第一章⑤ 滅びの対物弾と黒き銃師。
「
しかし…いくら驚いたとは言え、折角 得た〈鵺〉の放電により発生した推進力を殺すのは
…備え 待ち構える相手に 多少 危険だとは思うけど…。
…増速で得られた突進力そのままに 打ち掛ければ…。
アタシは 覚悟を決め、敵正面の位置で強く更に強く踏み込む…。
…かの剣豪(仮)との一騎討ちの間合いまで……あと、二歩!
ゴベッ…コ!……グシャ!!
…ドン!!
「……え?!」
唐突なる破壊の旋律と共に、正に瞬時に
そして、実際には結果より遅れて轟いた破裂音のお陰で、何が起こったかは理解出来た。
結局、(仮)の正体や実力は分からず仕舞い。
哀れ…(仮)は、(仮)のまま黄泉へと返されたのだ。
アタシは一応、この事態を引き起こしたはずの者に振り返る。
『一騎討ちに持ち込め』と指示し、誘導したソイツは…小さな体に不相応な巨大で、長大な白銀の兵器を アタシに対し構えていた。
「…どういう積もりかしら?…姉さん」
「くっくっくっ…我が錬金の秘奥に驚いたか愚妹よ?」
正直、驚いては いた。
皇都を出てから…街道での遭遇戦はともかく、この迷宮内での無数の戦闘では…姉は、戦わなかった。
最高権力者である
…〈錬金心霊操法学研究連盟会(通称、魔術師ギルド)〉より『賢者号』を受けた程の栄誉臣民の要人であっても『兵役逃れ』は、原則出来ない。
ましてや 姉は…錬金術のみの功績や希少性で、世界最高学府の教導官位や魔術分野の世界的権威の名声を得たのではなかった…。
古代王朝期には もう存在していたとされる…〈銃〉と呼ばれる〈聖学〉系 錬金式攻撃特化型特殊兵器…それを主兵装とする戦闘者や専任兵科を 古来より〈銃士・銃兵〉と、アタシらは 呼び習わして来た。
そして 何を隠そう…姉は、皇国連合侍衛軍 少佐にして、同軍の〈
…非常に…認めたくは 無い事実だけど。
そんな優秀過ぎる実績や 経歴を思い出しながら 厨二スタイルで悦に入る 皇国最高の〈黒き女銃士〉を、アタシが眺めやっていると…。
「……………」
姉の こめかみに、遠目にも分かる…冷や汗が 流れ落ちるのを見付けてしまう。
「……………………」
…まあ、目算より敵とアタシの間合いが近かったのだろう。
「「……………………………………」」
一階層分上の…。
…アタシが さっき降りてきた通路からの出口にうつ伏せで、『対聖騎士用長距離狙撃銃』を構えたまま蒼白く固まっている黒き姉を…とりあえず、半眼で見つめてみる。
…じー。
んじじー…。んじじじじ~~……。
「…な、何なか? 顔の我に、か何?」
動揺以外の、何ものも伺えない言動を発する姉。
「…いや、分かんないから。それこそ何言ってるか。 ……じゃなくて! そのデカイの『撃つな』って言ったでしょ?!」
姉が 自ら錬成した『特殊弾頭』を有する銃弾の破壊力は凄まじく、先程射撃の的にされた哀れな(仮)君の上半身と右足は原型を留めていない…。
…そう、姉は戦わなかったのではない。
戦わせてはならなかったのだ!
「………………………」
「……ふ…、ふふ、ふうはははは! ど…、どうだ愚妹よ! 我特製弾頭〈
「ざっけんじゃねーわよ! 今度使ったら、マジでお仕置きだからね ?!」
「……ハ、ハヒ」と、黙る姉。
しかし、敵の掃討が終わってない現状で、醜態を晒したとは言え これ以上身内を
ほどなく…『下らぬ姉妹の掛け合いは終わったかね?』 とばかりに…。
シュッ!!
風切り音と共に矢が掠め、飛んできた先を向く。
……居た。
弓矢を使う屍武者とは珍しい…。
…いや、初めてか?
それに、防衛本能なのか 生前からの職業病なのか…。
…大きめの岩影から、結構な
簡単に近付けるような、生半可な
「コイツって…ただの足軽じゃ無い?! それに
英雄級の
どう見ても…〈
それに……。
乱射される〈風〉系魔弾を掻い
…「あれって、エルフの屍だよねぇ? 」と自答していると…。
「双方、剣を収めよ! 特に其処な黒きドワーフの娘よ!!」と、良く透る女性の制止が入ったのだった。
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