第四章⑬ 妖物を喰う…『妖物』。
ダン、ダン…!。
…タタタタタタタン! タタタタッタタラタタンタン、タタタタ!
無尽蔵を証明するかのように銃弾がバラ撒かれ、互いの連発式歩兵小銃の咆哮が 引っ切り無しに、明け方近い月夜に 轟き響く。
多数の〈橙褐色の重装騎士〉を率いて現れた銀色の『月』。
それを見たヒマワリが ロクロに抱えられ、先行……いや、突出し。
以前と同じく、時計回りに『月』の側面から接敵したのを皮切りに、そのまま集団同士が 入り乱れる混戦状態となり、今に至る。
〈勇者〉イグサス率いるパーティと、もう1パーティに 数枚有る
「…この臭い。
明らかに熟練な
ビキ…!…ギュキギキ、ベキキ ボキン‼
「ぐくぅッ……でも、何だこいつら?! 強化済み〈
この世界で最も普及し、最も多量に産出される構造材として知られ、高強靭金属類である〈魔銅〉製の盾や鎧、刀剣までもが あっさり喰い破られそうになる。
オリハルコンやミスリル銀に及ぶべくもないとは言え 〈魔銅〉の親魔術性能は極めて高く、それ故に強化魔術付与済の〈魔銅〉製品の強度は驚異的である…。
…にも関わらず、これ程 易々と喰い荒らされるという状況は。
「お、おいッ! もしかしたら、こいつら 伝説の最上位〈
…〈銅喰い〉。
〈魔銅〉さえ喰らう その伝説級の超常生物は、この世の殆どの物体を喰らい 吸収するとされ、硬く強靭な外殻により ミスリル銀以上の高価な武装でなければ、物理ダメージは ほぼ通用しないとされる。
また…。
「…なら、魔術だ! 魔術による十字交差迎撃を! もう 盾が、持たな」
ゴウウッ…!…グアバババババババアアァ!!!
横合いから 突然、凄まじい衝撃波が走り 前衛の〈銅喰い〉達を、一斉に薙ぎ倒す。
「落ち着け、皆 …‼ …敵が本当に〈銅喰い〉なら、魔術は殆ど効かない! 取り敢えず ギルは、僕の盾を…」
こんな 仲間の窮地で 効果的な攻撃を行うのは 勿論、〈勇者〉イグサスだった。
「イグサス!? あ、あんたは どうするんだよ?!」
盾を託され、ギルと呼ばれた角無族の戦士は青白く煌めく
「ふん! 若様には、あたくしが付いている限り 心配ご無用ですわ。 ギル!」
いつから 居たのか、戦場に似つかわしくない白いタキシードの麗人が、代わりに答え…。
…既に、神剣を両手に持ち変え〈銅喰い〉らを膾切りにし始めた〈勇者〉の側に、駆け去った。
正気付いたギル氏は、他の壁役達の戦列に復帰し、敵を押し返しながら 銀製の斧を振るい始めたが…。
「は~い。術師の人や 銀武装の無い人は、この結界から出ないように~…」
…そんな、ヤる気の無い声が また横合いから、聞こえて来る。
こちらも ギル氏の知る人物……有名人だった。
〈
…西大陸の冒険業者では かなり有名な、若きA級 討伐受託資格保持者にして、〈隕石喰い〉以来の有力な『雷系
しかも、何故か〈女勇者〉を自称し、事ある毎にイグサスに対抗するという 相当の変人としても有名な、単独討伐系冒険者。
確か、デビューしてから 3、4年…。
…誰とも組まずに、稼業を続けていると聞いた。
人相 というか、髪は 金髪と聞いていたし、隻腕とかも 聞いた試しが無かったが、間違いなくキレイに 右腕が無かった…。
…まあ 確かに、胸は大層 大きかった。
そんな事を 思い出しながら、ギル氏は 隣で展開される事態に 目と耳を奪われた。
「コラァ。アタル、何サボってんのよ?! モット ほら、こう…。…ギュッと構えて。バッと来て。ペチーッと行きなさいよ?! ペチコーンッと~!!」
巨大な白い
…自らは、毒々しいピンク色の ゴツい
「ウッセエよ! ウシチチが。ああぁ!? 何エラそうにオレ様に助言くれてんだ コラぁ! なあにが ペチーッだ、テメエこそ デケエだけのチチ 振り回してるだけじゃね……オワアァ?! って、何しやがる!!」
あと少しで、天罰覿面。
鈍色に光る双剣を 縦横無尽に振るい、アユミに 悪口雑言を浴びせていた黒服の少年の直ぐ近くに 突如、白い稲妻が落ち…。
…運命によって 〈銅喰い〉の1体が 白煙を上げて倒れ伏す。
「アラアラ。イヤイヤ。アタシはソイツを狙っただけだし~♪ 被害妄想とか、ヤバいんじゃないの~♪」
アユミは、姉譲りの黒い笑みを少年に向けながら、無造作に敵を屠る…。
「…な、何なんだ…?…こいつら」
横目で それらを見ていたギル氏は、そう呟き……戦況を見渡す。
しかし、そこには…。
…B(+)級冒険者である彼が、これまで目にした事の無い 戦い方をする猛者の姿があった。
ソレは、一見 鈍色の全身鎧を着た以外、変わった所など無い 普通の拳闘士奴隷に見えた…。
…でも、ソレは 只の 拳士の戦い様では、決して無かった。
ソレは、同じだった。
〈銅喰い〉共と 同様に、ソレは…。
…斬り裂き、〈銅喰い〉共を 喰らっていた。
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