第28話 不思議な関係2

都会の喧騒を離れ、潮風が少し心地良い。

街は相変わらず活気があってそれでいて懐かしい。

やっと帰ってきた……、私の地元。こうやって見るとなんというか広く感じるね。


「ここかぁ、みかんちゃんの地元って。お、八百屋さんなんて久しぶりに見るなぁ」


興味深そうに街中を見渡し、気になる場所があればすぐに私に話しかけてくる。自分ではなんとも思っていなかったが、確かに言われてみれば不思議なものも多いのかもしれない。えりちゃんもなかなか楽しそうだ。


「ええと、次バスが来るのが17分と、今の時間は……」


あれ、次のバスまで30分ほど時間がある。実家の方には電車は通っていないから、このバスを待つしかなさそうだ。長い。


「次のバスまで30分位あるけど、えりちゃんはなにかしたいことある?」


「ひと通り見てみたけど、とりあえずカフェに寄ってみたいな」


「じゃあ、あそこのカフェでいいかな」


「オッケー!」


と言って、入ったのは個人経営と思われるカフェと居住区画がおんなじ敷地内にある建物。なんというか木の質感といい、コーヒーの匂いといい、なんというか長い間ここでカフェを営んでいるんだろうな、と感じ取れる。

メニューも革の質感が年代物で、大切に扱われてきたのが伝わっている。

それとは裏腹にメニューはホットケーキ、サンドイッチなどといったフレッシュなものが多い。

若い女性の店員さんが、お水とおしぼりを持ってきてくれて、ついでに注文も聞いてもらうことにした。


「ご注文は何になされますか?」


「じゃあ、レモンティーで」


「コーラお願いします」


「レモンティーとコーラですね。かしこまりました」


カフェでコーラ頼む人初めてみたよ……。確かに需要があるからメニューに書いてあるんだろうけどさ。


「それにしても、レモンティーってカフェで頼む人あんまりいないよね」


「コーラもなかなか見ないけどね」


「そうかなぁ?カフェのコーラってレモンがグラスのふちに付いてるのが可愛くてつい頼んじゃうんだよね」


「確かにコーラだと味はほとんど変わることないから無難なのかな?レモンティーは使うものによっては結構酸っぱいのもあるから」


と、多少かわし気味に話を進めていく。結局、レモン談義に話題がそれていったところで飲み物が出てきたので飲み物の話は一旦区切りがついた。



カフェを出たときにはすでにバスが来る時間にタイミングよくなっていたので乗り込んだ。そのまま揺られ、海側の方へバスは私達を乗せて実家にほど近いバス停で私達は降りた。

そこから実家まではあまり車の通らない道をまっすぐ歩いていく。

横には立派な果樹園が広がっていて、甘酸っぱい匂いも漂ってきていた。

少し歩くと、美しい海の景色と、家が見える。

家の周りには、柵がぐるっと囲っていて入口には「夏樹」という名前が書かれた札がある。


懐かしい我が家だった。

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