問題点

 ここに来て物語は新たに二つ問題を抱えていることに僕は気がついた。


・剣を飲むの少女じゃなくてもいいよね問題

・この世界で何をやるのが一番面白いのか問題


 僕の頭の中の話なので、意味が分からないと思う。これから説明していきたい。

 

 まず最初の、剣を飲むの少女じゃなくてもいいよね問題について。


 後発の「刃物の切れない世界」というアイデアが抜群に良いので、物語は刃物の使えない不便な生活にリアリティを持たせて描いてゆくのがベストだろう。だが、そんな土着の空気感のなかで今度は「剣を飲み込む少女」というアイデアはいささか幻想的すぎて宙に浮いてしまうのだ。


 これはすぐに決まった。

 少女という設定は人形に変更することにしたのだ。

 魔法の力で動く等身大の人形だ。

 人形はその能力として剣を飲み込み腕に宿すことができる。

 僕は人形に関する資料や小説、ゲームなどをいくつか調べ、この戦う魔法の人形を自動人形オートマタと呼称することにした。

 そして形状は球体関節人形に決めた。

 色々調べる中、ネットで見つけた少女を模した球体関節人形の怜悧な佇まいに一目惚れしたからだ。一目見て僕はこれしかないと思った。


 かくして少女は人形となり、結果として、物語の主役から一歩後退することになる。

 というのも、僕はこの人形の思考について、人工知能に似たものをイメージしていた。寿命もなく子孫繁栄もなく欲望という概念がないであろう彼女が人間と同じ思考を持つことはどう考えても不自然だからだ。

 そうなると、彼女と街の人々との掛け合いは、すれ違いばかりで物語を語る上で非常に使い勝手が悪くなり、物語の進行を著しく阻害することになるだろう。そもそも舞台がそれを望んでいないように僕には思えた。


 そんなわけで、彼女に変わる主役を考えなければならなくなった。

 それも、彼女のインパクトに食われない、個性的な人物にしなければならない。


 僕はガチャを回す。考える。考える。振り落とす。考える。

 剣が使えないなら……銃か。

 世界観から逆算するならその銃はきっと魔法仕掛けの銃だろう。

 となると前衛が人形で銃使いがサポート役……いや、それだと地味すぎる。銃使いは物語の中で埋没してしまう……。


 そんなことを考えながら僕は銃をあれこれと調べていたところ、ジャイロジェット式の銃というものを見つけた。

 その風変わりな銃は、弾丸自体に推進力があり、反動が少ない代わりに近距離では威力が発揮できない、というものだった。

 これは使える、と僕は思った。

 主人公は、中距離では銃を、近距離では格闘技を扱う。

 左手の銃でダメージを与え、右拳でとどめを刺す。

 うん、悪くない。

 こうして主役は銃と拳の使い手となった。銃拳使い。

 まだ少し弱いので、キャラ付けのためにマカロニウエスタンの匂いをさせる予定でアマゾンで本とDVDをいくつかポチってみた。うまくはまって欲しいところだがどうなることやら。


 そして、次に。

 この世界で何をやるのが一番面白いのか問題である。

 剣の使えない世界という設定は抜群に面白いが、ただ戦うだけならこの設定は全く意味がない。せっかく面白い設定なのに微塵も活きてこない。ここにはもっとドンピシャのアイデアがあるはずだと僕は思った。


 そして僕は気付く。このアイデアが求めているのは、本当はバトルものじゃないんじゃないだろうか……。


 ガチャを回す。回し続ける。

 回して回して、僕はそのアイデアをちゃんと引き当てる。


 続きは次項で。

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