第2話 守るべき時間のために


ーコンテナ倉庫ー


「ねぇミスズ、最近ここらで「心眼の賞金稼ぎ」が出没してるって聞いたことある?」

「しんがんって…まずそれは何?」

桜雨の状態を確認しながらサノウに問う。

「心眼っていうのは、眼が見えない状態でも人の位置が分かるみたいな感じ。しかもこの賞金稼ぎは心眼を使った独自の拳法の使い手らしいよ。確か名前は…「心眼のリーフェン」だったかな?」

心眼で独自の拳法か…随分と面白い組み合わせね。

「もしかしてそいつは今この近くにいるの?」

「レーダーによると、まぁまぁ近くにはいるみたい。どうする?」

「賞金はいくら?」

「ゼネル区域の賞金稼ぎを片っ端から倒してるみたいだからもう1億はいってるんじゃないかな。」

「分かった。行ってくる。」

この時、私は好奇心で行ったことを後悔すべきだった。まさかあんなことになるなんて私は思ってもいなかったのだから……


ーゼネル北区域ー


ゼネルの北区域は構造物が少ない。これならいくらやり合っても大丈夫だ。そのオレンジの荒野のような場所に奴はいた…

「あなたが最近ここらで出没してる「心眼のリーフェン」?」

長くなびいている銀髪の男はその屈強な体を前にして言った。

「そうだ…俺がリーフェン。お前、名は?」

「セン。ここらじゃ「神速のセン」とか呼ばれてる張本人よ。」

「やはりお前はあのセンか…俺も聞いたことがある…」

やっぱり私はここらじゃ有名人なのか。

「それはどうも。というかそろそろ始めてもいいかしら?」

「いざ尋常に、勝負!!」

戦闘開始の合図と共に私は駆け出す。相手は恐らく盲目なのだろうから、心眼があっても多少はこちらの方が有利だろう。

「ハァ!!」

チャキ…シュン…

「っ!?攻撃が当たらない!?」

すれ違い様に斬ったはず…!なのに何故当たらない!?

「心の眼…それが心眼だ。眼を閉じていてもお前の動きは読める。」

「位置だけではなく動きまで…さっきのあなたの動きとかを見るにハッタリではなさそうね。」

「…俺は嘘は言わん。」

バッ!!

「速い!?」

ガキン!!

私以上の速さ…!瞬間移動並みの速さでこの拳の一撃…鞘で何とか守れたが反動が起こる…何て力…!

「スピードタイプかと思ったらパワーもあるのね…刀だったら折れるかと思ったわ。」

「俺はこの拳法で幾多の賞金稼ぎを薙ぎ倒してきた。お前もその一部になる時だ。」

「悪いけど、私はその拳で死ぬのは御免ね!」

再度駆け出す。こうすれば奴も瞬間移動並みの速さで何かしてくるはずだ。そこを仕留める!!

シュン……

奴が出てきた!

「そこだぁ!」

バシュバシュバシュ!!

「……耐えてる!?」

「フンッ!!…」

ドゴォ!!

「がはっ………」

腹にまともに受けてしまった…次にくらったら立っていられるかも分からない。それにあの耐久性…リーフェンも斬撃をまともにくらったのに押し切って拳を当てにくるとは…!

「まだ終わってないぞ。俺の拳法はまだこんなものじゃない。」

「なっ…」

バキン!!!ドサッ…

疲弊しているところを狙われて顔面に横蹴りを受けた。その拍子に仮面が割れて砕け散り、私も蹴りの反動で飛ばされる。仮面がなかったら最速死んでいただろう…

「ぐっ!うぅ……」

意識がもうろうとしてきた…今は立てるのがやっとの状況だ…どうすればいい?周りにはフロートで浮かしても決定打になるものはない…一かバチか刀を浮かしてやってみる…

「フロート…」

ボンッ!!

「それがお前の特殊能力か。これで戦局がどう変わるのか見物だな。」

シュン…シュン…

リーフェンがこっちに来る。奴の本体が攻撃を加える瞬間に刀を旋回させれば…

シュル…ザシュザシュッ!!

「うぉ…」

何とか効いてる!これなら背後を取られても旋回すればいける…!

「戦局が変わったな。このままやっていても同じ手をくらうだけだ。眼を開けさせてもらう…!!」

「まさか…盲目じゃあ…!」

「いつから俺が盲目だと錯覚していた?眼を閉じているのは無駄な気を使わないためだ。」

さっきとはまるで違う!!眼を開けたことによって私の位置が常に分かってしまう!!

「行くぞ。」

ババッ!!

リーフェンの動きが速すぎて分身が現れる…これ以上のスピードは防ぎきれない!

バゴッ!!ドゴォ!!

「ブハァ!!!」

口から血が吹き出る…身体中も血だらけ………

「これで終わりだ。」


私の意識が無くなりかけて、奴の拳動がスローモーションに見える。もう…本当に私は終わるの…?


ボグッ!!ドサッ……

『ミスズ!!どうしたんだ!?返事をしてくれ!!』


「……完全に息絶えたか。」


『ミスズ…返事をしてくれ!ミスズはこんなところで負けたりなんかしないんだ!!だからお願いだ……返事をしてくれ!!ミスズーーーーー!!!!』

























遠くで私を呼ぶ声が聞こえる………



































でも誰の声だか分からないや……

次回、最終回!!


次回予告

「あなたがいたから…私は…」

「ほう、まだ生きてたか。」

「こんなところで私は死ねない!!守るべき人との時間のために!!」

「お帰り……ミスズ…」

次回「永久に続く」


「もう、仮面は着けない…今はこれがあるから。」

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