第1話 葬送

 泣き声が響いていた。

 すすり泣くのは、ばっさりと髪を切った、十代の少女だった。

 電撃引退を発表した芸能人と面影が似ている。

 そんな彼女の周りには、他にも数名、同じ年頃の少年少女が並んでいた。

「分かってたことだろうがよ、こうなるのは」

 学生服に着られた格好の大柄な少年が誰ともなしにつぶやく。

「それでもやっぱり、悲しいよ」

 ブレザーをさりげなく着崩した年かさの少女がやんわりとフォローした。

「死ぬって、こういうことだったんだね」

 きっちりと制服を着ているノブオは正面からシンジロウの遺影を見つめる。

「ありがとう、シンジロウくん」

 遠くから、物言わぬ写真だけが、彼らを見つめ返していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る