賞金稼ぎの仮面少女
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第1話 賞金稼ぎの少女
ーゼネル西区域ー
耳に付けてる小型の通信機をサッと触り、通信を取る。
「目標までどのくらい…?」
『もう少しだよ。今回の相手はちょっと難しいかもしれないから気をつけて。』
「心配しすぎよ。危なくなれば退避すればいいんだから。」
彼は賞金稼ぎという、人から見れば悪い仕事を私のために手伝ってくれている。私も彼だけには唯一心を開ける…そんなことを思っていると今回のターゲットの賞金稼ぎ「巨人腕のガルシル」の異名で知られるいかにも巨体で筋肉質の男が見える。
「どこだぁ!?「神速のセン」とかいう奴はどこにいやがる!!」
どうやらガルシルも私がターゲットのようだ。誰もいない街で怒鳴り散らしている男に呆れつつも近づく。
「その「神速のセン」って人は、私のこと?」
「テメェか…センって奴は…男かと思ったらちっちぇ女のガキか。まぁ俺には関係ないがなァ!!!」
やはり脳筋といったところか。仕事の時に付けてる仮面が取れないかだけ心配だけど。
「巨人腕と呼ばれた俺の拳をくらえ!!」
シュッ!
「突っ込むだけじゃ私は倒せないわよ。」
「テメェ!ちょこまか逃げやがって!!」
繰り出された右拳に首を左に曲げて避ける。その際、被っていたフードが脱げた。
チャキ…
愛刀の桜雨の鞘から刀を抜く。こいつに刃が通じるか今試せる。
ガキン!!
「!?かすっただけ…!?」
「悪いな、俺の体はそんなあまっちょろい刃物なんかじゃ致命傷にはならねぇ!!」
両拳を合わせた腕が降り下ろされるが、それも避ける。まず私の行動を先読みしない限りは脚力の高い私に攻撃は当たらない。ガルシルはもう痺れを切らしてきているようだ。
「やっぱりあなた本当の脳筋ね。」
「挑発もいい加減にしろ!!俺はこの区域で名を馳せる賞金稼ぎのガルシルだ!!こんなガキにやられるほど弱くねぇ!!」
避けるのはいいが、奴にダメージを与えるには斬ることはほぼ不可能と言って良いだろう。ならば「突く」か…!
バッ!
一端距離を置いて…突っ込むと見せかけて避ける!
ブゥン!!
「そこだぁ!」
ザシュ!!
「ぐぼぉえ!!!」
腹に直接効いている…!表面が無理なら突けばいい。これも剣技の1つ…!後はガルシルがあの「行動」を取れば私の勝ち…
「クソ…俺が……こんな野郎に…許さねェ!!その体を握り潰してやる!!」
「ぐっ…!」
両手で私を掴み上げる際、武器を落としたと見せかけてガルシルの後方に投げる。これで勝利へのセット完了だ。
「へへ…その薄っぺらい面の下を見れねぇのは惜しいが…これで終わりだァ!!」
「終わるのはそっちよ…」
「何だと…!!」
カタカタ…バシュッ!!
こいつは私のもう1つの「能力」を知らない。そう、私のもう1つの能力は……
「フロート!!」
視界に入った無機物を自在に浮かして操る能力…!!
ザシュッ!!ブシャァ!!
「カハッ……!!!」
掴まれていた腕が次第に力を無くしていき、私は地面に着地した。奴は完全に息をしていない。奴の背中に深く刺さった愛刀を引き抜き、通信を取る。
「目標は倒したわ。今から帰る。」
『凄いよミスズ!まさかやられるふりをしてフロートで後ろから突くなんて。』
「ちょっとしたマジックよ。コンテナの鍵、開けといてね。」
ーコンテナ倉庫ー
「ただいま。」
「お帰りミスズ。以外と早く終わったね。」
彼の名はサノウ。私の幼馴染みで機械いじりが好きで、私が仕事の時に耳に付けてる小型通信機も彼が開発したもの。彼にはいつも助けられていて、正直彼がいなかったら出来なかった部分もある。
「ガルシルがただの脳筋だっただけよ。」
仕事の仮面を外し、簡素なベットに横たわり、ちょっとだけ体を癒す。私は賞金稼ぎとしての名前はセンだが本名はミスズ。私の本名を知ってるのはサノウだけしかいない。
「そういや…ミスズの好きなドーナツ、冷蔵庫に入ってるから好きな時に食べていいよ。」
「ありがとう。でも今日はちょっと疲れたから、刀の手入れしたら寝るわ。」
「そうか、お疲れさま。」
こういう何気ない会話に私は安らぎを感じる…賞金稼ぎという闇の仕事をしていながらも心身共に安らぐこの時間が、私は好きだ…
続く。
次回予告
センの次のターゲットは、
「心眼…心の眼だ。眼を閉じていてもお前の動きは分かる。」
拳法の使い手!?
「俺はこの拳法で、幾多の賞金稼ぎを薙ぎ倒してきた。お前もその一部になる時だ。」
「悪いけど、私はその拳で死ぬのは御免だわ。」
次回「守るべき時間のために」
『ミスズはこんなところで負けたりなんかしないんだ!!』
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