第4話「つづく」

夢を見ている。遠く、遠く、この世の何処かで呼ぶ声が、悲鳴と怒号が聞こえる。

ずぅっと昔で、昨日の事だ。

途方も無い未来の事か、明日の事だ。

何度も繰り返してきた事だ。これからも繰り返す事だ。


「アナタはトクベツで、ずっとムカシからツヅけてキたコトなのよ。」


誰の声だろう、聞き覚えがある。


「でも、ユリはもっとトクベツなの。」


あぁ、その言葉は。


「起きろじゃしーーん!」


「あぁ...おはよう、マウォー。夢じゃなかったのね、昨日の出来事って。」


「何寝ぼけてるじゃしん、もう五時になるじゃしん!サイテイダーが来るじゃしん!」


「とんだブラック...」


急いで着替えて、まだ暗い街へと繰り出す。当然だろう、まだ四月だというのに。

そして道路の真ん中を全力で走り出す。


「どこに行ってるじゃしん!?」


走る。


「それと!最終確認じゃしん、本当に魔法少女になっていいじゃしんね?」


走る。


「何をいまさら!拒否権なんてない癖に!」


走る。


「一応確認するじゃしん!」


走って。


「...ッ変身!」


掛け声と同時に眼前のビル向けて飛び、その壁を走り上へと全力で登り始める。


「決まっているじゃない!」


変身が終わると同時にほんの少しだけ明るくなり始める空へ飛び出す。


「私がっ!魔 法 少 女 だ ー っ ! 」


「サイテイダァァァァアッ!」


「うるさいじゃしーーーん!」


空が割れ、その身体中からある口からお決まりのセリフを叫び現れた緋色超巨大な鳥。


「どっちが最低なんだか! こんな奴、一発で終わりにしてやる!」


体制を整えて、突っ込んで来る鳥に対して前へ両手を広げる。


「魔法少女式! ピラニアミサイルズ!」


広げていた両手を握りしめると同時に、背後に球体となり浮いていた彼女の武器が大量のピラニアとなり敵へ発射されていく。

最低の目覚めを演出する爆音とは裏腹に、相手に致命傷を与えるには行かなかったらしく。煙より現れた鳥型サイテイダーの突撃を許してしまう。


「「「サイテイダァあぁアぁア!」」」


幾多もの口が叫ぶ。すごくうるさあーい。


「くッ....すごい速さ進んでるせいでっ...離れられない...!」


『サイテイダーが現れました、三丁目付近にお住みの方は外出はしないようにお願いします。繰り返します...』


「なんだよもっとうるさいな!黙ってろよぅ」


コイツがどんな事をするかはわからないが、長引くと不利なのは明らかにこちらだ。

どうする?私、考えられるコイツの特徴はなんだ?


「アぁアァァァあア「うォあうゥゥ!!ぁああアアァあァ!!!」」


「相変わらずうるさいわねー!その口を黙らせたく...」


そうか、その口を黙らせればいいのか。


「魔法少女式 ! ピラニアミサイルズ!」


再び空にピラニア達が現れる。


「コイツの口の中へ!」


ユリの指示によって、ピラニア達は身体中にある口の中へと入り込んでいく。そして


「一斉爆破ッ!」


緋色の超巨大鳥の内側から光が溢れた瞬間、サイテイダーは悲鳴を残して散った。


「お疲れ様、お見事じゃしん!」


地上へ降りながら話しかけられる。


「街への被害が無くて良かった。でも...これから学校なんだよね。」


「...こんな時にも学校はあるじゃしん...?」


「まぁ...お昼は現れないからって...」


どっちが悪魔なんだか?って話だけど、慣れてるから別にいい。


「何はともかく、これで正式に契約が結ばれたじゃしん!次から戦うときは、もっと力が扱えるはずじゃしん。ただ...」


ただ...?マウォーの顔は暗い。


「絶対に、無理はしないでほしいじゃしん」


「いまさら...てかむしろラッキーでしょ。」


みんなを守るためのこの力なのだ。

痛みなんて

いまさらだろう。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る