第6話 休むヒマもねぇ!
「随分と無用心じゃないのか?」
初めて会った男を簡単に家に置いて行くのかよ。ここ村長の執務室というか執務所じゃないのか?
「少し混乱していたみたいだしね。腕は問題ないわね?」
「ああ。完治しているみたいだ。助かったよ、ありがとう」
ベットに腰掛け、近くのテーブルに座るルナに頭を下げた。
「当然のことよ。ルナが存命の内はジンを死なせるわけにはいかないわ。ルナはジンを守る守護精霊として契約しているんだから」
「守護ねぇ。そういや、さっきの魔法ミオさんの魔力使ってたんだよな? あれ誰に対しても使えるのか?」
「誰でもは無理よ。あの子は条件に合っただけ。誰の魔力でも使えるならジン以外のを使うわよ」
「それもそうか。使えるなら盗賊相手にも盗賊の魔力を使って魔法を放てば良かったわけだしな」
「そういうことよ。さぁルナが起きているから、ジンは少し休みなさい」
ベットに横になりながら何となく自分のステータスを確認してみた。
九条仁
使徒Lv2
ってレベル上がってる! 死線を越えて経験値得たってことか? あ、盗賊一人倒していたな。
「レベルが上がってる。盗賊倒したからかな?」
「……そう。――随分簡単に上がるものね」
あれ? ルナ少し怒ってる? 気のせいか?
それにしても体のダルさが取れないな。回復魔法を二人が使っても回復していないのか? 怪我を治したからか?
「回復魔法で体力っていうか疲れとかは回復しないのか?」
「ある程度はするけど、今のジンの魔力じゃそこまで期待できないわよ。さっきの魔法はあの子の魔力を使ったと言ってもすごーく効率の悪い運用しているから傷を治すことしか考えていなかったし」
俺のせいか。とりあえずレベルを上げたいな。そして復讐――もとい、神具集めをしなくては。
そう、神様に命じられたことをするだけだ。その過程で悪人が血まみれになろうとそれは神の意志だ。
「当面の目標は俺のレベル上げだな。とりあえず戦えるようにはなりたいぞ」
「――そうね。ところでさっきの子たちの鑑定はしたの? あと盗賊の鑑定結果を覚えているだけ教えてくれる?」
そういえば俺だけ見て、ルナには全然言ってなかったな。
ルナは全てを聞いてからしばらく考え込み、顔を上げた。
「恐らく、だけどジンの鑑定はヘルトスのオリジナルだと思うわ。だから今は深く考えないでおきましょう。それでその鑑定の問題点だけど、職業レベルが分かるのはいいけど、それが本人のレベルだと思わないことね。そもそもこの世界に自身の強さをレベルで測ることはないわ。だからルナも詳しいわけじゃないけど――そうね、ルナは精霊神よ、でも生まれながらに精霊神だったわけじゃないわ。小精霊から始まって中、大、精霊王、精霊神となっているわ。その間にも恐らくレベルはあるはずよ。そうじゃないなら数百年生きているルナがせいぜい数十年の人間と同等なわけないもの。魔力が十分だったならあの程度一瞬よ? それにジンが確認した中では最初の男が一番レベルが高かったのよね? でもルナの感覚ではその後に包囲する時に出てきた内の一人の方が強かったし、その後にジンにナイフを投げてきた男があの中じゃ一番強かったわ」
「最後の男はレベルまでは見れなかったんだよな。でも了解だ。レベルは参考程度に思っとくよ。とりあえず今日は休むとして明日からレベル上げつつ、もっとデカイ街に行きたいな。情報収集にしても装備整えるにしても首都に行くものだろ? この近くにデカイ街はあるのか?」
「この辺りは帝国の領土だけど、帝都まで向かうならそれなりに時間がかかるわ。数日行ったところに中規模な街があったと思うからまずはそこを目指しましょう」
「了解。この世界は迷宮(ダンジョン)が多いんだろ? この辺りにもあるのかな?」
迷宮の攻略を頼まれているわけだし試しに行ってみたいな。レベル上げするにもやっぱりダンジョンでしょ。
「あるはずよ。というより、現在確認されているだけでも大陸全域に万のダンジョンがあると言われているわ。新たなダンジョンも時折現れることから、どこかのダンジョンにダンジョンマスターがいてダンジョンを作り続けていると言われているの」
神様も増え続けているって言っていたけど、万かよ。大陸全土っていうなら少ないのか多いのか分からんけど。これ全部制覇したら俺のスキルって凄いことになるんじゃね?
「――中々燃えるな。ダンジョンは制覇したら何か特典とかあるのかな?」
神様からはスキルが貰えるみたいだけど、国とか街から恩賞とかないのかな。
「人間の国の事は詳しくは分からないけど制覇したダンジョンによって賞金がもらえるって聞いたことがあるわね。深層迷宮って言われる深い迷宮を制覇した者は貴族になれるとか」
ルナの話では、ダンジョンは時間が経つと成長して階層数が増えていくらしい。三階層以上に成長した時に地上に入口が発生するそうだ。ダンジョン内には魔物が発生するので放置していると辺りに魔物が溢れかえるとのこと。
その為、ダンジョンに対して懸賞金などをかけ冒険者に討伐を促しているそうだ。
五十階層以上のダンジョンは出来上がるまでに数十年はかかるらしく、万が一発見された場合は国を上げて討伐に乗り出すことになる。ダンジョンマスターがいるとされているのが五十階層以上の深層迷宮とされているからだ。
現在発見されている深層迷宮は三箇所。最も進んでいるダンジョンでも四十階層までしか到達できていないとのこと。
国の主導で深層迷宮を攻略しているので、一般の冒険者たちはダンジョンが浅い内にできるだけ処理をしているらしい。
その為、この世界では国同士のいざこざが少なく、各国がダンジョンの処理に追われているそうだ。
「神具ではないけど、長年ダンジョン内の魔素に触れていた宝石や魔石などが異常な魔力を帯びた物が見つかることもあるみたいよ。王国ではダンジョンから魔剣が出たって言う話もあったかしら。深い階層にあるほど内包された魔力が高く高価みたいよ。だからダンジョンに潜りたがる冒険者が後を絶たないの。そしてそれはヘルトスから神具を受取った転生者も同じよ」
神様に神具をもらった転生者達はその過剰な力を過信して深層迷宮に潜り、大抵が帰って来ないらしい。
命からがら逃げ帰った者も神具を失っていたり、トラウマを背負い冒険者を辞めたり、売り飛ばしてその後の生活の足しにする者まで現れる始末だとか。
そんなこんなで世界中に神具が蔓延する事態になっているそうだ。
「ヘルトスもダンジョンを攻略してもらおうと転生者を呼び込んだと思うんだけど、結果は聞いての通り次から次に神具をこの世界に持ち込んだものだから世界のバランスが崩れているのよ。しかも迷宮の討伐は一向に進まないから大気中の魔力が減って来ているしルナ達精霊もすごーく迷惑しているのよ。大体精霊の領域に発生している迷宮は殆ど制覇されているのよ? それなのに人間達の領域の迷宮は減るどころか増えているわ。だからジンがこちらの迷宮をどうにかしてくれるならルナもできる限り協力するわ」
「あぁ。結構やり甲斐がありそうだ。とはいえ今の俺は弱っちいからルナが頼りだけどな。頼らせてもらうぞ」
俺が伸ばした手を小さな手で掴みルナが笑う。
「ルナはスパルタよ、さっさと強くなって深層迷宮の制覇ぐらいはしてもらうからね」
「そりゃあ楽しみだ。全部制覇して王様にでもなってみる「きゃぁぁぁ!」なんだ!?」
大きな音と共に女性の悲鳴が聞こえてきた。
「この気配はさっきの盗賊よ」
「くそ、休む暇もねぇ」
ベットから飛び起きて俺とルナはすぐに家を出て声の聞こえる方に急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます