第9話 幻の時間!!

翌日会社に行くと顔の形が変わってしまった桂がいた。


「おはおうごじゃいます」

桂は僕に挨拶するが『おはようございます』と言えていない。


「ど、どうしたんだよ? 桂。喧嘩でもしたのか!?事故にでも遭ったのか!?」

僕は変わり果てた桂を見てぎょっとした


「桃井さんの家に結婚の挨拶に行ったら親父さんにぶん殴られたらしい。真面目な家系で一人娘だからでき婚が許せなかったようだ」

高梨先輩が桂の代わりに説明した。


「まだ僕は諦めませんよ! 何度でも殴られに行くっす」

桂は殴られてもめげてないようだ。


「おう……がんばれよ」

僕はでき婚だけはしないでおこうと思った。


「それで、橘は最近どうなんだ? 」

高梨先輩が僕の方を向きながら言った。


僕は縁に話を聞いたこと、如月さんに協力してもらったこと……などを2人に説明した


「橘……あんまり如月さんと仲良くなるのは良くないぞ。」

高梨先輩が神妙に言う。


「え? 何でですか? 」

僕はポカンとしていた。


「橘先輩……アホっすか? アホなんすか? 小豆沢さんの親友と仲良くなったら橘先輩から余計離れるじゃないっすか?『親友と仲良いんだ……私は身を引きます』ってなるっすよ!嫉妬させる作戦なんて大体裏目に出るっすよ。如月さんには真里ちゃんから連絡してもらいますから」


桂……そんなに僕のこと『アホ、アホ』言わなくても……


「分かりましたよ! それより桂は桃井さんのこと『真里ちゃん』って呼んでるのか? 」

僕は笑いをこらえた。


「夫婦なんすから当たり前でしょう」

桂は当然のように言った。


~仕事が終わり~

弟のりきからTOINが来ていた

TOIN 力

『明日小豆沢光さんと遊園地行かないか誘われたんだけど……兄貴も来るだろ? 』


TOIN 権太

『えっ? デートの邪魔できないよ!』


TOIN 力

『4人で行くって約束しただろ!?心細いから来てくれよ』


TOIN 権太

グルチャグループチャットで言えよ。4人ってことは、蔵子さんも来るのか?』


TOIN 力

『そうだよ! 光さんはもう蔵子さん誘ったらしいぞ』

蔵子さんが来るなら行かないとな!


TOIN 権太

『行く。いつどこで集まるの? 』


TOIN 力

『明日10時に遊園地に集合だよ』


TOIN 権太

『了解! 』

蔵子さんは僕が来ると知ってるんだろうか?

今はそんなこと言ってられない!


「はこべ……いや光殿と会いに行くんか? 」

権蔵が僕のスマホを食い入るように見た。


「そうだけど、どうしたんだ? 」

なんか嫌な予感がする。


「光殿とでえとデートやらをさせて下さい」

権蔵が土下座する。


「え? どうやってするんだよ? 」

守護霊とどうやってデートするんだよ。


「弟殿に乗り移らせてもらって……」

力は権蔵のこと知らないんだぞ!そんなこと言ったら怖がるだろうが!


「力に乗り移るなんてダメだ! 」

僕は断固として断った。


「お主には借りがあるじゃろう? ぎゃあ」

権蔵がそう言うと僕はお守りに念じた。


「何するんじゃ!?」

権蔵は痛がっている。


「借りを返しただけだよ」

権蔵が念力でスカートをめくって僕が平手打ちをされたことがある。その借りを返しただけだ。


「その借りじゃないわい!ツボを買わされそうになった時とか酔いつぶれた時とか!他にも今猿を助けたり、蔵子の結婚を無効にしたりしたではないか」

権蔵が今まで僕を助けたことをずっとネチネチと言ってくる。

「うぐっ痛い所をつくな……1時間だけだぞ!」

しょうがないなあ。


~翌日~

朝から権蔵にいつものように服をダメだしされ、力は僕の分の服を用意していてくれた。

僕ってそんなに服のセンスない?


「ふんぬ! 」

待ち合わせの時間になる10分前に権蔵は力に乗り移った。


力、ごめんな。また次回があるように僕が権蔵をフォローするよ。


「お待たせしました」

小豆沢光さんはピンクのワンピースを着てきた。

蔵子さんは白いシャツにフレアの青のスカートを履いていた。


「蔵子さん。可愛いですよ。」

僕がそう言うと、蔵子さんは顔を赤らめた。


「光ど……光さんも似合って……るの……ますよ」

光さんが権蔵を見つめる。


権蔵……頑張って……りきになりきれ!


「蔵子さん。今日は来てくれてありがとうございます」

僕は蔵子さんを見つめた。


たちばなさん勘違いしないでください。光ちゃんに頼まれたから来たんです」

蔵子さんは僕をかなり警戒している。


『勘違いするな。私は光ちゃんに頼まれたから来ただけだ!』

僕の目には一瞬そう言ってる笹野ありすが見えた。


「ふふ」

僕は思わず笑ってしまった。


「なんで笑うんですか?」

蔵子さんが不思議がる。


「だって記憶がある時の蔵子さんと本質は変わらないんだなと思って」

僕がそう言うと、蔵子さんが考え込む。


「前の方の私の方が良かったんですか?」

蔵子さんは僕をちらっと見た。


「笹野ありすさんも小豆沢蔵子さんも本質は変わらないんです。だから僕はどっちも好きなんです」

僕がそう言うと、また蔵子さんは顔を赤らめた。

「そうなんですか……」


「蔵子ちゃん! 橘さん! おばけ屋敷入りましょう」

光さんはニコニコと言った。


「お、おばけ屋敷……? やめておきましょう」

権蔵の顔が青い。そしてめっちゃ嫌がる


しかし、光さんに手を引っ張られて、権蔵はしぶしぶ承諾した

僕達は4人でおばけ屋敷に入った。

落ち武者の格好をしたスタッフの人が僕達を驚かせてきた。


「キャー」

蔵子さんが怖がる。


「うぎゃあああああ」

権蔵が蔵子さんよりはるかに怖がる。


「蔵子さん僕に掴まって! 」

僕はどさくさに紛れて言った。


すると、蔵子さんは素直に僕の腕にしがみついた。

蔵子さん……これはこれで可愛い……

笹野ありすの時はお化けも逃げそうな感じだったもんな。それはそれで良かったけどね。


おばけ屋敷から出ると権蔵がベンチで寝込んでおり、光さんが看病していた。


「うぅ」

権蔵がうめいている。

「ごめんなさい。私がおばけ屋敷に行こうと言ったから」

光さんが僕達に謝る。


まあ僕は権蔵を見慣れたから全然怖くなかったけどね。


「私は力さんを看てますので。2人でまわってきたらどうですか? 」

光さんはハンカチを濡らして、権蔵の頭の上に置く。


「そうですね!蔵子さん行きましょう」

僕は蔵子さんの手を引っ張った。


蔵子さんは少し抵抗したが完全に拒絶しているわけではないようだ。


僕と蔵子さんはその後時間を忘れて楽しく遊んだ。

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