君の画鋲

第2話

　東京の駅は、どこも人が多い。あたしがJR線しか使ったことがないってのもあるんだろうけど。

　3ヶ月前、あたしはいわゆる上京してきた。

迷子にならないように、駅から徒歩３分の低層マンションを選んだおかげで便利なものの、人の多さにはまだ慣れない。今日も同じ車両が着くホームの列に並んでイヤホンを耳にさし込もうとした。

「あの、すいません、おねえさん」

朝から声をかけてくるなんて、どんなシティボーイだ…

しょうがなく顔だけ振り向いてみた。返事をして自分じゃなくても恥ずかしい。

「定期、違いますか？これ」

…神様、色々疑ってごめんなさい。いい人でした。がっつり私のだし。むしろ、イケメン会社員ごちそうさまってとこ。

「ありがとうございますっ」

「あと」

ん？

「そんなにスカート短いと、ぼくみたいなのに盗撮されますよ」

「なっ！」

前言撤回、神様。

「定期、気をつけてくださいね。東京ではそのまま使われて帰ってこないことなんて余裕ですから」

そう言って、彼はその場を去った。

東京の駅は、どこも人が多い。

東京の駅は、出会いがある。