第13話 真・異世界生活始まるよ。

ダンジョンから無事脱出した俺達は改めて街を目指して歩きだした。

想像以上に上手く行ったダンジョン制覇。ダンジョンを出て気づいたのだが、スキルに威圧レベル1が増えていた。

どうやらダンジョンは一つ制覇する毎にスキルをくれるみたいだ。深い階層に関してはレアスキルをくれることを期待するばかりだ。

ダンジョンから出てからの俺達の足取りは軽く、会話も終始明るかった。まさに素晴らしい旅路だった。


――そう。始めの数時間は。


「ルナ。ダンジョンでも結構戦ったし、いい加減腹減ってきたんだがこういう旅路の時は何食うんだ?」

「――――ぇ? それは、……用意してある食べ物じゃないの?」

「………………用意してないなら?」

村でミサさんに貰ったパンと干し肉は既に食べたぞ? そもそもあれだけの量じゃ全然足りない。水はルナが出せるから良いけど。

「……現地調達? あ、地上にいる魔物の肉は食べられないわよ。ダンジョン内の魔物は一部食べれるものがいるらしいけど」

「魔物を食うのは究極の状況な時として、魚とか普通に獣はいないのかな。もしくは路銀貰ったんだし、途中の村で食料を分けて貰うとか」

「さっきの川にも魚はいなかったみたいだし、辺りに動物の気配はないわね。あとこの森に村はハーフ種の村以外ないわよ。人里離れた場所だから聖域になっているんだし。ここから一番近いのが今目指している街になるわ」

「ならしばらく我慢するか。動物の気配があったら教えてくれよ」

「ええ。分かったわ」


~翌日~

「――ようやく仕留めれたな。猪ぐらいなら簡単に両断できるし、この太刀手放せないな」

「いいから早く調理しましょう。火は私が魔法で起こせるからジンは食べやすい大きさに切り出して」

「了解。……ぶつ切りぐらいにしか出来ないけど。おりゃ、おりゃ」

「まぁ、見た目はいいわ。それじゃ焼くわよ、魔力を押さえて、ファロガ!」

「……消し炭を食べるのは流石に無理があると思わないか?」

「ル、ルナの魔法は料理用じゃないのよ! まだ残ってるんだし、もう一度よ!」

「ま、まて! 今ので火種ができたからそれで火を起こして普通に焼く! ――よし、付いたぞ。それじゃこのまま焼いていくぞ」

「ルナの魔法のおかげで上手く焼けるわね」

「はいはい、お陰様おかげ様。――よし。少し焦げたが、いいだろ」

「ルナは少しで良いからね。――ありがとう。それじゃ頂きます」

「頂きます」

 二人して生肉にあたり数時間腹痛と幻覚に苛まれる。


~ダンジョンを出て二日目。現在~

「まさか料理にスキルが必要だとは思わなかったな」※必要ありません。

「そうね、焼くのにもスキルがないと失敗するなんて」※必要ありません。

「街に着いたらまずは料理屋だな」

「ええ。そのあとはもちろん」


「「冒奴険隷者商ギねルドだな」なんて言った?」


「奴隷商よ。冒険者ギルドで料理人は雇えないわよ?」

「ド、奴隷商があるのか?」

「ええ、犯罪者やお金が無くて売られた者なんかがいるみたいよ。帝国は実力主義だから、色んな種族が集まるわ。だから奴隷商にも色んな種族がいるって話よ。ジンはスキルもレベルも分かるんだし、料理スキルが高い子を選びましょう」

「奴隷って連れ回しても問題ないのか? 家もないし、ダンジョンに潜ることになるだろ? どうするんだ?」

 ルナが奴隷賛成派なのが驚きだが、ちょっと便利な道具を買いましょう。的な発言が更にビックリだ。

「奴隷は珍しくないわよ。奴隷の権利は購入者が全て持つわ。だからジンに買われた方が奴隷としても有難いと思うわよ。奴隷を連れてダンジョンに潜る冒険者もいるし、戦闘職の奴隷もいるはずよ。ルナたちが欲しいのは料理人だけど。ルナとジンが戦うんだし一緒に連れて行っても大丈夫でしょう」

「んー、俺はこの世界の常識わからんし、ルナが大丈夫って言うなら大丈夫なんだろ。とりあえず一度奴隷商に行ってみよう」

「ええ。――あれよ。あそこが帝国第二の都市、なんとかって街よ」

「なんとか、か。随分斬新な名前だな」

「人間の街の名前なんて一々覚えてないわよ。良いからさっさと行く!」

「へーい」



帝国第二の都市、ガルド。

 実力主義を掲げる帝国の政策により、人間や亜人種など様々な人種が生活している。

 街並みは中世ヨーロッパの街並みに近く、道には冒険者の様な身なりの者で溢れていた。

 この街は帝国で二番目に大きな都市であり、北側の国境に一番近い防衛都市となっている。その為街の周りには高い塀が取り囲んでおり、防衛の為の兵も普通の都市に比べると多いという事だ。

 もっとも現在はダンジョン対策で各国共同声明が出ており、共同でダンジョンの対応に当たろうと宣言が出ている。

 簡単に言えば国同士で戦っている場合ではないので、停戦を結びダンジョンに力を向けようということらしい。

この条約が帝国、王国、魔国、連合国で結ばれて既に数十年が経つことになる。その為、国境防衛と言うよりはダンジョンから出る魔物対策の為の防衛都市となる。

 ダンジョンは人の多く集まる場所の近くに現れる事が多いとされており、現にこの都市の付近には三十近いダンジョンがあり、冒険者が大勢滞在している。

 人が多いと言う事で商人が集まり、それに伴い交易なども盛んに行われているようだ。 

 そうそう、この世界では魔王は魔族をまとめる王であり、特に世界征服を目論んだり、人間を襲ったりすることはないらしい。魔国にも普通の人間が生活しているし、帝国にも魔族の冒険者などがいる。

 以前早とちりした転生者が「俺が魔王を倒す!」っと魔国に乗り込んで問題が起こったこともあるらしい。


 王国は人間至上主義を掲げており、亜種族に対して攻撃的であり、国内にも人種以外の種族は奴隷以外ほとんどおらず、魔国より王国の方が嫌われているとのことだ。

 条約を結ぶに当たって最も難航したのが王国を説得することだったと言うのが笑える。

 王国以外にももちろん人種は多くいて亜人種と共存しているが、王国で生活している人間(主に貴族だが)は亜人種は下等生物だ、と本気で思っている者もいるという。

 肉体性能は明らかに亜人種が優れていると思うのだが……。


 帝国は先ほど述べた通り、実力主義なので人種も亜人種も関係ない。帝王は人間だが、軍幹部の一部は亜人種だと言うし、兵士も獣人など亜人種が多くいるみたいだ。

 その代わり実力がない者には厳しく、各国で最も奴隷の流通が多いのが帝国らしい。


「ここが異世界最初の街か。いいねぇ、やっぱり異世界ってきたらこの街並だよねぇ。燃えてくる!」

「(いいからさっさとご飯食べましょう。無駄に時間かかったから余計にお腹空いたわ)」

 すっかり定位置になった俺の肩でぐったりとしたルナの声に俺もため息を吐いた。

 ガルドに入ろうとした所、門番に止められ「貴様、一人で森から歩いて来たようだが、盗賊じゃないだろうな? 見ない顔だし、ちょっと詰所に来い! 抵抗するなら容赦しないからな」っと街に着いてそうそう連行されることになったのだ。 

そこで盗賊に襲われて護衛に雇っていた傭兵とも別れ命からがら逃げて来たと説明。

 荷物を調べられたが空間の腕輪に山賊王の太刀と金貨は入れているので指輪と腕輪があるだけなので、両親の形見だと言って他の荷物は盗賊に襲われた時落としたと説明した。

 街に来た理由を聞かれ、冒険者だった両親の後を次いで冒険者になりたく、実力主義の帝国に来たと説明するが「お前が冒険者? ハッ」っと鼻で笑われた。

イラっとしたが、ルナが壁に掛けられていた兜を外して門番の頭に落とし悶絶していたので許すことにした。その後他の兵士が来て一応納得して通してくれた。

 頭に兜を落とされた門番は訝しげな顔で見ていたが知った事じゃない。

「そんなに怪しい格好しているかね。ま、いいや。それより飯屋はっと――言葉は分かるけど、文字が分からんな。お、あそこからいい匂いが。行ってみようか」

「(私の姿は周りには見えていないからそのつもりでね。一人言言っているみたいに見えるわよ)」

「(……了解。飯は二人分頼むか?)」

「(私はそんなに食べられないわよ。ジンのを摘むから気にしないで)」

俺の食う量が減るのだが……。そこまで減らんか、おにぎり一つで胃袋のキャパを越えそうだし。

ルナの小さな体に目を向け、いらん心配をしたと料理屋(仮)に入って行く。

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