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しかし、そうしている訳にも行かない事を思い出し、気を失ったままでいるまゆみを引きずりダイニングに移動した。
「クソッ! 一体誰が髪なんて送って来たんだ!」
幸一は、ソファーに横たわっているまゆみを見ながら言う。
まゆみは少しも目を覚ます様子が無い。
クリスマスイヴに、会社の上司の家の、ダイニングのソファーの上で、白目を剥いた姿でいなければならないなんて、上野まゆみという女は、せっかく美人だというのに涙が出るほどついていない。
(上野君、済まない。美人の君が白目を剥いて、涎まで垂れ流した無様な姿で倒れている事は俺の心にしまっておくよ)
哀れな部下に心の中で詫び、幸一は再び、送られてきた髪について考えた。
伝票に書かれた送り主の名前、矢藤冨士江。
一体誰で、何のために髪なんて送って来たのか。
(香美代の言う通り、浮気相手が当てつけのために送って来たのだとしたら……いやいや! アイツがそう言っているだけで、彼女達の中にそんなキチガイじみた事する様な子は……いや、でも、香美代の女の感も馬鹿に出来ないしな! よし、考えてみるか!)
幸一は、自分が関係を持っている会社の女子社員四人をピックアップする。
まず、受付の櫛屋絹子(くしやきぬこ)。今年入社した新入社員だ。
そして、丹波月(たんばつき)。幸一の部下で、まゆみの同期だ。
続いて、社のマドンナ、秘書課の蒙葉つむぎ(もうはつむぎ)。
最後に、デキる派遣社員、我毛育代(がもういくよ)。
この四人が幸一の火遊びの相手だ。
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