2-4
学校に行った私は、ゆーま君の部屋に飛び込んだ。急いだけど、ちょっと遅れちゃった。
「お待たせ! さっそく作ろう!」
「昨日ここでだれてたときとは大違いだな。ひらめいたのか!」
みんなも明るい顔になって、私は大きくうなずいた。
「ただし、みんなの協力が必要だよ。そのくらいしないとモノノフは納得してくれない」
「今さら何いってんだ」
「もちろん、がんばらせていただきます」
二人とも心強い。
「さあ、ゆーま君」
「おっけーっシュ!」
ゆーま君がしっぽ玉を私たちのそばに動かしてくれて、私はすぐにスケッチブックを構えた。
「理科室で、こんなことが起きる!」
開く。何枚かあるので、ページを一枚一枚めくっていく。アミちゃんは感心した顔。
「相手が何者かって考えると、これが一番か」
ツキちゃんは気合いが入ったみたいにこぶしを握る。
「これなら、あの方も……!」
ゆーま君は、目を白黒させてからうつむいてしまった。
「こんなこと……するっシュ?」
「ねえ、ゆーま君」
私はゆーま君に優しく語りかけた。
「ゆーま君は、やっぱり怖いななフシギがいいと思う?」
「もう、そんなこと思わないっシュ」
ゆーま君はうつむいたままだったけど、優しいまなざしになった。
「ハルネたちはボックを助けてくれたっシュ。はげましてくれたっシュ。だから、みんなで楽しめた方がいいっシュ」
妖怪のゆーま君が人間の私たちに手助けを頼んだのは、一人きりで心細かったからかもしれない。
私たちがヘンななフシギを作っても止めなかったのは、そんなことをしたら助けてもらえなくなって一人ぼっちに逆戻りと思っていたからかもしれない。
私は弱みを握っている状態なんて嫌だ。一緒にいるなら楽しくしていたい。ゆーま君が私たちの気持ちを受け入れてくれたのはうれしいことだった。
ただ、ゆーま君にはまだためらいがあるみたいだった。顔を上げない。
「でも……これ、本当にやって大丈夫っシュ?」
「ゆーま君、ここを縄張りにしたいんだよね? 縄張りが欲しくて里から出てきたんだよね?」
「……そうっシュ」
「じゃあさ、あと少しだけがんばってみようよ」
私がもう一押しすると、ゆーま君はやっと顔を上げてくれた。
「わかったっシュ。怖いけど、やるっシュ!」
しっぽ玉が輝き始めた。
「生まれるっシュ! 新しいななフシギ、じゃなくて……新しいヘンななフシギ!」
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