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 彼女の希望により、現在は契約社員というポジションだが、彼女は、幸一の会社で、もう五年も契約を更新している。

 彼女を求める会社は多数あり、何度も大手からの正社員としてのヘッドハンティングがあったが、育代は断り続けた。

 理由は幸一にある。

 育代は、自分より仕事の出来る幸一に一目置いていて、そんな幸一と一緒にする仕事にやりがいを見出していたからだ。

 幸一との関係は、二人それぞれがきっかけが思い出せないほど自然に始まり、今の所、何の問題も無く続いている。

 育代は地味な見た目の女だが、性格が最高だった。

 知的で真面目な性格でありながらも、時にはジョークも口にする。酒が好きだが悪酔いはしない。

 付き合うにはいい女だ。

 幸一が結婚している事は、育代は全く気にしている様子が無かった。

 幸一と一緒にいる時、彼の家庭について、育代は一切の話をしなかった。

 彼女は、自分のポジションを心得ていたのだ。 

 育代は、幸一の相手が自分だけでは無い事も気付いていたが、その事も幸一には詮索する事をしない。

 いわゆる大人の関係をも、そつなくこなす、それが育代という女だ。

 幸一はそんな育代に、浮気相手でありながらも信頼を寄せていた。


「我毛君に限っては、こんな馬鹿な事するはず無いよな。彼女は仕事一番の女だ。俺との関係も、彼女はどの女より割り切っている。我毛君は無し、かな……そうなると、一番怪しいのは、蒙葉君か……彼女なのか? 矢藤冨士江は? しかし……」


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