第27話 どうして……?
僕はその人物を、呼び出した。
「急に呼び出してどうしたの…?
僕は信じたくなかった……しかしさっき
「どうして蔵子さんの実家に石を投げつけていたんだ? 」
「僕はそんなことしてないよ。橘くん」
天沢智はこんな真剣な話をしているのに余裕そうだ。
「見たんだ……僕は。僕を狙い、蔵子さんの脅迫、蔵子さんの実家に石を投げつけ、不知火に嫌がらせをし、今猿さんをトラックで狙い、
「なんだ。全部バレたのか。そうだよ……僕が全部やったんだよ」
智は相変わらずに余裕そうだ。
「友達だと思っていたのに………なんでだよ! 」
「友達?僕はそんなこと思ってなかった……無愛想で努力もせず、性格も悪くて頭も賢くない特に抜きん出る才能もない…それなのに、お前の周りには人が集まり、そして蔵子さんに好かれやがって………気に入らないんだよ! 僕は見てるだけで幸せだったのに! 」
智がガチ切れしている。こんな智は見たことない。
聖川先輩よりもガチで嫌われてるじゃないか。
「だからもういなくなってくれる? 」
智がポケットから空気刀を取り出しスイッチを入れた。青く光っているから恐らく空気刀改だ。そしてすぐさま僕を狙ってきた。
「権蔵! 憑依だ」
ダメだ。もう間に合わない……
─ダンッ
─カンカラカーン
智は空気刀改を落とし、手を押さえ痛がっている
後ろを見ると
「ふんぬ! 」
智が痛がっているそのすきに権蔵は僕に憑依した。
「薬研先生! 」
こんな時になんだが、薬研先生は銃刀法違反で捕まらないのだろうか?
「俺は特別な許可もらってんだよ……大丈夫か?橘くん」
薬研先生に心の中の声も聞かれたのだろうか?
「大丈夫です……助けにきてくれたんですね」
「いや、前から天沢智が怪しいと思ってたんだがなかなか尻尾を出さなくてな……たまたま橘くんと出くわしたんだ。危ない!」
智は後ろから空気刀改を振り回し、薬研先生は僕を庇い腕を怪我した。
「おしゃべりしてる余裕なんてあるのかな? 」
能力を向上させる指輪をしている。手を負傷しても戦えるわけだ。
「薬研先生は警察へ連絡を。僕はここで、食い止めます」
「1人で大丈夫か?」
薬研先生は不安そうだ。
「大丈夫です! こっちにも秘密兵器があるんです! 権蔵!
「ふんぬ! 」
ボールペンサイズの刀『朔』が元の大きさになった。
「これは伝説の刀でどんな刀にも傷をつけられない刀なんですよ。早く行ってください」
「わかった! 負けるなよ! 」
本当はこの世で1番切れる刀が勝ったらどうしようと内心不安だったけど、権蔵が憑依してるせいか、自分が思っているよりつい見栄を張ってしまった。
「行くぞ! 権太」
わー! 待て待て。まだ心の準備が……! いざという時かっこつけられないのが僕なんだよな。
覚悟していくか!
─カキーン
権蔵は智の空気刀改を朔で受け止めた。
「橘!権蔵を憑依させたな……!」
「なぜワシのことを知っているんじゃ……? 」
そういえば、智には権蔵のことを話していないはずだ。そして4の儀式もしてないから権蔵のことは智には見えないはず……
「連絡先交換した時にスマホに盗聴アプリを入れたんだよ。権蔵に僕のことを見抜かれたらやばいからね。ふたりで飲んだ時には
「くっ。ワシの弱点をつきおって……」
権蔵の
「まさか建物の記憶から僕を見抜くとは思いもしなかったよ! 」
─カンカンカキーンカーン
能力を向上させる指輪と空気刀改にさすがに権蔵も圧倒されているようだ。
─カンカラカーン
この世で1番切れる刀とこの世でどんな刀でも傷をつけられない刀の勝負は……傷をつけられない刀だった。
智は空気刀改を落とした。権蔵(僕)は空気刀改を拾い、朔を智に向けた。
やはり権蔵と智の剣術の腕前の差が圧倒的に違ったのが智の敗因だろう。
「参ったね~さすが異世界の最強守護霊は違うね」
こんな時なのになぜか智は余裕そうだ。
「橘くん。智くんどうしたの? 」
僕の後ろから蔵子さんが来た。
「来ちゃダメだ! 蔵子さん」
僕が後ろを向き叫んでいる間に智は蔵子さんの後ろに回り込んだ。
能力を向上させる指輪をしているから足が化け物級に早い。
智は今度はポケットから電気ガンを取り出した。
電気ガンを後ろから蔵子さんの頭にあてた。
「形勢逆転だね。僕が権蔵に勝てないことも予想の範囲内だよ!」
「ぐぬぬ! 卑怯な……武士の風上にもおけんやつじゃ! 」
くそ! すべて計算されていたのか。笹野ありすの頃なら智を吹っ飛ばしてくれるのに……
「智くん。どうしてこんなことをするの? 」
蔵子さんが怯えている。
「最初……
高校時代に蔵子さんが歩道橋の階段から落ちた真相はこうだったのか。
「あの方とは誰なんだ!? 」
「教えられないね。最強の異世界人ということしか」
異世界人……? 健一か? それとも青柳くんか? それとも新たに異世界人がいるのか?
「私をどうする気ですか?」
蔵子さんがもがいている。
「手荒なことはしないよ……僕は見てるだけでいいんだ。だから小豆沢さんが今見た記憶はあの方に消してもらう。そして橘には消えてもらおうか」
智はそう言って、電気ガンを僕に向けた。
すると、蔵子さんが
小豆沢さん……今記憶ないんじゃ……
─ファンファンファンファン
警察がやってきたようだ。
「大丈夫か?橘くん、蔵子ちゃん」
薬研先生がやってきた。
「大丈夫です……蔵子さんがやっつけてくれました」
目に止まらぬ速さで……
「大丈夫です! 薬研先生、事前に連絡ありがとうございました」
蔵子さんは淡々と言った。
蔵子さんの雰囲気がなんか笹野ありすのようだ……
「こいつは俺達が連れていく」
警官と薬研先生が智を連れて行く。
「これで終われる……」
智はどこかホッとしたような顔をしていた。
やはり智は本当はこんなことやりたくなかったんだろう。
しばらくすると、蔵子さんと僕はふたりきりになっていた。
「蔵子さん……大丈夫ですか? 」
「ああ、大丈夫だ」
ああ、記憶を失う前の笹野ありすだ。
「記憶が戻ったんですか……? 」
「権蔵に頭を触れられたあとに、橘くんのプレゼントを見つけた時に記憶は戻っていた。」
しばらく記憶のないふりをしていたのか……
「蔵子さん! 好きです……蔵子さんは今は誰が好きなんですか? 」
今猿さんか……僕か……
「私達が初めて会ったのは部活見学の時だと思ってただろう? 」
蔵子さんは僕の質問に答えず、違う質問をしてきた。
「そうですね」
「違うんだ……入学式の朝だよ」
蔵子さんが昔のことを語りだした。
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