第5話 叙情

引きうけたものの、困ったいた。

由梨の詩は、どらも叙情的だ・・・

田舎の田園風景が、頭に浮かんでくる・・・

なので、英語のポエムより、日本語の詩の方が適切だろう・・・


僕の絵と、マッチするだろうか・・・

彼女自身、叙情的という自覚があったからこそ、

僕に依頼してきたのか・・・


まあ、依頼なんて大げさな物ではないが・・・

冷やかしか、本気かは、分からない。

でも、引き受けた以上は、責任を持って描こう・・・


そう誓った・・・


(でも、一体、いくつあるんだろう)

めくってみる・・・

ノート一冊全部に書かれていた。

その数、40・・・

(骨が折れるな・・・)


まず最初は・・・

「春の訪れ」か・・・

春となると、桜か・・・

ありきたりだ・・・


やはり、動物たちが元気に遊んでいる所がいいな・・・

そう思い、ペンを取った・・・

(待てよ、これこのままノートに描いていいのか?)


由梨に聞いてみよう。

電話をかける。


「もしもし、忠志くん?」

「由梨?学校で渡されたポエムだけど・・・」

「あっ、もう出来たの?」

「出来ません。」

「じゃあ、どうしたの?」

「これ、このノートの描いていいの?」

「うん、お願い。」

「わかった・・・」

「何を描くかは、任せるから、お願いね」

電話を切ろうとした・・・


「あっ、そうそう」

「何?」

「ちゃんと、カット代は出すからね。」

電話が切れた・・・


でも、面白そうだ・・・

久しぶりに、わくわくしている自分がそこにいた・・・




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