世界の自然災害と戦争の訳

(こちらのエピソードは、本編「渚沙の恋と捕まらない大量殺人犯ノート」の第60話と第61話の「日本の自然災害」と合わせてお読みくださると理解しやすいです。)


 二〇〇五年一月の夕刻。夫婦で来ていたドイツ人の妻のほうが、ナータに質問した。


「最近、いろいろな国で津波などの災害が起こっているのはどうしてでしょうか」



 二〇〇四年には、スマトラ沖地震による大津波、米国などで複数のハリケーンによる被害、その他の地でも洪水が起こっていた。

 ナータは次のように答えた。
「それは、人の罪を清めるために自動的に起こる。津波が起こらなければ、戦争が起こる。A国で戦争が起こらなければ、B国で起こる。そういうものだ」
 

 驚いたことに、ナータは戦争までもが人の罪の結果だという。確かに戦争が人間の愚かさから起こることは否めない。複数国の間で戦争が起こった時に冷静に真実の目で見れば、一国がすべて悪いということはない筈だ。現在、または過去になんらかの原因があったと考えるべきだ。


  この日、ナータは、二ヶ月ほど前に明かした日本の自然災害の理由については触れなかった。いづれにしろ、自然災害は「人の罪の結果」のために起こるということに変わりはない。日本に関しては、宗教やスピリチュアルを悪用している点が他国に比較にならないほど悪質で、多数の人間が関わり重い罪を重ねているということなのだろう。トラタ共和国では当然のこととして皆心得ているが、神を利用する罪はその他の犯罪よりも重い。



 そういえば昔、「寺院などで神のものを盗んだとする。すると、その人物とその家系前後七代の者たちが全員地獄にちる」とナータが言っていた。どうやら普通の盗みと異なるようだ。日本では「火事を出したら七代たたられる」という格言が知られているが、それと少し似ている。神様ごとのほうが前後七代だから、倍になっているところが侮れない。


 安易な気持ちで神や聖人宣言などして人を騙し続け、いい気になっていると、詐欺プラス神への冒涜ぼうとく、つまり大罪になるわけだ。忘れてはいけない点だが、お客や弟子など、崇める者がいるから余計に罪が重くなる。周囲の人間が「自称なんとか」に取り合わなければ、大事に至らないはずだ。

 近年話題の例からいうと、福島悪魔払い殺人事件が挙げられる。一九九五年頃に福島県で起こった事件だが、二〇一二年に主犯のヒーラーの女が処刑された。珍しく女囚ということで、海外メディアが「日本で女カルトリーダーの死刑執行」という見出しで報道していた。今でも多数の外国の著名なニュースサイトで閲覧できる。日本では二〇一三年の夏に、テレビの「ザ! 世界仰天ニュース」で放映された事件再現VTRを見ると大変わかりやすかったが、ヒーラーの女を崇める者がいなければ彼女は普通の人で、処刑されることもなく六人の死者も出なかったはずだ。ヒーラーの娘と、いい年をしてヒーラー女が恋心を寄せた若い青年も終身刑にならずに済んだのだ。今時の「スピリチュアル」の怖さを象徴している事件だと思う。




 だからと言って、日本で起こるすべての自然災害が、その他の人たちの罪のせいではないとは言い切れない。二〇一一年の震災時のちょっと変わった体験から、渚沙はずっとそう思ってきた。



 スピリチュアル系による犯罪をいったん横においておくと、一般人も著しく道徳性に欠ける事件を起こし、人格を疑うようなニュースが後を絶えない。
  

 たとえば、世界で報道された日本のモンスターペアレンツには呆れてものがいえなかった。自分の子供に白雪姫の役を与えるように要求した狂った親たちのニュースがきっかけとなり、一躍注目されることになった。これは新種の国恥だと渚沙は思った。他国にもモンスターペアレンツはいるらしいが、コメントを見ると、どうやら日本人のモンスターペアレンツの悪質さは、今や世界一と見られているようだ。当の本人たちは、海外のマスコミに大きく取り上げられたことなど知らないだろう。それだけ世間には狂気じみた、異常な出来事に映ったということだ。自覚できていないのは本人たちのみ。


 今でも、日本人のモンスターペアレンツに関する多数の英文記事が著名なニュースサイトで確認できるし、海外の閲覧者からの日本社会に対する同情のコメントか多く見られる。
  学芸会で主役の白雪姫が大勢出てくるくらいなら、まだ許せる。しかし、モンスターペアレンツが教師を欝や自殺に追い込み、平気で給食費を払わず子供にただ食いをさせるのは、犯罪のはずだ。四、五年前に支払われない給食費の合計金額が、全国で二十二億円というニュースを見かけた。今の日本には、みっともない一般人のモンスター犯罪者がけっこういるということだ。本当に貧しくて払えないという家庭は別だが、学校側は確実に訴えられる給食費未払いのような事実を持ち出し、出来るだけ多くの勝訴例を出せばいい。


 ところで、渚沙は知人の弁護士に、給食費を払わないのは犯罪にならないのかと尋ねたことがある。彼はよく分からないといった。それは一部だけの人だと思うと。しかし、一部だけで、東京都が事実一千万円も使って「モンペ対策マニュアル」を作る筈がないし、計二十二億円も給食費未納という額が出る訳がない。


 犯罪者は十分な罰を受けなければ分からない。変に遠慮したり助けたりしたら、横領犯の小室比呂子こむろひろこのように図太い神経で悪事を働き続けるだろうから。


 最近知って唖然としたのは、給食費を払っている連中も、金を払っているから「いただきます」をいう必要がないと子供に歪んだ教育をしているというモンスターペアレンツのことだ。高慢で感謝を知らない罰当たりなこの新しい人種は、次世代のモンスターを育てている脅威の存在である。個人的な天罰が間違いなく下るだろうと思った一件だ。人間性の崩壊、よって、日本社会の崩壊を容易に想像させる、近年の深刻な社会問題ではないか。

 さらに、日本は、先進国の中で最も「人身売買」が盛んで国連からも近年頻繁に警告を受けている。日本は、性にだらしない国で有名なのだ。「日本で起こる人身売買」というタイトルでYoutubeにアップされていたが、現在削除されている。他サイトで閲覧できるようだ。


 大人だけではない。我が国では、小学生までがネットやスマホで金欲しさに売春をする時代になっている。これらを象徴する意図的に隠蔽された凶悪な事件がある。官僚や医者、弁護士などのエリートたちが関わった有名な「赤坂プチエンジェル事件」と「ペッパーランチ事件」。

 不思議なことに、突然報道が規制され、犯人や関係者は放置されたまま、政界などで堂々と活躍中のようだ。



 彼らの金と性に翻弄される貪欲な点は、カルトやスピリチュアル系の犯罪者たちとなんら変わりがない。同類の重犯罪者として、一緒に地獄に堕ちるに違いない。当事者たちは罪を隠し、刑を免れているつもりかもしれないが、絶対に見逃されることはない。人間の罪を自動的に掃除する出来事が起こると、ナータはいっていたではないか。つまり、自然災害は自業自得の現象だ。戦争さえも同じだと。


 表面の膿だけを必死に拭ったり、布で覆ったりしてただ隠そうとしても、中の病原菌を取り除かなければ膿は出続け、そのうち全身が腐っていく。日本は既に何割かが腐っている状態だ。何故なら、先程挙げた社会悪の要因である多くの犯罪者、問題児たちが法的処罰も受けず、改善もされずに放置されているからだ。二〇一一年の震災時、日本は終わっていてもおかしくなかったといつも思う。今でも、幾つもの致命傷の爆弾を抱えている状態なのだろう、と。

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