第二章

第21話 独白

 その日の街の人々は悪魔だと思った。



 彼を犯人だと決めつけ、それを信じて疑わない。



 彼を閉じ込める事でしか平穏を取り戻せないと思っている、彼等は悪魔だ。



 その事実に耳も目も心すら傾けられない、狭い思考の群衆。それが彼等。



 私もその一人だ。



 私も結局は、何もしなかったのだから。



 綺麗な言葉を並べても、私は行動を起こさなかった臆病者。



 悲劇が起きるその瞬間まで、涙を浮かべただけの卑怯者。



 最後の瞬間。彼は何を思ったのだろうか。



 私を見つめるその瞳に、どんな感情を抱いていたのだろうか。



 私は知らない。



 私は知りたい。



 どうか、彼を解き放って。



 誰でもいい。



 どうか、彼を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る