第4話距離

「でも、何?」

恐る恐る訊いてみた・・・


「君の絵は、良くも悪くも繊細・・・」

「繊細?」

「うん、だから他人から、注文をつけられると傷ついてしまう・・・」

「うん」

「だから、この子たちのためにも、好きに描いてあげたほうがいい」

「ご意見、ありがとう・・・」

そっけない返事をした。


それは、わかっていた。よく言われていた・・・

(素人目にも、わかるのか・・・)


でも、ここで終わらなかった・・・

「でね、お願いなんだけど・・・」

「何?」

「私、趣味でポエム書いているんだけどね・・・」

「春日さん、ポエットなんだ・・・」

「由梨でいいよ、それから、『さん)とか『ちゃん)とか、要らないからね。」

「わかった・・・由梨・・・。で何?」

女の子の下の名前を、呼び捨てにするのは、くすぐったい・・・


「君に、私のポエムの、イラストを描いてほしいの?」

「さっき、好きに描いた方がいいって・・・」

確かに、矛盾が生じていた・・・


「私も、好きに書いてるから、相性ピッタリでしょ・・・」

(相性なのか?)

多少の不安はあったが、面白そうだった。


「わかった・・・いいよ・・・」

「ありがとう。森山忠志くん、いや、忠志くん」

「何で、僕の名前を・・・」

「クラスメイトでしょ・・・」

(確かにそうだ・・・知らない方が変だ・・・)


「で、早速なんだけど・・・」

由梨は、ノートを差し出した。


「これ、全部にカットいれておいて・・・」

「いきなりですか?」

「うん」

由梨の顔は、にこやかだった・・・


でも、面白そうだ・・・

そう思い、引き受けた・・・


これが、彼女・・・由梨との仲が、縮まった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る