2 最終奥義
2-1
次の日の朝、私はいつもの場所で待ち合わせして登校。道路を歩きながらアミちゃんとツキちゃんに話しかけた。
「こんにゃくは体にいいみたいだよ。コレステロールを減らしてくれたり」
「ローカロリーなこともいいですね。こんにゃくダイエットというものもあります」
「ツキは話に乗っかるな」
アミちゃんは顔を引きつらせていた。
「ハル、ネタを見つけようとしていろいろ調べたろ。親のパソコンで検索しまくったとか。それで、こんにゃくのつまらないことを」
「つまらないっていうかつまらなくしてくれるよ。食物繊維たっぷりで、お通じに優しいから」
「だから、お前が考えたいのはこんにゃくのことじゃないだろ」
「だって、ちっともひらめかないしぃ!」
私は歩きながらジタバタ暴れた。こんにゃくが便秘にいいんなら、ネタが出ないっていう心の便秘もどうにかしてほしい。
悩んでいるうちに学校の近くまで来て、周りに他の生徒が増えてきた。
「あれ、見てください」
ツキちゃんがメガネの奥から視線を向けたのは、ちょっと前にいる先輩二人。一人は背の高い男子で、もう一人は私より小柄な女子。並んで歩きながら楽しげに話している。
「僕、今度また空手の試合に出るんだ」
「試合って、意外とたくさんあるのね。それに出続けるなんてすごいよ。でも、またケガをしちゃうよね。それが心配な気も……」
「ケガが嫌ならうまくなれって道場の先輩はいうよ。だからもっと強くならないといけないんだ」
「うん、がんばって……でも、あんまり無理をしないでね」
試合っていっても、負けそうなら他人に知られたがらないかも。話題に出したのは、きっと勝つ自信があるからだ。
「空手の地区大会で優勝した
青野先輩は背が高くて顔もいいから、あこがれの的。告白のことは一時すごい話題だった。
二人は結構身長差がある。そういう意味じゃ釣り合わないけど、桃園先輩だってかわいいし優しい人だって話だからお似合いなのかもしれない。
外野の私たちから噂されるのは、先輩たちにとっていい気分じゃないはず。でも、こんなふうに話をしているだけならいい方だった。
「青野君、試合ってどこであるの? 私、応援に」
「おはよう青野君!」
桃園先輩は言葉を止めた。どこかから駆けてきた女子が二人の間に割り込んだからだ。
「何話してたの? 私にも聞かせてよ」
「いや、僕は……」
青野先輩は桃園先輩に視線をやろうとするけど――
「青野君おはよう!」
別の女子が現われて、二人がお互いの姿を見ることすらできないようにしつつ歩く。
まだ終わらない。学校へ近づくにつれて女子が増えて、青野先輩を囲んでしまった。桃園先輩は青野先輩に近づくこともできない。アミちゃんは鼻で笑う。
「焼きもちとか気持ち悪いな。いくら自分が選ばれなかったからって」
私だって、お兄ちゃんと二人でいるときに他の子が割り込んできたらムッとしてしまうはず。
「嫌がらせはよくないよね。せっかく仲よくしてるんだし、二人きりにさせてあげれば……」
私は手を叩き合わせた。
「来た!」
「何が来たんだよ……って、こんなところで絵を描き始めるな!」
「だよね。授業中にやるよ」
「それはそれで怒られるだろ!」
今、私はやっとイメージが固まった。ヘンななフシギに足りなかったものは……
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