第11話エメラルド色の髪の少女1
瓦礫と化した商店街では、怪我人や下敷きになった人たちの救出活動が始まっていた。
至る所から助けを求める声と、誰かの鳴き声や悲鳴、そして救助をするものたちの怒声が鳴り響いている。
絶えず有名活動が続いているため救急車と消防車のサイレンの音が聞こえない瞬間はないと言った状態だ。
どこか別の場所でも、同じようなことが起こったのだろう、遠くの方からもサイレンの音が聞こえてくる。
そんな一刻を争う現場をエメラルド色の髪をした少女が駆け抜けていた。
なぜこんなことになったのだろうと思う。
今日は彼女が気になる人と街をぶらぶらしたり、お茶をしたりしていた。
まあ、いってしまえばデートである。
先日、勇気を出して誘ったのに、肝心なデート当日にこんなことが起こっては台無しである。
さらにいえば、どこかで爆発が起こったかときに、一緒にいた彼は「君は先に帰ってくれ」とだけ言ってどこかへ行ってしまった。
じゃあ、なぜ彼女がここにいるのかと言えば、それは少し前に遡る。
彼がいきなりどこかへ行ってから一時間ほど経った頃。
さきほどの爆発が何度も起こって街中はパニックになっている。
彼女自身も、自宅ではなく比較的安全そうな学園に避難していた。
だが、気づけば爆発も止んでおり、そろそろ自宅に帰ろうかと考えていると、突然電話がかかってきた。
画面に表示されていたのは名前はウィリアム・ヨハンスソン。
先ほど、どこかへ行ってしまった彼からのようだ。
「ちょっと貴方、さっきは一体どこに・・・」
文句の一つでも行ってやろうと、電話に出るなり怒鳴り散らそうとしたが、それも一方的に彼の声に塞がれてしまう。
「サーシャとリンが怪我をしたようだ。至急商店街に向かって欲しい。詳しい場所はメールで送る。」
「ちょっと・・・!」
抗議しようとするも、一方的に電話は切られてしまった。
ということがあったのだ。
ゆえに、彼女はイライラしていた。
(少しぐらい謝罪があっても良いんじゃないの!?しかも、電話だって一方的に切るし!もう少し頼み方ってもんがあるでしょ!)
だが、これも恋する乙女の性なのか、彼に頼りにされていることを嬉しく思ってしまうあたり、自分もチョロいなと思ってしまう。
それに、友人二人が怪我をしているのであれば、動かないわけにもいかない。
幸い学園に避難していたため、学園に置いてあった道具一式を持ってくることができた。
それを入れるための大きな鞄は友人のを勝手に借りてきてしまったが後で謝れば良いだろう。
(それにしても、こんなに街がめちゃくちゃになるなんて一体何があったの!?)
彼女は、詳しい事情を聴いたわけではない。ただ電話がかかってきて行く場所を言われただけなのだから。
だが、今は事件の詳細よりも時間が惜しい。
メールに書いてあったことによれば、リンは相当な深手を負っているらしい。一刻の猶予もない危険な状態なのだろう。
もしかしたら、自分のような学生の分際ではでに負えないかもしれない。
(それでも、サーシャとリンのところに急がないと)
そう思い彼女は、二人の元へと急ぐのだった。
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