大事件発生!
ココルが朝目覚めると、
「あれ? ねえ、バトラー。愛菜ちゃんと勇治くんはもう学校に行ったの?」
「お二人は、今日は学校の社会見学でプラネタリウムに行くから、少し早めにお出かけになったのですよ。
「ああ、そうだった。うっかりしてた」
「フフ……フフフ……。ウフフ……」
「うっかり屋な性格」というあまりうれしくない
いまだに「ウフフ……」と笑っているバトラーのことは気にしないことにして、ココルは自分と
バトラーとココルには料理で味見するための
でも、バトラーには大ざっぱな味覚機能しかないため、あまり食事が楽しいと思わないらしく、
ココルは、ウィンナーや甘めの卵焼き、熱々のトーストを手早く作った。この間料理を勉強し始めたばかりなのに、すでに
信人が食卓にやって来たのは、ココルがちょうど信人を呼ぼうとしていた時だった。
「ようやくウイルス
昨日は研究所で
ハートのアクセサリーの左右には
「ココル。このハートのアクセサリーの中に、おまえの電子頭脳の元となるメインメモリーが入っていたんだぞ。
「うん、覚えているよ。こころ博士は、このアクセサリーの中のわたしにたくさん話しかけてくれてた」
「これは、おまえにとっては大切な物だからな。これからも、ずっと持っていなさい」
そう言い、信人はココルの首にハートのペンダントをかけてくれた。
「実は、ハートのアクセサリーにカギをつけたして、
「え? すごーい! じゃあ、ムートちゃんみたいなロボットがいたら、わたしが助けてあげることができるんだね! ……でも、どうやって使えばいいの?」
「あのな、ここをこうしてだな……」
信人は、ココルにハートのアクセサリーの使い方を教えてくれた。
ココルが新アイテムの使い方を教わり、二人が朝食を食べ終えた後も、バトラーは「ウフフ……。ウフフ……」と笑っていた。ちょっと……いや、かなり恐い。
このバトラーの奇妙な
そのころ、愛菜と勇治たちは学校のクラスメイトたちとプラネタリウムに来ていた。
「ようこそ、プラネタリウムへ。宇宙の星々をめぐる旅をどうぞお楽しみください」
プラネタリウムの
頭上を見上げると、月とたくさんの星々も見えた。まるで、宇宙飛行士になって宇宙空間に
「月では各国が共同で基地を作り、
解説員がそう言うと、愛菜たちはどんどん地球から
「……ねえ、勇治。ココルが言っていたことを覚えてる?」
愛菜は、小声で勇治に話しかけた。勇治は、「何のことだ?」とは、言わない。
「ああ、覚えているよ。母さんが『ココルが完成したら家族のみんなで月に旅行へ行きたい』と言っていた、という話だろ? 母さんはロボットに夢中だったけど、オレたちのこともちゃんと愛してくれていたんだな。……忘れられてなんかいなかったんだ」
「当たり前だよ。わたしと勇治は、お母さんの大切な子供なんだもの。……そして、ココルもお母さんにとって大切な娘なのよ。ココルは、わたしたちのきょうだいなんだわ」
「…………」
「いつか、みんなで行こうね。映像じゃなくて、本物の月に」
勇治は無言でうなずく。愛菜は、久しぶりに弟の優しげな顔を見られてうれしくなり、ニコリとほほ笑んだ。
ズゴゴゴーン! ズゴーン!
「な、何⁉ 何なの⁉」
地面が
「
解説員の女性がせっぱつまった声で、生徒たちに呼びかける。
「え? ロボットが⁉ どういうこと?」
ロボットが暴れていると聞いて落ち着けるはずがない。みんなは大パニックになり、先生たちの「落ち着いて、順番に外へ出なさい!」という声も耳に入らず、われ先にと逃げだした。この
「勇治、どこ? 勇治ぃー!」
愛菜は逃げる生徒たちにもみくちゃにされながら、勇治の
「みんな、北口はこっちだ! 早く逃げろ! 火事が発生したみたいだ!」
愛菜は、建物の外に出られた子たちの中から勇治の姿を探したけれど、見つからなかった。
「まさか、まだプラネタリウムの中に……? ど、どうしよう……。勇治が死んじゃう……」
愛菜は泣きじゃくり、どうしよう、どうしよう、と言った。
「だれか……勇治を助けて……。だれでもいいから、勇治を助けてぇーーーっ!」
愛菜の
助けを求める彼女の思いは、遠く
愛菜が泣き叫んだのとほぼ同時刻。いつも可愛がっている家の庭の花たちにお水をあげていたココルはじょうろを落とし、ブルブルと震えながらその場にうずくまった。
「どうかしたのか、ココル⁉」
「ココル! 体のどこかに異常が発生したのですか⁉」
おどろいた信人とバトラーが、ココルに
ココルは、自分の体を両腕で抱きしめながらつぶやく。
「電気信号が……とても強い感情が……たくさん押し寄せて来る。体がブルブルと震えて泣きたくなるようなこの感情は……『恐い』だ。恐い、恐い、恐い……!」
愛菜と一緒に観たホラー映画で、主人公の女の子が
「ココル。しっかりしてください!」
バトラーが、震えてパニックになりかけていたココルの肩を
ハッと正気にもどったココルは
「信人博士! あっちの方角から、たくさんの『恐い』という感情が伝わって来るの! きっと、何か大変なことがあったんだよ!」
ココルの言葉を聞き、信人はおどろいた。
人間が脳から発する電気信号は
それなのに受信できたということは、よほど多くの人間が「恐い!」と激しく感じて、強い電気信号のかたまりになったのだろうか?
それとも、「人工知能研究の天才」の名を欲しいままにしたこころが開発したココル・ハート・システムは、信人が考えているよりもすごい能力を
信人はそんな
「……ちょっとネットニュースを見てみよう」
信人は、腕時計型コンピューターを
「
ニュースの映像を見た信人は「愛菜と勇治が行っているプラネタリウムじゃないか!」と叫んで、その場にへなへなと倒れそうになった。ココルとバトラーが慌てて信人を支える。
プラネタリウムは、
「信人博士! わたし、愛菜ちゃんと勇治くんを助けに行ってくる!」
ココルがそう言って家を飛び出そうとした直前に、信人の腕時計型コンピューターがプルルル! プルルル! と鳴った。電話の呼び出し音である。腕時計型コンピューターには、テレビ電話の機能もついているのだ。
「信人博士! 一大事だ!」
空中に映し出されていたニュース映像が消え、かわりに
「な、なんですか、遠山部長。こっちも大変なんです。うちの子たちが社会見学に行っているプラネタリウムで大事件が……」
「そう! プラネタリウムだ! タロースが、プラネタリウムで暴れているんだ!」
遠山部長の言葉に、ココルは「え⁉ タロースが⁉」とおどろいた。
正義のロボットのタロースが、人間たちをおそうだなんて、信じられない!
「
「だったら、タロースのことも助けてあげなくちゃ! 信人博士、このペンダントがあったら、ディアボロス・ウイルスをやっつけられるんだよね?」
ココルがハートのアクセサリーをギュッとにぎりながらそう言うと、信人は力強くうなずいて「ああ! もちろん!」と
「遠山部長、安心してください。例のウイルス対策のアイテムは今さっき完成しました。タロースを必ず元の警察ロボットにもどしてみせます」
「よろしく頼む、信人博士!」
遠山部長が頭を下げると、信人は「
「よし! スカイカーをぶっ飛ばして、みんなでプラネタリウムに行くぞ!」
信人、バトラー、ココルはスカイカーに乗りこんだ。信人は今回も自分で運転しようとしたが、運転席でハンドルをにぎっていたのはココルだった。
「いっくよー!」
「こ、こら! 子供が運転をしたらダメじゃないか!」
「何をおっしゃっているのですか、信人博士。ココルはスカイカーの空中レース世界大会で優勝できるぐらいの運転能力がありますよ。ココルにあらゆる乗り物の運転機能をつけたのは、博士ではありませんか」
「あっ、そうだった……」
ココルが運転するスカイカーは
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