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 幸一は泣きわめく妻と娘の姿にため息をつく。

 今日がクリスマスイヴだと言う事を、もう家族の誰もがどうでも良いと思っていた。

「二人共、頼むから泣き止んでくれよ! 本当に浮気なんてしてないから! 何かの間違えだよ! 浮気も、この髪の毛も!」

 悲壮感たっぷりの幸一の台詞は香美代の神経に触った。

 香美代はテーブルに近付くと、5号サイズのいちごの載ったケーキを両手で掴み、それを幸一目掛けて投げ付けた。

「うっ!」

 ケーキは幸一の顔面にヒットした。

 幸一の顔が生クリームで覆われる。

 ケーキを載せていた皿がゆっくり落ち、幸一の足を直撃する。

「痛いっ! お前! 何するんだよ!」

「何するんだよ、じゃないわよ! 子供の前で浮気浮気って繰り返して言わないでよ! 見え透いた嘘言わないでよ! このっ! ろくでなしの浮気男がっ!」

「ええっ? 浮気はお前が言い出した事だろ! とにかく、俺は浮気の事も、ヤフジ? って名前にも心当たりはないんだよ! 髪の毛を送りつけて来る様な気持ちの悪い知り合い何かいないんだよ!」

「ママ、ケーキ、もう食べられないの?」

 スカートを引っ張る萌子に香美代は笑顔で「もえちゃんは少し黙ってなさい」と言う。

 萌子は悲しそうな顔をして、香美代のスカートから手を離す。

「とにかく、この髪の送り主についてじっくりと話を聞かせて頂きたいわ!」

 顔をクリーム塗れにした滑稽な姿の幸一に香美代が詰め寄る。

「落ち着けって! とにかく落ち着けって!」

 幸一は後退り、香美代から逃れようとする。

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