第4話 異世界生活始まるよ
新たなる異世界生活。
心躍る冒険に、可愛い女の子とキャッキャうふふな生活。
寂しい青春を送って来た俺に神様がくれた第二の人生。
そう俺は神様に感謝したのだ。
神の使徒になりはしたが好きに生きていいと言われ、この世界でのチートと言える精霊神をお供に付けてくれた偉大なる神ヘルトスに最大の感謝を。
「ふざけんなッ!! 神のバカやろう!!」
~ 一時間前 ~
神の住まい神域よりサザンクルに転生された俺とルナは深い森の中にいた。
薄暗いが木々の合間、真上に微かだが太陽の輝きを感じるので、恐らく昼だろう。
「ここがどこなのかルナは分かるのか?」
「……多分だけど、帝国の東にあるフルトの森だと思う。魔物はあまり居ないって聞くけどその分盗賊とかがいるって聞いた事があるわ」
「こういう時は王都とかが王道じゃね? いきなり盗賊の森って武器なしにはキツいだろ。とりあえずルナを戦力と見ていいんだよな?」
「…………その事なんだけど――今ほとんど魔法が使えないわ」
空中をヒラヒラ飛んで俺の肩に座ったルナがため息混じりに現状を報告してくれた。
「まずルナは契約者の魔力を使って魔法を使うの。だから今はジンの魔力を使うんだけど、ルナが使える魔法ってほどんどが最上級の魔法だから今のジンの魔力量じゃ全然足りないわ。それで今の魔力で使える低級魔法を考えているんだけど、精々2、3発しか使えないと思うわ。それに低級魔法じゃ威力も期待出来ないし、ほとんど戦力にならないと思うの。ジンが強くなって魔力の総量が増えればもっと違うんだけど」
それは死刑宣告ですか?
いきなりこんなとこに飛ばされて武器なし、スキルなし、唯一のお供が戦力外通知って。
しかも針で刺した指を治すのに魔力を使ったから現在の魔力は七割ぐらいしかないらしい。回復魔法3回分って……。
「ちなみに俺のステータスとか分かるのか?」
「ステータスを確認できる魔法はないわ。ルナはジンの魔力を使うからジンの魔力ならだいたい分かるけど。使徒なら人物鑑定のスキルが使えるんじゃないの? まぁ大して役に立たないけどね。ルナを見て鑑定するって思ってみて」
ルナに言われるままルナをジッと見つめ鑑定と念じる。――ルナの顔が僅かに赤くなっている気がするが気のせいだろうか。
ルナテリス・フィヤント
精霊神Lv35
おぉ、見えた。能力値は分からないのか。名前とレベルだけか。確かに役に立たんな。
「名前とレベルが分かるみたいだな。えっと、ルナテリ「ッ! わぁァァァ!!」ッうるせぇ! 耳元で叫ぶな!!」
「精霊の真名は迂闊に呼んではダメなのよ!! ジンは大丈夫だけど、よからぬ人物に知られたら強制的に契約を結ばれたりするんだから! 絶対にルナをその名前で呼んではダメだからね!!」
「わ、わかったから落ち着け。何だよ普通は見えないのか? 人物鑑定なんだろ? 名前ぐらい見えるんじゃねぇのか?」
「普通の人物鑑定スキルなら偽名なら偽名で表示されるのよ。ルナならルナのみ表示されるわ。それに名前と職業が分かるだけでレベル何てものは分からないわよ」
名前と職業だけってそれ全然意味ないよな。偽名が通るなら鑑定の意味ないし。精霊神って職業なのか?
「自分を鑑定って出来るのかな?」
「できるはずよ。手とかを見て鑑定すると良いはずだけど」
ルナに言われて自分の手を見て鑑定と念じてみる。
九条仁
使徒Lv1
これじゃ強いのか弱いのか全然分からんな。レベルを参考にするしかないのか? でもそれならルナのレベル35ってあんまり高くないよな?
これで大いなる力って言われても疑うぞ。しかも職業使徒って。誰かに鑑定されたらヤバくね?
「俺は使徒レベル1だな。ルナは精霊神レベル35だ」
もしこの世界ではレベルを1上げるのに数年以上掛かるならルナのレベルも低くはないのかもれないけど。
「…………そう。そもそもこの世界に人物のレベルって概念はないわ。だからこのことは街に着いて他の人の鑑定をしてから考えましょう。もしかしたらジンは他人の強さを知るスキルを持っているのかも知れないわ」
なるほど。しかし神様は渡せるスキルはないって言ってたよな。スキルが貰えるのは迷宮の制覇か神具を返還してからだろうし。
……ま、いいか。ここでこれ以上考えても答えは出ないだろう。とりあえずこの森を抜けて街を目指すか。
「……ジン、気付いてる?」
「ん? 何に?」
「囲まれてるわ。人間と獣人が数人、全部で十五ってところかしら。視線の感じから友好的ではないわね」
え? この状況でまさか盗賊に囲まれちゃった?
「――声が聞こえると思って来てみりゃ、ガキが一人だけか? なんだガキ、一人言でも呟いてたのか?」
ルナの睨んでいた方向に視線を動かすとデカイ剣を肩に担いだ大柄な男が出てきた。
一人? ルナが見えて居ないのか? それに他の奴らは出てこないのか?
「(ジン視線を彷徨わせないで。私はジン以外に見えないようにしているわ。とりあえずあの男を鑑定してみなさい)」
「(了解)」
ルナに言われ周りを見渡そうとするのを止め、男に視線を固定し鑑定と念じる。
ヴァオ
盗賊Lv30
山賊王の太刀(神)
……は? 盗賊なのに山賊王の太刀は置いておくが(神)ってまさか。
「(あの剣(神)ってなってるけど)」
「(最近じゃ珍しくもないわ。ある程度力のある者の元に流れ着くものだもの。神具はね)」
いきなり探し物が一つ見つかったぞ。何個あるのか聞いとくべきだったな。だが、あれは強力な武器ってことだろ。レベルもルナに近いし、かなり強いんじゃないのか。どうにかここから逃げないとな。
「おいおい、人がせっかく話しかけてやってんのに無視してんじゃねぇぞ。おっと、逃げようと思っても無駄だぜ?」
男の声に答える様に周りの草が音を出し、十名の男が囲む様に出てきた。
残り四人は伏兵か。明らかに一箇所逃げ道が用意させているからそこにいるんだろうな。
とりあえず見えている奴は全員鑑定するか。
その結果判明した事実が一つ。
神ヘルトスあんたには感謝したんだぜ? それなのにこれは。
山賊王の太刀(神)
忍びの暗殺剣(神)
空間の腕輪(神)
力の指輪(神)
「ふざけんなッ! 神のバカやろう!」
思わず叫んでいた。
しかし初エンカウントの敵が神具で武装しているってどんな無理ゲー? え? この世界って教会で生き返ったりできるの? セーブポイントどこどこ?
「(ジン、変なこと考えてないで一旦離脱するわよ)」
「(声出てた?)」
「(顔を見てれば分かるわよ。神具で武装しているんでしょ? 今のルナ達じゃ難しいわ。ルナが隙を作るから右側、あの茶色い髪の人間を突き飛ばして走り抜けなさい)」
全員が武装しているわけじゃないけどこっちは武器もなければ魔法も大して使えない。神具が無くても逃げるしかないよな。さて右手のヤツはっと。
コイル
盗賊Lv3
盗賊達の中で一番弱いな。流石はルナだ、スキルなしでも相手の力量を見抜くか。
「(褒めても何もないわよ)」
「(何も言ってないぞ。そんなに顔に出てるのか? おっと、悠長に話している場合じゃないな。行くぞ)」
俺の声と同時に肩に座っていたルナが飛び上がり手を上に突き出した。
「(光よ、闇を照らせ。フル、ライト!)」
その瞬間ルナを中心に辺りを覆い尽くす程の光量が広がった。
「うおっ! 何だ! クソッ! 何も見えねぇぞ!」
「がぁぁ! 目がぁ! っクソガキぁ! てめぇか! ぶっ殺してやらぁ!」
一番近くにいたヴァオは至近距離で光を見たようで目を押さえ刀を俺の居た辺りに振り回していた。
しかし、その時には俺は既に走り出しており、目を押さえているコイルの顔面を蹴り飛ばして、包囲を抜けていた。
「楽勝!」
「ジン! 右! 避けなさい!」
「へ? っ! がぁあ、イッテぇ」
ルナの声に右を見ると腕を振り抜いている伏兵らしき盗賊の姿と何かが眼前に迫っていた。とっさに右手を上げると腕に棒手裏剣のような物が突き刺さった。
「ジン! このッ! デス・グラビトン! ――魔力が足りないから発動しないじゃないのよっ! ジン走りなさい!」
「りょ、了解! っあぁぁぁイッテぇ! 覚えてろよ! 俺のトラウマ刺激したヤツぁぜってぇぇ許さねぇぞ!」
刺されてこの世界に来てなんでこうブスブス刺してくるヤツばっかりなんだよ! 一瞬でよく分からんかったけどエルットって名前は覚えたぞ!
「る、ルナは仕方なかったのよっ!」
「お前に言ってねぇぇぇぇ!」
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