第一章⑨ 獄門と 獄気。
「ところで皇帝氏、
「
「ああ」
「………そうじゃの、
「宜しければ」
「…有り
「ほお、散歩…ですか?」
「そうじゃ。古い
「……」
「先程の話の続きになるが……〈ヒト〉ら、世界師らが
「…まあ、そうですかな」
「かの世界師らは、他種族を王朝に帰属…否、
…単に、戦闘系の魔術に特化しておった訳ではない」
「………」
「其方らは〈
「まあ、禁忌中の禁忌とされてはいる…アレの事なら…」
「うむ。まあとりあえずは門や門番らの方は
「……ほお…」
「…あの」
アタシは声をかける。
「ふふん♪…やっと気を持ち直したか?」
値踏みするように、ニヤニヤしながらアタシに問い掛けるミナコ。
「しかし、勇者を自称する割りに繊細な事じゃのうアユミよ」
「…ごめんなさい、ミナコさん」
「ふふ、良いわ良いわ…妾も少々焦り過ぎたでな…それとな? 妾の事は『ミナコ』と呼び捨てで頼む」
そう言って彼女は…おもむろにアタシの髪を撫でて来た。
何故か『あの人』を…黒衣の女傭兵ラフレシア様を思い出す。
「んん…」
ミナコには失礼かもしれないが、『意外にも』その行為は とても優しく気持ち良くて、思わず…。
「…分かったわ、ミナコ」と言ってしまう。
…今は亡き義母の事までも、少し思い出した。
……ヤバいなー。
…今日は懐かしい人達の事をたくさん思い出しちゃうな…。
【
クシャクシャになったアタシの頭から、
名残惜しそうに手を離し、ミナコは話を再開した。
「妾が探しているのは彼の
「……?!」
「…ほお血刀ですか♪ それは〈
やはり…この手の話題には趣味人にして専門家でもある姉の食い付きは、すこぶる良い。
鮮やかな黄緑色の瞳に、狂気の超新星が幾つも閃いている。
有史に於いて、二番目に勃発したとされる約1万2千年前の…〈
通常、それは〈第一次異界大戦〉と史学者達に呼ばれ、 17年前に終結したものを〈第二次異界大戦〉と呼び習わすが…。
その僅かに 二度の大戦で『アチラ側』から コチラの世界に持ち込まれたという…超希少金属。
この金属には、単なる『異世界研究対象』という以外にも、いや…
それは硬度、引っ張り強さ、曲げ強さ等、物理的な強靭性能のみに止まらない。
いや…それさえも主題とは言えない唯一無二の極大価値があったのだ。
極端な、もしくは『絶対的な魔術抵抗性』という特質。
対魔術戦闘が基本であるこの世界に於いて、特に戦士系冒険者間では破格の値で取引がされる…。
『対〈千年紀の厄〉及び〈幻神災〉の為の 五大陸間国際憲章機構』…通称『超大陸憲章機構』に定められる〈超大陸憲章〉…それによって、個人での売買が原則禁じられている『特級指定』金属資源なのである。
但し、例外というモノは…。
「…まあどこにでもある、という事よね…」
何とはなしにアタシは、
「ん?…ああ!
「…流石は 皇帝氏。……気付いていたか」
「まあ『盾』を持っておらぬからな。それに…其奴の纏う只ならぬ〈
そこらの戦士や楯士らが発する単なる殺気や〈
「まあな。ご推察の通り コレは、シールドスレイブ…〈
「…ふむ。…して? 其奴の装う『
「…まあ、その辺りは卿の想像に委せる。あと、この輪廻鎧の銘は〈
「…………………!」
奇妙な間が、虚ろな空間を支配した。
そして…。
「……な、何じゃと!?」
自由皇帝の玉音が、大音声で虚ろさを打ち消したのである。
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