第10話行間一

 少年は瓦礫と化した街の中心にいた。

 歳は、十四、五ぐらいだろうか、かなり若く見え、体格は中肉中背とどこでにもいるような平均的な男性の体格だ。

 その少年は黒を基調としたリーヴルタニア王立魔導学園の制服をまとっていた。

 彼の周りには、先ほどまでいつも通りだったはずの街並みが、見るも無残な瓦礫の山となって広がっている。

 そして、その少年の近くには、三体の自動人形だったものが転がっていた。

 3メートルを超える巨体に、狼を二足歩行させたようなデザインで、規格違いのパーツで取り付けてしまったかのような大きく太い腕の、背中にバックパックを背負った自動人形オートマタだった。

 分厚く硬いはずの装甲が、まるで飴細工でできていたかのように溶解し、胴体中からバックパックを貫く形で風穴が開いていた。

「やあ、その調子だと片付いたみたいだね」

 少年の後ろから、少年よりも幾分か背の高い少年が現れた。

 年齢は同じぐらいだろうが、長く綺麗な金髪を丁寧に整えており、背筋をしっかりと伸ばした立ち姿から育ちの良さがうかがえた。

「ああ、なんとかな。お前は高みの見物か?」

 少年が少し苛立たしげに彼のほうを見る。

「そうカリカリするなよ。これでも女の子とお茶してたのをすっぽかしてきたんだ。」

「はぁ、実に羨ましいこった。」

 少年はため息をついて少し間を開けてから

「それで、残りはどこにいる?」

「残りなら、もういないよ。この街に侵入したのは全部で五体だ。3体は君が倒して、1体は教会の魔術師が、そして最後の一体はサーシャとリンがやってくれたよ」

「サーシャとリンが!?」

 驚くのも無理はない。少年が記憶している限りでは彼女たちの実力ではこのオートマタにはとても勝てるはずもない。

 相当危ない橋を渡ったのだろう。

「それで、二人はどうなった?無事なのか?」

「心配ない・・・とは、とてもじゃないけど言えないみたいだね。リンは相当な深手を負ったようだ」

「そうか・・・」

「おっと、自分が助けに行こうとか考えるなよ?君がここにいること自体がだいぶイレギュラーなんだ。見つかれば騒ぎになりかねない。」

「わかってる!でも・・・!」

「君が助けに行ったところで何もできないさ。君は炎の魔術しか使えないんだから。」

「くっ・・・」

 金髪の少年に言われ、どこか悔しそうに下を向く。

「僕はこれから原因を探る。君はひとまずここから離れることだけを考えればいい。まあ心配するな、リンのところには琴葉を回しておくよ。彼女ならなんとかしてくれるだろう。」

「あぁ・・・」

 そう言い残して、金髪の少年は身を翻して去っていった。

「くそっ・・・」

 悔しそうに吐き捨てて、少年もまたその場を離れるため歩き出した。

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