で見たであろう。その目が証人じゃ。まあ、ワシが言いたいのはの、おぬしの
「えっ……」
人は、自分の行動の結果として、とても辛い目や恐ろしい目にあうと、それ以降トラウマを抱えてしまう。
エリザベートがわざわざ、
「実は
「それは……できないよ」
「なぜじゃ?」
「最初は、贖罪のつもりだったんだ、私。でもね、バイトや人助けで色んな人に『有り難う』って言われているうちに、こんな私でも受け入れてくれる、感謝してくれる人たちがいるってわかって……初めてそこで、自分のことが好きになれたんだ……だから、帰宅部を私続けたい」
ミューは、進む道に悩んでなどいなかったのだ。
「なんと、おぬしは自分でもう答えを出しておったのか!これではワシ、道化ではないか」
「ううん、今、あの子が回復したって教えてくれたでしょ。少しホッとしたよ、私。それに、あなたじゃないけど、私も久しぶりにバレーできて楽しかったし」
「むー、ワシとしてはそれでは不満なのじゃー」
「あっ、じゃあ一つお願いされてほしいんだけど、いいかな?」
「もー、何でも言うがよいぞ……」
「その結果が、この有様じゃあああああ」
魔導同好会の部屋の中で、再びエリザベートが絶叫した。
彼女をなだめるシータ。
丁度そこに、扉を開けて、ミューが入ってきた。
「すっかり慣れてるね。この子たち。ありがと、エリザベート」
「『ありがと』じゃないわい!早う引き取り手を探さねば、こやつら骨も残さず食ってしまうからの!!そう思え!!!」
「穏やかじゃないねえ。『何でも言うがよい』って言ってたじゃない」
「た、確かに言うたがの、て、程度というものがあるじゃろう……何じゃ、何をニヤニヤしておるのじゃ、シータ?」
「だって、エリィとミューのやりとりがとっても楽しそうだから」
「楽しくなどないわい!」
「わかってるねえ、シータは。確かに私はあの戦いでピンと来たんだよ。この子こそ、私とコンビネーションを組むのにふさわしいってね」
「ぬう……」
「この戦いが終わったら、魔導帰宅部を一緒に立ち上げるよ、エリザベート。聖神学園一の同好会を目指そうじゃないか」
「お前は、ワシの同好会をどっちの方向へもっていくつもりだーー!」
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