第27話 ダンジョン飯
「……いてぇ。フーカ無事か?」
「は、はい。ジン様もお怪我はありませんか」
「ああ。ちょっとした打ち身ぐらいだ。このバックあってよかったな」
落ちながらフーカのバックを外しフーカを抱えてバックをクッションにして衝撃に備えた。
激突の瞬間にルナが風の魔法で速度を殺してくれたお陰でそこまでのダメージにはならなかった。
「フィロさんの特注品ですから対衝撃の魔法が付与されているんだと思います。それにして随分と落ちましたね」
落ちた場所は広い空間だったが先ほどのミノタウロスはいなかった。
「ジン大丈夫! 怪我してない!?」
ルナが遅れて降りてきて、俺達の無事に安堵していた。
「あぁ大丈夫だ。ルナが魔法使ってくれたからほとんどダメージもないよ」
「良かったわ。フーカも大丈夫ね? さっきの牛は?」
「見当たらないな。行動も変だったし、なんだったんだろうな。ルナ何階層分落ちたか分かるか?」
「急いでたからちゃんと見てないけど四階層分ぐらい落ちてるわ。途中から壊された形跡もなかったからあの部屋の床下からここまで空間が空いていたってことみたいね」
ならあのミノタウロスはどこから来てどこに行ったんだ?
「……四階層分落ちたならここはすでに五階層になるわけか。次のフロアにボスが居るってことか?」
「ジン様、あちらに階段があります。下りです」
フーカが指差す方を見ると確かに階段があった。周りを見渡すが別の部屋に行ける通路もないし、上がりの階段もないようだ。
「行くしかないか。いきなりボス戦とかマジ勘弁してくれよ」
階段を降りると一階と同じようなダンジョンになっていた。
慎重に進んでいくとルナが気配を感じたので待ち構えることにする。
「多分アリだと思うわ、数は三体ね」
ルナの言う通りアリが三体現れたのだが先ほどと少し形が違うようだった。
「あれは、
フーカの言葉で駆け出しこちらに気付いたアリを一刀両断にした。
「なんだ? さっきのより随分柔いぞ!」
「軍隊アリは一匹一匹はそれほど強くありません。ですが、仲間が集まると大変なことになってしまいます」
うじゃうじゃと集まる蟻か、嫌だな。今の状況で消耗戦はしたくない。さっさと片付ける!
鉄蟻と違って甲殻がそこまで硬くないので太刀を一撃振るうだけで倒して行ける。すぐさま三体を倒してしまった。
「ジン様凄いです! それに魔石がまた出ました」
嬉しそうに魔石拾ってバックに入れているフーカを見て俺はアイテムボックスのことを言うことにした。
「フーカこれからの戦闘は何があるか分からないから俺が荷物を預かる。俺には、なんて言えばいいかな。亜空間に荷物を入れて保管することができるんだ」
空間に手を差し入れているところを見せるとフーカが驚いていた。
「そんなことまでできるんですか! ジン様凄いです! ……でも、荷物をジン様が持たれたら私の役目が」
「ん? フーカには俺と一緒に戦ってもらうぞ? フーカのレベルも上がってるし。これから先は身軽にしていた方がいい」
「レベル、ですか? いえ、分かりました。ジン様をお守りできるように私も頑張ります!」
フーカは俺の奴隷だからか俺が倒した魔物の経験値も入っているようだ。まだそこまで強くないがフーカの素早さには目を見張るものがある。
「ルナはフーカのサポート頼むな。ここがボスのフロアって言うならボスを倒して凱旋しよう」
「はぁ、いきなりボス戦は嫌じゃなかったの? 軍隊蟻を倒したぐらいで調子に乗っちゃダメよ」
「油断はしないさ。でも倒せるなら倒した方がいいだろ? ここから地上まで戻る方がキツそうだし」
ボスを倒してしまえばゆっくりと道を探しながら帰ることができるしな。
「それじゃ行くぞ」
「はい!」
「りょーかい!」
それから二時間掛けてフロアを進んで行った。すでに軍隊蟻を四十体近く倒して、フロアのほとんどを探索したが未だボスに会えていない。
「どこにいるんだよ。だいたいフロアがデカイんだ。俺が神具を持っているから戦えているけど普通ならもう全滅してるだろ」
一撃必殺で仕留めているからこそ戦えているが、普通の冒険者なら一匹倒すのにも多少時間がかかるだろう。そうしている内に仲間が集まりあっという間に飲み込まれてしまうだろう。
「あとはこの先の部屋ね。でもそこからは気配が感じれないわよ」
「とりあえず行こう。フーカは大丈夫か?」
「はい。問題ありません。むしろ力が沸いてきます!」
フーカのレベルは既に八レベル上がっている。特に怪我をしているわけでもないから力が増してきているだろう。
流石に俺は一撃必殺とはいえ疲れが出てきた。それと、試しに力の指輪と山賊王の太刀をフーカに装備させてみたのだが、フーカは上手く扱えていなかった。力の指輪の効果があまり発揮されていないのだ。元々の筋力にも差があるから分からないけど、俺が装備した方が効率がいいみたいだ。
「……階段、しかも降りるだと?」
ここが最下層じゃなかったのか?
「ごめんなさい。ルナが勘違いしていたのかも」
「ルナのせいじゃないさ。どっちみち降りるしかないな」
ルナには気配を探って貰っていたから階段の存在に気づけなかったのだ。
「ん? そう言えば階段には魔物がいないよな? ここは魔物が生まれないんじゃ?」
太刀で壁を刺すと刺さっているので少なくとも三方向からは魔物は現れることはない。
「ここで少し休憩しよう。もう三時間以上は経ってるだろ。軽く何か食べようか。フーカお願いしていいか?」
「はい。では準備しますね。……ジン様が持っているので出して貰っていいですか?」
そうだった。アイテムボックスからフーカの指示通りに調理器具と食材を出す。ちなみに空間に保存しているからか、食材が悪くなることはないみたいだ。入れた時のままの状態で取り出すことができる。
「本当にダンジョンで作るんですね。えっとあまり時間もかけれないのでお肉を焼くだけになりますけどいいですか? 私はまだレシピを覚えていないのであまり難しい物も作れませんけど」
「大丈夫だ。肉を焼けるだけでも素晴らしい」
「そうよ。自信を持ちなさい」
「あ、ありがとうございます」
俺とルナの熱い眼差しに苦笑いを浮かべてフーカが肉を焼きだした。一応ちょっとした調味料も買っているので味付けは問題ないだろう。高かったけど。
ジューっといい音といい匂いが辺りを包む中、ルナのセンサーに掛かった魔物を部屋から出て処理をしては肉が焼けるのを待つ。
「えっとこれくらいかな? できました」
「おぉ! 焦げてない!」
「わぁ! 生じゃない!」
「えっとそれは褒めていらっしゃるんですよね?」
俺とルナの感激の表情にフーカは苦笑いを浮かべていた。やはり料理をするにはスキルがいるんだな。
「それじゃ頂きます」
「「頂きます」」
何の肉かは知らないが柔らかくて美味しい。味付けもいいし。やはり料理スキルは偉大だ。
「美味しいわよ。フーカありがとう」
「うん。美味しいぞ。ありがとうな」
「は、はい。えっとその、ありがとうございます」
少し恥ずかしそうに笑うフーカの頭を撫でて皆で完食した。
「よし、それじゃ。改めて行くとするか」
装備を整えて更に下の階層へと降りて行く。
「――これは……床が完全に落ちてる。結構深いな」
ダンジョンに辿り着いた冒険者チームはすぐさま陥没した部屋を見つけ出し、それが自然に起きたものではないと見抜いていた。
「にゃー、ダンジョン結合、深さは四階層ぐらいかにゃ?」
「その位ですかね。このダンジョンに完全に融合しています。ここから落ちたとすれば助かっていても自力で上がることはできないでしょう」
「今このダンジョンの深さを調べます。…………十階層です」
「にゃら、どうにかなるかもにゃね。作戦は続行にゃ。救援班は痕跡を追って進むにゃ。討伐班は先ず最下層まで強行突破するにゃ。目標を補足したらそれの撃破にゃ。行くにゃ!」
「「オオォォォ!!!」
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