ドイツの精神科医は見た! その2

 さて、スピリチュアル系患者たちの場合、入院して適切な治療を受ければ、ある程度改善されるが完治は無理だという。医学博士のルカ、それに他の精神科医たちも、同じことを言った。

  このことに関連し、二〇一四年にルカから聞いた実例を簡単に記したい。


 ルカの妻の女友達が、「スピリチュアル」にはまってしまった。スピリチュアル系の本を読み漁り、あれやこれやのセミナーに参加しているうちに、神と交信している、なにやらの声が聞こえる、あれこれが見えると言い出し、とうとう狂ってしまったのだ。彼女の場合、外で働くことも、普通に生活することもできないほど重症なケースで、専門施設に入院した。

 それなのに、この患者とつきあっていたスピリチュアル系たちは全員、彼女の妄想発言を信じていたというから怖い。そうやって狂人の集団が誕生し、カルト化していくのだろう。福島悪魔払い殺人事件で二〇一二年に処刑されたヒーラーの女と、彼女を信じていた人たちがそうだったではないか。


 ルカは、偶然にも掛け持ちの仕事で、当時妻のその狂ってしまった女友達が入院している施設でも働いていた。彼女の様子を時々見ていたという。医者たちの様々な治療のお陰でだいぶ良くなり、やっと退院の見通しがついた。ところが、医者から精神病の原因は「スピリチュアル」にはまったことだとはっきりと告げられているのに、患者はまた「スピリチュアル」をやりたいといい始めたそうだ。


 渚沙は、今まで数多くの人々の例を見てきたが、スピリチュアル系の人は、痛い目に遭っても学ぶことができない傾向にある。好奇心で「スピリチュアル」という火遊びをしたら、自分が狂うだけではない。彼らの狂気は他人にも感染する。なによりも、「勘違いスピリチュアル」はカルトに発展する可能性大という点を忘れないで欲しい。そうなると個人の問題では済まない。日本で幾つもの先例に示されているように、死者まで出る社会問題なのだ。
  


*命に関わる、スピリチュアル系の危険行為を証明するニュース記事*


AFP ニュース「シエラレオネ、エボラ流行は一人の「ヒーラーから」 医療当局者」2014/8/21


概要。シエラレオネでのエボラウイルス感染拡大は、ある一人の「ヒーラー」によってもたらされた。同国東部ケネマ地区の医療当局者がAFPに語った。「このヒーラーの女性は、特別な治癒能力を持っていると主張していた。そのため隣国ギニアからエボラウイルスの感染者たちが彼女の治療を受けようとシエラレオネに入ってきた」と話した。また「本人は(エボラに)感染して死亡した。そして彼女の葬儀に集まった近隣の町の女性たちが感染した」と付け加えている。国内での感染はこの女性たちから連鎖反応的に広がったという。エボラウイルスはケネマに到達し、以降の大流行につながった。


ロイター国際版「スイスのヒーラー、十六人にHIVを感染させて逮捕」

2013/03/15


概要。五十四歳の男性の音楽講師である自称ヒーラーが、自己流の針治療で十六人をHIVに感染させた。出廷を拒否したため警察に自宅を包囲され、日本刀を振り回して庭に出て来たところを逮捕された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る