わたしを殺したのはあなた

わたしを殺したのはあなた

　わたしは今、山の中にひとりぽっちでいるわ。

　何故って、あなたに殺されて、土の中に埋められているから。

　付き合っていた男性にDVを受けて殺された。そんなニュースはこの世にたくさんある。なのに犠牲になる女性はいなくならない。

　わたしだってそうよ。まさか自分が殺されて埋められてしまうなんて思ってもいなかったわ。

　何故、殺されてしまう前に逃げなかったのかって？

　それがDVの怖さなのよ。

　何度も何度も殴られて、罵声を浴びせられて、蹴られて、そんな事をされて逃げないなんて馬鹿な女だと思うでしょう。

　だけど、その後には必ず、優しくしてくれるの。愛してるよと言ってくれるの。そして、お前がいないと生きていけないんだって言われてしまうの。

　本当にその通り、わたしがいないと駄目なんだと思ってしまうのよ。わたしが支えてあげなきゃいけないんだ。わたしに甘えているんだ。この人を見捨てたらこの人はどうなってしまうんだろうって思ってしまうのよ。

　それに、殴られるのは、わたしがちゃんとあの人の事をわかってあげられていないからなんだって思っちゃうの。支え方が足りないから怒られるんだって。

　自分がちゃんとしなくちゃ、自分はなんて駄目な人間なんだ、そんな風に自分を責めていくのよ。

　ごめんなさい。ごめんなさい。暴力を振るわれながら謝るの。

　そして、わたしは死んでしまったのよ。

　殺されてからわかっても遅いけどね。

　あなたはもう次の女を作り、またわたしと同じ目に合わせているわね。

　早く気がついて！

　殴られるのは自分のせいじゃないってことに！

　そんなの愛なんかじゃないってことに！

　そんな男たちに殺されないで！

　埋められているのはわたしだけじゃないのよ！

　わたしたちをここから出して！誰かみつけて！

　あの男を捕まえて！