第29話 不思議な友人

なんというか久しぶりの我が家な気がする。思えば、正月にはアパートでレポートを書いていたので結局実家に帰れなかったなぁ。

門を開けて庭を見渡すと、縁側が見える。

縁側には薄緑の髪の女性が麦茶を片手に座っていた。


「あ、みっちゃん久しぶり」


彼女はこっちを見かけた瞬間にそう言って、縁側から立ち上がる。


頼武らいむちゃん!久しぶり!」


頼武ちゃん。彼女は、私の幼馴染で小学校の頃から友達だった。

このあたりにはあまり家がない。子供もいない。だから、小学校中学校は1クラスしかなかった。離れ離れになったのも大学が初めてだったな。

それにしても、まさか実家に帰ってきて一番に会うのが頼武ちゃんだなんて偶然もあるものだなと思っていたのだが、事前に母親から連絡が飛んでいたらしい。そりゃそうか。


「ところで、隣りにいるのは?」


頼武ちゃんが不思議そうに聞く。そういえば、えりちゃんとはもちろん初対面か。


「木叢峩えりちゃんっていうんだ。私と一緒の大学で友達なの」


「ご紹介に預かりました木叢峩えりと申します。頼武さん、これからもぜひともよろしくお願いいたします」


「こちらこそ、いつもうちのみかんがお世話になっております。よろしければ、私とも仲良くしていただければ、と思います」


初対面とは思えないほどのこの感じ。いや、会社の取引かなんかかな?

とまぁ、友人同士が仲良くなってるのって見てて微笑ましいね。わたしも混ぜてほしいけど。


なんやかんやで実家に戻ってきても少し懐かしいだけでアパートと居心地は変わらない。

なんとも変なものかもしれないが、私にはそう思えた。

それはきっと落ち着ける場所だからなんだろうな。

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