第47話 ガリラ迷宮制覇
「ここがボス部屋か。あっさりだったな。この調子なら夕方前には帰れそうだ」
「はい。流石はジン様です」
「二人共油断しないでよ」
十階層のフロアも問題なく通過し、ボス部屋まで無事に辿り着いた。途中出会った黒熊(ブラックベアー)にフーカが少し苦戦していたが、怪我をすることもなく倒してしまった。ちなみに俺はフルンティングで一刀両断だった。
「フーカが強くなったお陰だ。よしよし、今度ご褒美あげよう」
ダンジョンから帰って、明日にでもフーカとリムリを連れて服を買いに行こう。二人の着替えが全然ないということにさっきルナから聞かされ気付いたのだ。
「そ、そんないいですよ! 当然のことですから!」
「フーカ、遠慮することないわよ。フーカもリムリを見習いなさい」
「そうだぞ、リムリも家の片付け頑張ってるだろし、二人にご褒美だ。まぁ、部屋の掃除が終わってなかったら皆で掃除してからご褒美だな」
「結局ご褒美なんですね。……分かりました。ならご褒美が頂けるようにもっと頑張ります! ボスも任せて下さい!」
いや、流石にボス戦を一人に任せるわけにはいかんだろう。
「良いんじゃない? フーカも強くなってるし、熊じゃ実力不足だったし。一応防御の魔法は掛けてあげるわ」
そんなこともできたのか。聞くと肉体強化系は苦手らしい。今は魔力にも余裕があるからできることなのだ。
「それじゃフーカに任せるけど、危なくなったらすぐに下がること。ボスが強そうだったら俺もすぐに参戦するからな」
「はい。怪我をしないように頑張ります! 行きます!」
フーカがボス部屋へ入って行く。俺とルナも遅れず付いて行くと獣の雄叫びが響いた。
「ぐおぉぉぉぉおお!」
「銀熊(シルバーベアー)です! 行きます!」
魔物に気付いたフーカがそう言って駆け出した。
先ほどの黒熊は人間ぐらいのサイズだったが、こいつは三mはありそうだ。フーカの倍以上だ。それでもフーカは怖じけることもなく果敢に突撃していた。
既にフーカのスピードは常人の域を超えている。以前見たミニャの動きにはまだ遠いが、恐らくあの動きを間近で見ることでなにかを掴んだんだろう。
フーカ・クロイム
犬人族LV24
奴隷LV21
・料理LV1 ・剣の極みLV5
このダンジョンに入ってからはフーカの方が俺より魔物を倒している。前回のダンジョンと比べると数も少ないし弱いからか。レベルの上がり方が遅いが、確実に強くなっている。
それとフーカは剣の極みのレベルが上がるのが異様に速い。俺のスキルは滅多にレベルが上がらないのにフーカは既にレベル5だ。そしてそれに比例するように刀の扱いが上手く熟練されているようだ。
九条仁
人族LV36
使徒LV36
階級「准尉」
フルンティングLV45(神)
力の指輪(神)
空間の腕輪(神)
・神の使徒・神具鑑定・真実の瞳LV3・スキル鑑定LV2・夜目LV3・威圧LV2・異常耐性LV1
俺の強さもかなり上がっている。正直冒険者ギルドで見た冒険者達には負ける気がしない。
フルンティングも異常なほど強くなっている。恐らくこの剣を手放すことはないだろうな。……俺の役目、神具の回収なんだけどな。まぁ、集めてはいるからいいか。ダンジョン制覇に必要なんだよ。
そんなこと考えているとフーカが熊に接近し爪を掻い潜って脇腹を切り裂いた。
「グおォォォ!! ゴガァァ!!」
フーカを狙った爪は空を切り、フーカは既に背後に回り込んで熊の隙だらけの背中を斬っていた。
「これならフーカ一人で何とかなるんじゃない? パワー系が相手ならフーカは負けないわね」
「ただ一発が弱いな。というかあの熊が硬いのか。今のフーカはあの日本刀を完全に使いこなしてるし、あの刀の切れ味も結構なもんだろ」
フーカの戦術は完全なヒットアンドウェイだ。一撃を当てて回避、隙を作って攻撃。逃げを主体に置いてるしボス相手にも十分通用してるな。ただ俺のフルンティングと比べたら、いや、比べたらダメだけど、やはり威力が弱いな。
それから十分ほど戦闘が続き遂に熊が倒れた。
「はぁー、はぁー、はぁー、やりました!」
流石に疲れが色濃いが十階層のボスを一人で倒してしまったぞ。結局熊の攻撃は一撃も掠らずフーカの完勝だ。
「お疲れ。よくやったな。つーか、俺を頼れよ。まったく、無茶して」
頭を普段より強めにグリグリと撫でたが「きゃあー」っと少し嬉しそうにしているからしばらく撫でることにする。
「髪がボサボサになるわよ。フーカお疲れ様、怪我はないわね?」
「はい。大丈夫です。あ、これが魔石です」
フーカに渡された魔石を受け取り眺める。大きさは野球ボールより少し大きいぐらいで、前回の女王蟻の魔石より小さい。
「んー、今回のは魔力の保有量が少ないわね。それでも小魔石より遥かに上だけど。やっぱり前回のが特別だったみたいね」
ルナの鑑定を聞いて少しガッカリした様子のフーカの頭に手をポンっとおく。
「フーカのせいじゃないからな。これがこのダンジョンの魔石だ。むしろ喜べ、普通はチーム組んで攻略するレベルのダンジョンを俺達だけで制覇したんだぞ」
「は、はい! でも、今度はもっと大きな魔石を取りますね!」
えっと、それはもっと深いダンジョンに連れて行けということでしょうか。
「前回のダンジョンを経験してるからこの程度じゃ物足りないんでしょ。油断しないならもう少し冒険してみてもいいかもね」
「そうだな。今回は腕試しの意味もあったからな。よし、次はもう少し深いところを教えてもらおう」
「はい! 早く深層迷宮を制覇したいですね!」
あれ? 普通のダンジョンじゃないの? 深層って国が主体で攻略してるダンジョンだよね?
「ジン様ならきっと深層迷宮も攻略してしまいますよね! 私も頑張ります!」
「そ、そうだな。まぁ、機会があったら試してみたい、みたいな?」
ゴメンなさい。キラキラした瞳で言われると否定できないです。
「なにやってるのよ。まったく」
ルナのため息に苦笑しつつ、改めてダンジョンを見渡す。
俺はこれで三つ目のダンジョンを制覇した。順調過ぎるけどこれも日頃の行いのお蔭だよな。
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