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 やっとモノノフが姿を消してくれて、ゾウさんも悲しそうなままで帰った。

 私たちはそれぞれにソファーへ座った。緊張していたせいでぐったりとなる。

「本当のヘンななフシギって何なんだよ。意味がわからない」

「はずみだったよ」

 アミちゃんから突っ込まれているうちにはなさんが来た。モノノフがいなくなるまで待っていたことは、不満げな様子を見れば丸わかり。顔には×マークを付けられている。

「さっきのがどんなやつかわかったみたいだね」

 私もアミちゃんもツキちゃんも、花子さんの言葉にうなずいた。

「花子さんのそれもゾウさんの×××と同じなんだね。ニノミヤさんの×も」

「あたしたちに墨汁でこんなもん描きやがって。どうもななフシギとしてどの程度かって意味らしいよ。他のやつらはたしか……」

 花子さんは面白くなさそうに腕組みした。

「体育館の連中が××、ベートーベンが△、トン魔王が△だったっけ。ふざけてやがるよ」

 みんな低い点ってことなんだろう。最高得点が○か◎かはわからないけど。

「どういう基準で決めてるんだ」

 アミちゃんがつぶやいたとき、ツキちゃんはメモアプリに×や△を書き込んで見比べていた。

「ななフシギとしてよくあるものや見た目が不気味なものほど高得点……というか珍しいものやかわいいものほど低得点なのではないでしょうか」

 私はそれが正解だって思った。一番目に低いゾウさんと二番目に低い体育館は、両方とも動物でかわいさがある。普通のななフシギから大きく外れてもいる。

「どこのどいつか知らないけど、随分と勝手な話を押しつけてくれたもんだよ」

 花子さんも帰って、私たちはゆーま君を見た。まだふるえているけど、話はしないといけない。

「ゆーま君、さっきの、何なの?」

「そういえば、ゆーま君が元々住んでいたところでどうしていたのかあまり聞いていません」

「あたしたちがヘンななフシギ作りに夢中すぎたっていうか」

 というより、ゆーま君が『元の住みかを追われた』といっていたので尋ねにくかっただけだ。

 ゆーま君は、ぽつりぽつりと話し始めた。

「ボックとモノノフは、同じ隠れ里に住んでたっシュ。モノノフは強い妖怪として知られてたっシュけど、ボックは……弱くて……いろんな妖怪と仲よくできなくて……」

 つまり、いじめられていたってこと? 私はそんなふうに察した。

「だからボックは里を出たっシュ。でも、住みかになる学校をなかなか見つけられなかったっシュ。もう他の妖怪が縄張りにしてて、ボックが近づいただけで攻撃してきたことも……探してる途中で、ここは新しい学校だからまだ縄張りにされてないかもって教えてもらえたっシュ」

 追い出すのがいれば親切なのもいた、ということだろうか。

「それで、ここに来てハルネたちとななフシギを……でも、どうしてモノノフが来たのかわからないっシュ」

 何でもいいから早く七番目まで作って縄張りを完成させておけば、モノノフが割り込めなかった? 私はそう思ったけど、適当な話じゃダメだってゆーま君にいわれたことを思い出した。

「どんな理由があったとしても、好き勝手にさせられないよ! ヘンななフシギを作ろう!」

 私はソファーから立ち上がった。

「そうだな。で、どういうやつにするんだ」

「うーんと……」

 アミちゃんから問いかけられた私は、しおしおとソファーに座り直した。みんなが驚く。

「そういえば、理科室の人形二つと指定されたときも顔色を変えていましたか?」

 ツキちゃんからいわれて、私はうなずいた。

「実は私、そこをさけてたんだよ」

「ネタなんかいくらでもあるだろ。人体模型と骨格標本が変なことをしてるとか……ラブラブにしてるのはどうだ」

「だよね、アミちゃん。ニノミヤさんや花子さんも、そんな感じで変わったことをしてるんだし。でも、それって二人が普通の銅像や女の子の姿だから大丈夫なんだと思うよ。人体模型と骨格標本って、何をやってたって怖くない?」

「そういやそうだな」

 ツキちゃんとゆーま君もうつむいていた。部屋が暗い空気でいっぱいになる。

「で、でも! とにかく、やってみるよ!」

 私はスケッチブックとエンピツを構えて、威勢よく声を出した。自分で作ってしまった雰囲気を吹き飛ばしたかった。

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