第6話
ドアをくぐった先には聞いていた通り、荒れ果て乾ききった大地がとめどなく続いていた。
また春一番のような風にあおられ、煩わしくも肌にはどこか心地よさが残るようだった。
空は天界とは特に変わった様子もなく日が落ちかけている、ひたすらモザイクがかっている霧はまるで赤いスプレーをかけたようだった。
しかし、隊の全員がドアをくぐり抜けたのを合図にドアは霧に飲み込まれていった。皆わかっていたことではあったが実際にそう簡単には帰れないことを実感して落胆している中・・・。
「ひゃっはーーーっっ。つ、ついに私は新界に来たのね!」
私がうつむいている他の隊員たちとは異なり興奮を隠せないでいるとバッツさんはもう何回目とも知れないため息をついた。
「お前はいつも変わんないよな、うん・・・。」
やっぱバッツさんは神経質すぎるからその歳で白髪混じりになるんだよ。もっと私みたいに自由な鳥じゃなくっちゃ。
本当にせっかく未開の土地に来たんだからちょっとくらいはしゃいでもいいと思うんだけど。
「せっかく未開の土地に来たんだからちょっとくらいはしゃいでもいいと思うんだけど。」
「おい、本音が漏れてるぞ本音が。みんな後でミーティングあるから各自荷物を整理したら全員集合なー。」
「ちぇっ、本当にいちいちうるさいんだから。」
そんな愚痴をこぼしながらも、私はすぐにでも周辺を調査したいという気持ちをグッと抑えてしぶしぶミーティングに出ることにした。私も成長したな、と思うよ。
「いいかみんな、この前の王宮新界調査団の犠牲を無駄にするな。一人一人慎みを持ち自分の事だけに夢中にならず、周りの様子や仲間たちにも気を払うこと!
しかし、万が一のことがあったとき俺が撤退を告げたら自分の事を優先すること。
いいな!特にフィー、お前はいつも努力をしているし何事にも熱心なのはすごいと思うが、周りにいろいろと迷惑をかけすぎ・・・・・・
いやホント長い・・・。バッツさんこのままだと白髪混じりどころか新界の大地になっちゃうよ。
・・・おい聞いているのかフィー!」
「わかってるって気を付けるよ全くもう。」
明らかに隊員のみんなが私にちょっと今日ばかりはやめてくれと言いたげな顔を向けてきたので今日のところは引き下がっておこうと思う、今日のところはなんだからね。
明日の作戦としてはこうだ。まず、安全を第一とする、よって霧があまり晴れていない日はその日の調査は中止とすること。
そして、最初の目標としてその霧を採取するために霧の採集装置を置いて行き次に行動可能な日に持ち帰り、検査にかける。それと同時に霧が広がりにくい安全に探索できる地域を捜索する。
とまあこういった感じにまとまった。
外もだいぶ真っ暗になり、私もそろそろ寝ようかな、そう思っていた時だった。
「ん?あれなんだろう?」
外で何か小さな小さな赤い光が灯っているように見えた。
それはどこか私を引き込むようでフラフラ~っと私は外の光を追うかのように歩き始めていた。それには何かあらがえないような気がした。
私の意識がどこか朦朧とし始め、落ちそうになったその時、誰かが私の腕をガシッと強くつかみ私は意識をしっかりとしたものへと取り戻した。
「おいフィー!大丈夫か、しっかりしろ!」
「あれ?バッツさん・・・何で・・・?」
「何でもこうもあるか!いきなりフラッと外に出たと思ったら声をかけても全く反応しなかったじゃないか、心配したぞ!」
どうやら私はバッツさんに助けて?もらったらしい。
「す、すいません。なんかあの光を見ていたらボーーっとしてきちゃって・・・。」
「光?何のことだ、俺には全く見えないぞ。」
「何を言っているんですか、ほらあそこに見えるじゃないですか。あそ・・・ってあ、あれ!?な、ない!!」
おかしい、さっきまで見えていたはずの光が見えなくなっていた。
最初はバッツさんが嘘を言っているのかと思ったほどだ。
「きっとさしものお前も少し疲れているんだよ。さっさと寝て休め。」
バッツさんは何故か珍しくも優しい声でそれだけを私に言って去っていった。
でもどういうことだろう、あの不思議な光は本当に見間違いだったのだろうか。そんなことを考えてもんもんとしながら私は寝床についた。
次の日の朝、天気はよく、霧もある程度はれ、とても探索日和の朝だった。
「んー、いい朝!もう私のありとあらゆるものに対する好奇心がうずいてうずいてしょうがないよ!」
「昨日の夜も言ったけどちゃんと落ち着いて行動しろよ!」
「はーい、わかってますよー!」
バッツさんのいつもの注意も今ではもう朝のちょうどいい目覚まし。私は昨日の夜あったことはさっぱり忘れていつも通りの返事を返した。
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