第6話科学と魔術4

 ローラ・メリダストは、学園の広すぎる森林の一角に立っていた。

 彼女の眼の前に広がっているのは、無数の草木に混じって転がっている無数の自動人形オートマタの残骸だった。

 魔術実技演習の補習を、全員が終えた頃に事務員の人から、「自動人形オートマタが森林に転がっている」と報告を受けて、すぐさま飛んできたのだが   

(これ、そもそもウチの学園のものじゃなくないか・・・?)

 この学園で採用されている自動人形オートマタには、特徴的な仕組みが二つあった。

 一つ目は、安全面を考慮し、生徒が一定以上のダメージを受けた際には自動で攻撃をやめ、稼働が停止する仕組みになっている。

 二つ目は、生徒の手加減なしの攻撃でも壊れることのないように、かなり頑丈な素材が採用されている。

 だが、眼の前に広がっている残骸には、安全装置がついている様子もない。

 さらに、残骸は無残な姿にはなっているが、これは学園で採用している装甲よりも遥かにグレードが高く頑丈なものはずだ。

(これは・・・!)

 さらに自動人形の残骸を観察していると奇妙なことに気づいてしまった。

 あぁ、なるほどと。

 ここに転がる役半分の残骸は、壊されたあとに分解されたがためにこんな無残な姿になっていると。

 中身がこじ開けられわかりにくくはあるが、これは分解する前に胴体の中心。つまりオートマタの駆動系の回路を狙って正確に貫き破壊している。

 実際に、自動人形オートマタの残骸の内部から弾丸も見つかっている。

 こんな芸当ができるのは、数多く腕利きの魔術師がいるこの学園内でも一人しかいない。

 そもそもこの学園で重火器を所持しているものなど一人の少女しかいないはずだ。

 ということは、もう半分の真っ二つにされたり潰されたりして、本当に無残な姿になった自動人形オートマタは、彼女と一緒にいたもう一人の少女の仕業だろう。

 それは、わかった。

 彼女たちが宝石を大量に持ってきた理由もこれだろう。

 だが、それがわかったところでこの無数に転がっている自動人形オートマタの出処はわからない。

 彼女らはきっと、自分の出した補修の課題のクリアするために必要な宝石目当てでこの自動人形オートマタを破壊しただけのはずだ。

 だが、もし、この自動人形オートマタが他の生徒を襲っていたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれないと考えれば、この危険な兵器を排除してくれたことに感謝をしなければならないと思った。

 そして、それと同時にローラ・メリダストは

(この街で、何かが起ころうとしている)

 と、直感した。

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