第17話 今猿編 嫉妬炎
そんなに
僕の考えすぎかもな。
「蔵子の友達ならいいよ」
「じゃあ蔵子ちゃんの部屋で飲みましょ」
蔵子の友達が言った。なんというか……図々しい女性な気がする。
「
蔵子が心配そうに言った……
えっ……やっぱり橘さんのことが気になるのか……?
「外国の廊下に1人きりで寝かすのは危ないよ。知り合いとして放っておいたらまずいんじゃない? 」
うーん。さっきから蔵子に正論ばかり言われて反論出来ない。
ここで、蔵子の好感度を上げといて、橘さんに恩を売るのもいいかもしれない。
僕は橘さんをおんぶして部屋のベットで寝かせた。
「誠ってなんだかんだ言ってもやさしいよね」
蔵子が僕のことを褒めた。
「いつもやさしいだろ」
僕は蔵子が褒めたことで浮かれていた
「ふーん。お邪魔します」
隣の部屋の女性が後ろから付いてくる。
あー、この人さえいなければ蔵子と甘い時間だったのに……
「先に入っていて」
僕は蔵子の友達と蔵子を先に入らせた。
僕達はルームサービスでお酒を頼んだ。
やっとこの女性を紹介してもらった……。
蔵子の高校時代の同級生であり、友達の片岡あやめというらしい。
なんかこの女性怪しいな。本当に友達だろうか?
1時間ぐらいしたらお酒が尽きた。
「蔵子ちゃん……隣の部屋からビール持ってきて……スーツケースの中にあるから。これカードキー」
「うん」
わざわざ蔵子に取りに行かせなくても……自分で行けばいいのに。
「ルームサービスで追加頼みますよ」
僕が電話しようとすると片岡は電話を切った。
「蔵子ちゃんと飲もうと思って持ってきたの」
「じゃあ行ってくるね」
蔵子が部屋を出て行った。
すると、片岡は急に服を緩め始めた。
「何をするつもりですか? 」
意外と僕は驚かなかった。
「ふたりでいいことしない? 」
片岡は胸元をあける。
「蔵子がすぐ帰ってきますよ。いいんですか?」
「あのスーツケースには睡眠スプレーが入ってて開けると作動するの」
手の込んだことをするなあ。
「そんなことだろうと思いました。」
やっぱり怪しいと思った。
「橘と違って賢いのね……ますます気に入ったわ」
「僕はあなたには興味ありません」
めんどくさいな。蔵子の友達だしな。蔵子……もう友達やめてしまえよ。
「蔵子が好きなの? 何でみんな蔵子がいいの? 」
片岡は悔しそうにする。
「例え誰のことが好きでなくてもあなたは願い下げだ」
僕がスーツケースを開けた。
「うっ……眠気が……」
片岡は眠っていった。
さっき、片岡のスーツケースが妙に膨らんでるから蔵子のと交換しておいた。
「あやめちゃん〜ビール入ってないよ」
蔵子が部屋に帰ってきた。
「シー今寝たみたいだ。僕が隣に連れていくよ」
僕は片岡あやめを担いで隣の部屋のベットに寝させた。
これで、蔵子との
「あっベット足りないからあやめちゃんの所に泊まるね~」
そんなあ。僕頑張ったのに……
「ひとつのベットでいいじゃないか?」
「ダブルベットで3人は無理だよ」
うーん。しまった。ツインじゃなくて……ダブルベットにしたんだった。橘さん邪魔だなあ……。
「誠。おやすみ~」
しかしこれ以上無理なこと言うのもな……
そんなあ。僕頑張ったのに……甘い時間が……
何で男と仲良くふたりでダブルベットで寝なきゃいけないんだよ……
~翌日~
「おはよう」
橘さんが起きたようだ。
「おはようございます! なぜ僕はここに? 」
蔵子が『入れてやって』と言ったことは言いたくないな。
「さあね。外国でひとりで廊下に寝るのは良くないからね」
今度からは蔵子の目に入らないところで寝てくれ。
いや、頼むからふたりきりの旅行に来ないでくれ。
「ありがとうございます……! 蔵子さんは? 」
橘さんがキョロキョロと周りを見渡した。
「片岡あやめの部屋に行ってるよ」
睡眠スプレーは8時間だからまだ片岡あやめは寝ているな。
「今度僕達の邪魔をしたらホントに廊下に1人で置いてきますからね」
橘さんのせいで僕達の甘い時間が無かったんだから本当に邪魔しないでくれ。
「かまいません。それでも行きますから」
橘さんはそう言って部屋を出て、隣の部屋のドアをドンドンと叩いた。僕も隣の部屋に向かった。
それでも邪魔する気か……。図々しいな。
蔵子の恋人は僕なのに!
「蔵子さん!蔵子さん!」
橘さんが蔵子の名前を呼びながらドンドンと叩く。
「はい。なんですか? 」
蔵子が部屋から出てきた。
「大丈夫ですか? 」
橘さんが心配そうにしている。
「大丈夫ですよ! 橘さんこそ大丈夫だったんですか? 」
蔵子も心配そうに言った。ふたりを見てると胸が痛い。
「大丈夫ですよ!
橘さんはどうやら僕が泊めてやったと思ってるようだ。
「誠。やさしいから……それじゃあ私は誠と帰るので」
蔵子は荷物を持って部屋から出た。
その時に蔵子の後ろの髪の毛に見覚えのないくまのぬいぐるみがついたピン止めが見えたんだ。
「そのヘアピンどうしたんですか? 」
橘さんが蔵子に駆け寄り言った。
「前から持ってたんですよ」
橘さんが異常に喜んでいる。つまりこれは橘さんの誕生日プレゼントだな。
わざわざ朝つけるなんて……
僕は嫉妬の炎が、メラメラと燃えていた。
~翌日~
僕達は空港に向かい、日本に戻ってきた。
すると、いかつい男性が僕達に近づいてきた。
「
「はい……そうですけど」
「警察のものです……ご同行願います」
いかつい男性が警察手帳を出す。
「何で蔵子が警察に行かないといけないんですか? 」
僕は蔵子の前に出た。
「今猿さんをひき逃げしたトラックの運転手が見つかりました。その運転手は『小豆沢蔵子の命令でやった』と言っておりますので」
「私はそんなこと言ってません!」
蔵子が必死で訴えてる。
「詳しい話は署で伺います」
警察官は蔵子を連れて行こうとしている。
「蔵子には動機がありません」
これは『罠』だ。
「聞いた話によるとあなた達は三角関係で揉めているそうではないですか?邪魔になったあなたを……」
警察官は淡々と言った。
「蔵子がそんなことするはずがありません」
僕も負けずに言う。
「私は大丈夫だから」
そう言って、微笑む蔵子。なぜそんなに余裕があるんだ。
結局警察は蔵子を連れて行ってしまった。
僕はスマホを出し電話をした。
「もしもし、
蔵子を苦しめたやつを見つけて……蔵子に濡れ衣を着せたやつをとっちめてやるからな。
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