11/21 ローマ→フランクフルト


今朝も一杯のカプチーノから始まり、胃がもたれない程度の軽食を心掛ける。

思えば、このホテルでの食事が一番充実していた気がする。

食べ放題の店であえて控えめにする精神的優越感も悪くないよ。


午前9時、ホテルをチェックアウト。

やはり謎の税金を徴収された(30ユーロ)。

ドイツだけでなくEU共通だったか。


テルミニ駅でフィウミチーノ空港行きのチケットを購入。

最後までチップ狙いの輩が寄ってきた。

買い方はすでに分かっているので無視して素早く購入。

改札を通ってホームへ。ここまで来ればもう安全。


と、思いきや――


チケットに記された座席番号のある車両は一等車だった。

急がされたせいでチケットを買い間違えたようだ。

30分程度の道のり、二等車で充分なのに、8ユーロ高くついてしまった。

やってくれるね。

……まあいい。記念と思えばどうということもない。


一等車には乗客はほとんどおらず快適だった。

座席の座り心地も良い。テーブルもある。

新聞もある(イタリア語だから読めないが)。


乗務員さんが英語で「コーヒーはいかがですか?」と声をかけてきた。

さすが一等車。コーヒーサービスまであるのか。

飲み物がほしい気分ではなかったので、せっかくではあるがNo Thanks.

「もらえるものはもらう」という考えはスマートではない。


しかし、よくよく考えてみたら、あのコーヒー、無料とは限らなかった。

普通に販売に来ただけかもしれない。

それも今となっては確かめようがない。


「フィウミチーノ空港」

まずはチェックインして荷物を預ける。

係員さんが丁寧に教えてくれたおかげでスムーズに完了。


Grazie.(ありがとう)


ただし、また荷物代で45ユーロかかった。


搭乗は午後3時。

かなり時間があるのでフィウミチーノ空港を探索する。

さすがに空港内は治安が良く、チップ狙いの輩は出現しない。


空港の男性スタッフに明るく声をかけられた。ここに至って危ない人ということはないだろうが、筆者の語学力とコミュ力では上手く受け答えすることができなかった。残念ではあるが、握手をして別れるしかなかった。


昼食には、柔らかトマトチキンを食べた。

シチューのような料理で、なかなかのボリュームだった。

コーヒーアメリカンも注文した。


国際線ゲートの外は店が少なく簡素だったが、ゲート内は広大。

ヨーロッパ最大級であるフランクフルト空港に匹敵する。

レストラン、カフェ、お土産、ブランド品、電化製品、玩具、書籍、コスメ、酒など、あらゆるお店があった。高級店も多かった。

ゲートの外と中でこうも違うのは、おそらく乗客以外が空港に来ることがほとんどないからだろう。

日本やドイツとの経済力の差か。


ゲート内には街中で一度も見かけなかったコーヒー自販機があった。

1ユーロ。ちょっと買ってみる。

残念ながら、筆者にはコーヒーの違いがよく分からない。

普通においしい。


かなり時間が余っていたので、ひたすら空港内を散歩する。

怪しまれない程度に隅々まで歩く。

やがて、疲れ果てて座り込む。

元々疲れているというのに無茶をする。

しかし、筆者はじっとしていられない性質なので、少し休んだらまた歩き出す。


そうしているうちに、ようやく搭乗時間が来る。

これでイタリアともお別れだ。

行きと同じ「アリタリア航空」にて北へ舞い戻る。



***ドイツ***



フランクフルトには予定より若干早く着いた。

飛行機が遅れたことは多々あったが、早く着いたのは初めてだ。

もちろんありがたい。


時刻はすでに午後6時を回っていたので、フランクフルト空港で夕食。

またしてもアジア料理を食べる(四回目)。

グリーンカレーを食べた。

辛かったが、鶏肉と野菜たっぷりで美味かった。


そして地下鉄で、もう何度も行き来した拠点中の拠点、フランクフルト中央駅へ。

もちろん、イタリアと違ってこちらは寒いので、地下のホームに行く前にコートを着ておく。

今更だが、フランクフルト中央駅は英語にするとフランクフルト・メイン・ステーションらしい。中央だからセントラルステーションだと思っていた。


10分ほどで中央駅に到着。

まずは駅を出て10mくらいのところにあるホテルにチェックイン。

2年前も泊まった、懐かしのあのホテルだ。


「ホテル エクセルシオール」

やはり料金が低めの割にはサービスが充実している。

冷蔵庫の飲み物飲み放題、朝食ビュッフェ付き、ロビーでコーヒーサービスがあって、バスタブもありと、破格なまでの待遇だ。照明が部屋全体を照らすタイプなのも見逃せない。

欠点はWiFiのつながりが悪いくらいか。

他もそうだったので欠点とは言えない。

古い部屋ではあるが防音性が高い。せいぜい廊下側からの音が気になるくらいか。部屋の前を客が通る時だけだ。

総合的にはここが最高。


すでに時刻は午後8時を過ぎており、ほとんどの店が閉まる時間だが、最後にカイザーストリートを歩いた。

驚くことに、街の空気が澄んでいた。

帰宅ラッシュの時間が終わって人通りが少なくなっているとはいえ、大都市の中心地なのに、空気が汚くない。なぜ?


おそらく、ローマの空気が汚かったからだ。

特に中心地であるテルミニ駅付近は本当に息苦しく、長時間外を歩いていられなかった。

だから、それほど綺麗とは言えないフランクフルトの空気さえ澄み渡っているように感じる。

筆者はタバコの煙や排ガスが苦手だが、今なら平気だ。

ローマテルミニで鍛えられた私の肺は、もう少々の汚染物質では動じない。

私は強くなったのだ。

……たぶん、日本に戻って数日すれば元に戻るだろうけどね。


それにしても、こんな神経質な私がなぜここに来たのか?

自分でも不思議でならない。

前回は知らなかったからともかく、今回は分かっていて来たのだ。

世界中の多くの街から、あえてこの街を選んだのだ。

だからだろうか。もう明日にはお別れと思うと、少しだけ感慨深かったよ。


今ここでこうしていることは、帰国して数週間もすれば夢のような出来事になる。2年前、デンマークとスウェーデンを巡った時と同じように。あるいは昔、香港や中国を旅した時のように。人生そのものも、いつかはそうなるのかな。


さて、明日は帰国だ。

せいぜい悔いのないように過ごそう。

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