第23話 よく切れる刀
「結婚はいいぞ! 橘」
「そうっすよ。橘先輩も早くしたらいいのに」
「僕だって早くしたいですよ」
僕はえんえんと飲み屋でふたりの
「
「
高梨先輩と桂は不満とかないようだが、奥さん達は果たしてどう思ってるんだろう…?
もう0時過ぎてるけどふたりとも帰らなくて大丈夫なのかな?
─チロリーン
─チロリーン
─チロリーン
─チロリーン
─チロリーン
─チロリーン
─チロリーン
「
僕は机に置いてある高梨先輩のスマホのTOINの通知音が気になった。
「ん? どれどれ」
高梨先輩がスマホを見ると顔面蒼白になった。
「スタンプがめっちゃ怒ってる……」
高梨先輩は慌ててTOINの返事を打っている。
「大丈夫っすよ!スタンプ押すうちは怒ってないっすよ」
桂は他人事だと思い、笑っている。
─チャラリラチャラリラチャラリラ
「今度は桂のスマホが鳴っているぞ! 」
多分桃井さんだな。
「もしもし……高梨先輩と
どうやらふたりともすっかり奥さんに尻にひかれているようだ。
僕のスマホも鳴るかな? 小豆沢さんから。
……
……
……
……
……鳴らない!
「ふたりが羨ましいですよ!僕も
僕は机に突っ伏した。
「がんばれ!橘」
「ファイトっす。橘先輩」
ふたりが上着を着ている。
「じゃあ俺達帰るから……橘も気をつけて帰るんだぞ」
「橘先輩。真里ちゃんから聞いたんすけど……小豆沢課長の意思は固く
やっぱり蔵子さんはまだ今猿さんのがいいのか……。
高梨先輩と桂は慌てて帰り支度をして帰っていった
僕は如月さんに電話してみた。
電話 橘
『もしもし、女子会で今猿さんを応援するって言ったらしいですけど……』
電話 如月
『あっごめん。あの場はああやって言うしかなくて……しくしく』
えっ如月さん泣いてる…?
電話 橘
『大丈夫ですか?泣いてるんですか……? 』
電話 如月さん
『大丈夫じゃないわよ。かっこよく姉御っぽく言ったけど、本当は誠に未練タラタラよ~今は寂しく1人でお酒を飲んでるのよ』
電話 橘
『飲み過ぎじゃないですか?』
如月さんは泣き上戸だったのか。
電話 如月さん
『大丈夫よ!私と
これは長くなるな……。
─プルルルルルル
僕のスマホが鳴った。表示された名前は小豆沢さん!? 小豆沢光
電話 橘
『電話かかってきたのでまた今度聞きますね! 』
僕は如月さんの電話を切り、小豆沢さんの電話をとった。
電話 橘
『はい、橘です! 蔵子さん』
電話 小豆沢さん
『もしもし、小豆沢だけど橘さん?蔵子ちゃんがどうかしたの? 』
この声は光さん? 何で?
「くくく、引っかかりおった。ワシが名前を変えておいたのじゃ」
権蔵が笑いを堪えながら言った。
こ、こいつは……! 僕は電話しながらお守りに念じた。
「ぎゃああ」
電話 光さん
『今、権蔵の叫び声が聞こえたような気がするけど』
電話 橘
『気の
権蔵の声が電話越しでも聞こえるのか。
電話 光さん
『それより見つかったよ! 本』
電話 橘
『ホントですか?なんて書いてありましたか……? 』
電話 光さん
『魂の分離術……切り離したい魂を呼び出し、その魂が愛するものがこの世で1番切れる刀と伝説の古い刀で前世と現世の間を切るらしいよ』
電話 橘
『1番切れる刀なら当てがありますよ』
電話 光さん
『じゃあ後は伝説の古い刀だけだね。何でも書物には『
電話 橘
『刀の名前は『朔』かあ……探してみるよ』
「朔じゃと? それはワシの持っていた刀の名じゃ」
僕の言葉を聞いて権蔵が驚いている。
電話 橘
『朔は権蔵が持っていた刀らしいよ』
電話 光さん
『そうなんだ! どこにあるの?』
電話 橘
『えーと』
そういえば、どこにあるんだろう?
「権蔵! 刀はどこにあるんだ? 」
「どこに置いたじゃろうか? 」
覚えてないだと!?
「
電話 橘
『それが分からないってよ。権蔵について詳しい人に聞いてみる』
電話 光さん
『分かった。刀の調達は橘さんに任せるよ! よろしく』
電話はそこで切れた。
ふう。またあの高校に行かないとな。
─プルルル
また電話だ。今猿社長……?!今猿さんか……
電話 橘
『はい。橘です』
電話 今猿社長
『もしもし。橘くん。今から僕のうちに来ないかい……? 』
今猿さんがなんの用だろう?
電話 橘
『はい。今から行きます』
僕はタクシーで今猿さんの家に向かった。
到着すると玄関で今猿さんが待っていた。
「今から勝負しないかい」
今猿さんは唐突に言った。
「僕はお酒飲んでたので……」
僕は遠回しに断わった。
「大丈夫。僕も飲んでたから」
今猿さんはそう言うが、今猿さんの方がお酒に強いから僕のが不利なような気がする。
「地下に道場がある。剣道で勝負しよう? 」
「僕は剣道の経験がありません」
僕に勝てる要素が見当たらない。
「じゃあ権蔵くんの力を使ってもいいよ」
確かに権蔵は剣の腕前はすごいらしいし……
「そうします」
僕と今猿さんは道着に着替え防具を付けた。
竹刀を持ち、今猿さんと一対一で向き合った。
「ようし。権蔵。
僕が権蔵に言う前に今猿さんに面を取られた。そして今猿さんは何回も僕の面の部分を力いっぱい竹刀でぶっ叩く。この叩き方はルール的にも問題あるだろ!
「痛……!今猿さん……!まだ権蔵の力使ってないです」
「ああ、ごめん。もういいのかと思った」
いや、今のは本気だったよ。恨みめっちゃこもってましたよ!
「権蔵。憑依しろ」
「痛そうじゃから嫌じゃ」
権蔵は座り込んで動かない。
「権蔵がいないと勝負にならないだろ!あとでうまいもん食わしてやるから」
「しょうがないのう」
そう言って、権蔵は僕に憑依した。
「これで準備は出来ました」
あれっ権蔵。憑依してる? 僕の意識があるままなんだけど……
「行きますよ」
「ちょっ……まだ……」
今猿さんは素早い動きで僕の胴を狙ったが、僕の体は避けていた。
「なかなかやるのう」
「権蔵さんこそ」
やっぱり権蔵は僕の体に憑依しているようだ。
「たぶん耐性がついたんじゃな。だから権太の意識もちゃんとあるのじゃ」
そうか……
ふたりは20分ぐらい打ち合っている。
─カンカラカーン
勝負がついた。権蔵が今猿さんの竹刀を弾き飛ばした。権蔵の勝ちだ。
「ふっ負けたよ。
「お主もなかなかやるのう」
なんかふたりの間に友情が芽生えたらしい。
「いつか……橘さんとちゃんと勝負したいですね」
今猿さんはその場に座り込んだ。
「蔵子さんを賭けて……ですか? 」
僕もその場に座り込んだ。
「いや……蔵子は賭けないし、やらないよ」
「でしょうね。でも僕も譲りませんよ」
僕達は熱い火花を散らしていた。
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