第43話 今猿編最後のやさしさ
結局僕はあれから1週間ありすと仕事の話しかしてない。
「
そう僕に声をかけてきたのは、
誰かにこの苦しみを吐き出したい気分だった。
~その夜~
「あれからありすとは、どうなったの? 」
めぐは単刀直入に聞いてきた。
「何も変わってないよ」
「じゃあ何でありすを避けてるの?」
めぐは相変わらず鋭いな。
「僕は……あの時気絶してなかったんだ」
僕はめぐにあの時起きたこと全てを話した。
「ありすのお兄さんと
めぐは驚いていた。
「しかもありすは橘さんが好きだと認めて、必死に橘さんを命がけで、庇っていて、そこに神様が現れて助けてくれたのね? 」
こんなファンタジーな話なのに、めぐは僕の信じているようだ。
「僕に入る余地などないよ。僕こそ両思いになれなかったんだよ」
「それは違うわ。誠。あれだけ神様が繋いでくれたのにありすは橘さんの記憶はないとはいえ、誠と付き合い、記憶が戻っても別れようとはしなかった。それはありすが誠のことを好きだったからよ。ただ縁がなかっただけ」
そうか……縁がなかっただけか……ありすも僕のことが好きだったのか……
何だか心の
「前世から待ってるやつに譲ってやるか」
「さすが誠ね……もう手放す心構えができたのね」
すると、めぐのスマホに電話がかかってきた。
「はい!如月です。
不知火……確かめぐの初恋の相手だったよな……?
「うん。今から不知火くんの家に? 」
めぐは困りながら僕を見ている。いきなり自分の家に誘うなんてなんてやつだ。
「僕は大丈夫だから。めぐが行きたいなら行っていいよ」
めぐが行きたいなら僕は止める資格なんてないしな。
「え……あっうん」
めぐは歯切れ悪く返事をした。
「じゃあ行くね」
そう言ってめぐは電話を切った。
みんなして、『初恋』『初恋』『初恋』って……
なんかムカムカする。
「送っていくよ」
「あ、ありがとう」
なぜかめぐの機嫌はあまりよくない。
お店から出て裏道を歩いていると、めぐがこけそうになった。
僕はめぐの体を支えて抱きしめた形になった。
「あ、ありがとう。もう大丈夫よ」
ああ、もっとありすに
もっと嫉妬しても我慢せずに怒ればよかった。
橘さんみたいになりふり構わずありすにアプローチしておけばよかった。
僕が今まで大事なことを言わなかったからだ……
僕は急にめぐまでいなくなったらどうしようと思った。
「い……行くなよ……初恋の人の所に」
僕はぎゅっと抱きしめていた。
「まだありすを諦めきれないのね」
「違う!不知火の所に行くなよ」
めぐは戸惑いながらも納得したようだ。
「わかった。行かないよ! 」
「ありがとう。ごめん。今離れるよ」
僕はめぐから体を離した。
「別にいいよ。帰ろうか?」
めぐはどこかにメールしていた。
その後は特に進展はなく、僕はめぐを家に送り自分はタクシーで帰った。
~翌日~
僕はありすを、カフェに呼び出した。
「ありす! 待たせたな。話をしようか」
「ああ。そうだな」
ありすは意を決したようだ。
「僕から言わせてくれ。好きな人が出来たから別れてくれ」
きっとありすはこのセリフを言うつもりだったのだろう。でもありすから自分の理由で別れてほしいなんて言わせたら、ありすのことだから罪悪感が残るだろう。これは僕からのありすへの、最後のやさしさだ。
「ああ……そうか。分かった」
悔しいけど、この時のありすはとてもよい表情をしていた。
「今までありがとう。誠が好きな人というのは、めぐのことか? 」
昨日のあのもやもやした気持ち、不安、もしかしたら僕はめぐが好きなのかもな。
僕はきっと一途さで橘さんに負けていたのかもしれないな。
だからこそありすに橘さんのことであまり怒れなかったのかもしれない
「そうかもな」
僕達は握手をして別々に帰った。
僕が振るのがありすへの最後のやさしさって言ったけど、もうひとつお節介しとくか。
僕はある所に電話をかけた。
電話
『もしもし、今猿です』
電話 (?)
『もしもし? 今猿さん! どうしたんですか? 』
前世から待っているのになかなか結ばれない橘さんに電話した。
電話 今猿
『橘さん。僕とありすはさっき別れました! 』
電話 橘さん
『えーーー!!!! なんで僕にそれを伝えてくれるんですか? 』
電話 今猿
『前世からの願いなんだろう? あんまりグズグズしてると僕が許さないぞ』
電話 橘さん
『分かりました! ありがとうございます。もうグズグズしません』
電話 今猿
『幸せになってください』
電話 今猿
『やっぱり別れたのって僕のせいですか……? 』
僕とありすが付き合ってる時にあれだけ強引にアプローチしたくせに今更罪悪感がでたのか? 少しからかってやろう。
電話 今猿
『ああ! そうですよ! 橘さんのせいですよ! 』
まあ、ホントに橘さんのせいなんだけどな。
電話 橘さん
『やっぱり……今更ですが色々とすみませんでした』
電話 今猿
『なんてね。僕から振ったんですよ。橘さんとは関係ないです』
僕も悪役になりきれないなあ。
電話 橘さん
『……そうなんですか』
橘さんはなんとなく嘘だと見抜いているようだ。
電話 今猿
『じゃあね。早くしないと他の人に出し抜かれますよ』
僕は電話を切った。
僕は幸せになれるかな?
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