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そんな幸一の態度に香美代がまたしても彼に罵声を浴びせようとした、その時、ピ~ンポ~ンッと軽やかな玄関チャイムの音が部屋に響いた。
「来客だよ! ほらっ! 俺が出よう」
幸一は怒り心頭の香美代に背を向けて、足早に玄関に向かった。
(誰だか知らないけど、助かったよ!)
そう心の中で呟き、幸一は直ぐに玄関のドアを開いた。
玄関にはショートヘアーの女が立っていた。
恐ろしい美人だ。
美人にふさわしく、シャネルの№5の香りを漂わせている。
「部長、こんばんは」
「上野(かみの)君じゃあないか!」
美人の正体は上野まゆみ、幸一の会社の部下だ。
「夜分にすみません。部長、ディスクに明日の会議で使う資料をお忘れでしたよ。今日、ご自宅に持ち帰って資料を纏めるとおっしゃっていたじゃあないですか。ケータイに連絡したのですが、お出にならなかったので持って来たのですが……部長は何故、顔にクリームを?」
まゆみはそう言って資料を幸一に差し出す。
「うっかりしていたよ。わざわざ有り難う。クリームの事は気にしなくて良いんだ」
大事な資料を届に来てくれた素晴らしい部下から幸一が資料を受け取ろうと、手を伸ばしたその時、幸一の背後から「うおりゃああああああああっ!」っという叫び声が聞こえた。
驚いて振り返った幸一とまゆみの二人だが、何がなんだか解らないうちに、ゴスッという打撃音が軽快に響き、まゆみが悲鳴を上げて倒れた。
「えええっ?」
幸一は倒れているまゆみに釘付けになる。
幸一の顔を冷汗が伝う。
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