第16話 今猿編 猜疑心!

僕は今猿誠いまさるまこと30歳……

今猿コンサルティングの部長で社長の長男で跡継ぎだ。

身長は181センチと高く鍛えてる方で体型は良いと思ってる。

僕はトラックにかれ、意識を失ったが脅威的な回復力を見せたらしい。

僕が目を覚ますと目の前には茶髪から黒髪になっている笹野ささのありすがいた。

「僕は……どれくらい……眠ってた?」

かなり眠っていたのだろうか……。

「1日ぐらいだよ」

ありすが心配そうにしている。

「1日?髪染めた?」

「前から変わらないよ」

ありすは不思議そうな顔をしていた。

すると後ろからめぐが出てきた。

「ありす! 誠は? 」

「めぐ、今目を覚ましたよ!ありすって誰? 」

ありすはさらに不思議そうな顔をしていた。


「何言ってるの?ありすはあなたの名前でしょ?」

めぐは動揺しているようだ。

「私の名前は小豆沢蔵子あずさわくらこだよ」

「ありす急にどうしたの?とりあえす、私はお医者さん呼んでくる」

めぐはお医者さんを呼びに行った。


蔵子……笹野ありすはその名前で呼びたがらないはず。

「ありす……いや蔵子……たちばなさんは?」

「橘さん?橘さんって誰かな?」

おいおい。ありすのが頭を打ったのか?橘権太…笹野ありす……もとい小豆沢蔵子の忘れられない初恋の人だろ……


「知らないならいいんだ」

そういえば、蔵子とめぐの高校には記憶をなくさせる『4の儀式』があると言ってたな。

僕はすべてを察した。


「蔵子……結婚してくれないか。今すぐに」

「え……? 」

蔵子は考え込んでいた。


「誠がいなくなるのは嫌だし一番大事な人だよ……でもそれが愛なのかまだ分からないの」

「それは愛だよ!結婚しよう……!一生大事にするから……僕が守り抜くから」

僕は必死に説得した。


「はい……」

それから1週間後にお互いの両親に会い、籍を入れたのだ。

僕だけに微笑む小豆沢蔵子を見るうちに欲が出た。

このまま僕のものにしておきたいと……。

しかし橘さんが今までと、うってかわって蔵子に積極的に近づいてくる。

橘さんとは友達になれそうだったが、もうそんな悠長なことは言ってられないらしい。

気がついたらめぐまで橘さんに協力してるらしい。


10月初め、蔵子と僕は9日に休みが被っていた。

10日誕生日だから丁度いい。

「蔵子一緒に台湾旅行行かないか? 泊まりで! 」

「泊まりだと難しいんじゃないかな? 」

蔵子は困っているようだ……。


「10日有給取ろう!」

僕はまっすぐと蔵子を見つめた。


「OK。部屋は別々ね」

蔵子は根負けしたようだ……


「何言ってるんだよ……! 恋人同士だろ? ひとつでいいだろ」

蔵子はしばらく考え込んで渋々OKした。


ノースティンホテルに着いた。

「うわー広いね~」

蔵子は喜んで部屋中を散策している。


そうだろう? ロイヤルスイートにしたんだから。


「まずどこに行こうか? 」

蔵子が無防備にベッドに座り地図を読んでいる

僕は蔵子の肩に手を回し軽く唇にキスをした。

蔵子は驚いて声が出ないようだ。

そのまま蔵子を押し倒した。


「恋人同士なんだからいいじゃないか蔵子」

「まだダメだよ……誠」

ベットの頭先に蔵子が気に入っているくまのぬいぐるみが置いてある。


─ドンドンドンドンドンドンドンドン


お隣から壁を叩いたような音がする。

振動で頭先のぬいぐるみが僕の頭の上に落ちてきた。

「痛! 」

ぬいぐるみとは思えない痛さだった。


─ドカ ドンドン ガチャガチャ


隣は何やら騒がしい。集中出来ない……

「隣は何してるんだろう? 」

蔵子も驚いてるようだ。


「ちょっと様子見てこよう! 」

「私も行くよ」

隣の部屋をノックしようとしたその時……ドアが開いた。

出てきたのは橘さんだった。よく分かったな。めぐには場所は言ってないのに。


「蔵子さん……今猿さん奇遇ですね!」

何が奇遇ですね!だよ。蔵子を追いかけてきたのだろう!


後ろから裸にガウンを着た女性が出てきた。

「あやめちゃん……」

「やっほ。来たよ」

そういうことか……違う友達から場所を聞いたんだな。


「お楽しみの所申し訳ありませんでした」

そう言って蔵子は部屋の扉を閉めた。


「く、蔵子さん待ってください! 」

橘さんが慌ててドアを開け、蔵子さんを引き止める。

「これ、誕生日プレゼント……」

橘さんはポケットからプレゼントらしきものを取り出すと、蔵子に渡そうとした。


恋人の目の前で誕生日プレゼントを渡すなんてすごい神経だな。僕は不愉快だ。


「僕達は急いでますので! それでは」

僕は蔵子の肩を抱き、速やかに行こうとした。


「どなたか知りませんが、あやめちゃんと橘さんがどうなっても私には関係ないですから」

蔵子さんが何も見えない所に向かってなんか言っている。あれが権蔵とかいう守護霊か?

今は権蔵が見えないはずじゃあ。それに口調が若干笹野ありすに戻っている……。


「あれっ? 誰もいない……? 」

蔵子は不思議がっていた。もう見えなくなったようだ。


「蔵子行こう」

僕はこれ以上橘さんのことを思い出すことを防ぐために2人でエレベーターの方に向かった。

エントランスで少しお茶をしていた。

すると、蔵子が何かを見つけたようだ


「ちょっと化粧室に行ってくるね」

蔵子に落ち着きがない。なんだか胸騒ぎがした。

僕は蔵子のあとを付けた。


すると、清掃のおばちゃんと蔵子が話をしている。

紙包みを受け取っていた。あ、あれは橘さんが蔵子に渡そうとした誕生日プレゼントではないか。

「蔵子。どうしたんだ? 」

「えーとなんか捨てられたら可哀想だから拾ったんだ。もったいないでしょう……? 」

蔵子は隠す気はないからやましい気持ちからではないようだ。


そして、僕達は観光して食事してノースティンホテルに帰ってきた。

廊下のソファで橘さんが寝ていた。

すると、隣の部屋から女性が出てきた。

「蔵子ちゃん……今帰り? 私暇なんだ。少し飲まない? 」

「私はいいけど誠は? 」

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