第12話 これが俺の力だぁぁぁッ!
「カッカッカッカッカッカッ!!」
ボスの居るルームに入ると骨を鳴らす音が響き、広すぎる部屋の奥には巨大な骸の王が鎮座していた。
「でけぇな。家ぐらいあるぞ」
動かないならどっかのアトラクションにでもありそうな巨大なオブジェだ。下半身は無く、腰が地面から生えているみたいに見える。
右手には自身と同じぐらい長い骨を持っている。あの巨体であれを振り下ろされたらヤバイだろ。
「どうするの? 一旦引く?」
「……冗談だろ? ここまで来て剣を交わさずに帰れないだろ。ま、ヤバそうだったらそそくさ逃げるけどさ」
「カッカッカッカッカ!」
骸王は攻撃を仕掛けることもなく骨を鳴らし威嚇していた。
こっちの攻撃が通るかどうかだな。太刀で骨を粉砕できるのであれば、時間を掛ければバラバラにもできるだろう。
「先ずは、あの手に持ってる骨だな」
あれで薙ぎ払われたら避けるのはキツそうだ。――なら、薙ぎ払えないところまで近づくだけだな。
ふぅー、覚悟を決めろ。
俺には最高の女神がついている。負けるわけがないんだ。
足に力を込める。
力の指輪は何も腕力だけが強くなるわけじゃない。足に力を込めれば数メートル飛ぶことだってできる。
ゆっくりと骸王に向かって歩く。
あと数歩で相手の攻撃範囲内だろう。
こちらの数倍の攻撃範囲に理不尽さを感じるが、俺が持っている神具も大概だろうな。
この一撃が効かなかったら即座に逃げる。振り返ることもなく。颯爽と。
「――行くぞッ!!」
攻撃範囲に入る一歩手前で前のめりに倒れる。
地面にぶつかる瞬間、溜めに溜めた足の力を解放して骸王に向かって飛んだ――地面スレスレを平行に。
次の瞬間背中の上をビュンっと何かが通り過ぎ、それが骸王の骨の剣だと分かった時には俺は骸王の真下にいた。
「――秘剣! 骨砕き!」
着地と同時に今度は両腕に力を込め渾身の力で太刀を下から振り上げた。
バギャゴギャ! と骨が砕け、砕けた骨が他の骨を巻き込み骸王の左肋骨部分が崩壊する。
「カッカカカ!」
「うおぉ!」
予想以上の破壊力に俺と骸王が驚くが、驚いている暇はない。
「奥義! 骨殺し!」
骸王が怯んでいる内に上半身を支えている背骨を砕く。それだけで骸王はバランスを崩し、前のめりに倒れた。
「カカッカカッカッカ!!!」
骸王が全身を振るわせるように骨を鳴らし、その音に誘われるように骸骨が十体部屋に侵入してきた。
「仲間呼んでんじゃねぇ!! 必殺! 乱れ骨斬り!」
倒れた骸王を腰の部分から太刀を振り回しバラバラにしながら頭部へ向かう。
「ガッガッガッガッガ!!!」
身体部分で大暴れの俺を捕らえようと腕を身体に入れるが、山賊王の太刀で砕けると分かった以上、コイツはただデカイだけの骸骨だ。
俺に向かってくる腕を細切れにし、ついでにやって来た骸骨達をバラバラにしてついに頭部へと辿り着いた。
「はぁはぁはぁ、これで、終わりだぁ!! 兜割りぃ!!!」
俺の一撃が骸王の頭蓋骨を叩き割り、骸王は崩れた。
「はぁはぁはぁはぁ、勝ったぞ!!」
無謀かと思った戦いだったけど、終わってみれば完勝だ。俺は一撃ももらうことなくボスを倒した。
「おめでとう。ジン。どうだった?」
「……正直拍子抜けだな。ボスもその辺の骸骨も変わらんぞ」
まぁ力の指輪と山賊王の太刀のおかげだけど。
「出来たばかりのダンジョンだったからね。たぶんこのダンジョンが更に成長した時はボスの下半身が埋まってはいなかったでしょうね」
なるほど。浅いダンジョンの内は魔物もまだ成長していないから弱いのか。なら深層迷宮の魔物はどれだけ強いんだろうな。
「深いダンジョンに潜る時は更に用心する必要があるな。今回はあくまで最低層ダンジョンだったわけだしな」
三階層まで成長して入り口が出来るんだから、三階層だったこのダンジョンは最も難易度が低いダンジョンだったわけだ。
それからボスが残した拳台の魔石と骸骨が残した小魔石四つと骨四本を回収して俺達はルームを出た。
「ボスは倒したからこれで制覇だよな?」
「ええ。もう魔物の気配も感じられないから間違いないわ。……ただ、このダンジョンをジンが制覇したことは黙っていた方が良いかも知れないわね」
「え? なんでだ? 賞金貰えるんじゃないのか?」
まぁ、こんな低層でいくらもらえるのかわからんけど。
「ジンはまだこの国でギルド登録をしていないから、勝手にダンジョン制覇して問題がないのか分からないのよ。ルナも人の国についてはあまり詳しくないし」
「うん? ならなんでダンジョン行くことに――そう言えばルナは最初ダメって言ってたな」
「ええ。ただちょっと試すだけなら良いかなって思ったんだけど、まさかこんなに簡単に制覇するとは思っていなかったから」
そうだよな。俺もこんな簡単だとは思わなかったし。下手に目をつけられてもイヤだし黙っとくか。……魔石と素材は売って良いよね?
「魔石を売るのは問題ないでしょ。ここ以外にもダンジョンはたくさんあるんだし、どこで手に入れたか何て分からないわよ」
相変わらず、俺の思考はダダ漏れみたいだな。
「なら早く街に行って登録しよう。そしたら大手を振ってダンジョン制覇できるだろ?」
「ええ。それに街に行けばもう少し装備も整えられるわ」
入り口を目指して歩き出した俺達の足取りは軽い。来て早々ダンジョンを制覇して俺達は浮かれていたのだ。
これから起こる悲劇をまるで想像もせずに――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます